パラグアイで旧ナチス陣営が不可解な動きを見せる。ユダヤ人の青年がアウシュビッツの医学責任者メンゲレ博士のスピーチを盗聴するが、老ナチ・ハンターであるリーバーマンに電話連絡している最中に殺される。そのスピーチの内容は65歳の世界中に散らばる公務員を94人暗殺するというもの。リーバーマンはマスコミを通して世界からの情報を集める。まず西ドイツで一人事故死の形でなくなる。次にマサチューセッツでも一人なくなるが、二つの事件には奇妙な共通点があった。ともに息子が14,5歳で黒髪、碧眼なのだ。それはアドルフ・ヒトラーの特徴だった。そして他の公務員死亡事件でも同じような息子が残された。偶然の一致なのか?リーバーマンはかつて収監したナチス女性党員マロニーから被害者に養子を斡旋した事実を聞き出す。そして生物学研究所へ出向き調べるうちに、クローンのことを耳にする。メンゲレはヒトラーの生前に前代未聞のクローン計画を立てていたのか。

 

アイラ・レヴィン原作のサスペンス小説の映画化。メンゲレ役のグレゴリー・ペックは老いてから自らのイメージを崩すような役を演じていた。旧ナチスのマッド・サイエンティスト、メンゲレ博士はクローンという禁断の生物工学を利用してヒトラーの血を1980年代に復活させようとする。しかしネオ・ナチの方がはるかに現実的で、たとえ似た環境であってもヒトラーのコピーが生まれるかどうか懐疑的である。そしてリーバーマンに察知されたことから、莫大な金と時間を賭けたメンゲレの作戦自体を放棄してしまう。それでもメンゲレは諦めきれず直接リーバーマンと最終対決して、なかなかメンゲレのマッドぶりが際立っている。ローレンス・オリビエは逆に「マラソンマン」と真逆の立場を演じている。ラストでドーベルマン犬にローレンス・オリビエともども襲われるシーンはオールド・ファンにはショッキングな展開だった。

なおメンゲレも実在の人物であり、78年当時は存命だったが、翌年ブラジルで謎の死を遂げている。組織が動いたのだろうか?
リーバーマンも実在のナチ・ハンター、サイモン・ヴィーゼンタール(アイヒマン逮捕に関与)をモデルにしている。

監督 フランクリン・J・シャフナー
脚本 ヘイウッド・グールド
原作 アイラ・レヴィン
出演者
グレゴリー・ペック
ローレンス・オリヴィエ
ジェイムズ・メイスン
リリー・バルマー
ユタ・ヘイゲン
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
撮影 アンリ・ドカエ

ブラジルから来た少年 1978 20世紀フォックス

投稿ナビゲーション


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です