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戦争映画

第二次世界大戦イタリアからドイツ軍が撤退するドサクサを描いた、ロベルト・ロッセリーニ監督の全六話から成るオムニバス映画。脚色はセルジオ・アミディ、アメリカ人作家アルフレッド・ヘイス、のちの名匠フェデリコ・フェリーニマルセロ・パリエロ及びロッセリーニ自身が各話を担任した。
白黒映画で撮影はオテロ・マルテリ、作曲はロッセリーニの弟レンツォ・ロッセリーニである。
出演者はマリア・ミキ以下四名のプロ俳優を除き、イタリア各地の普通の市民や米、英、独の将兵で構成される。

雑感

ロベルト・ロッセリーニ監督による「無防備都市」に次ぐ戦争三部作の第二弾(ちなみに第三弾は戦後ドイツの悲惨さを描いた「ドイツ零年」である)。
映画「戦火のかなた」は、連合軍が解放したイタリアの街ごと六話に分かれ、イタリア上陸以前の1943年7月から1944年の冬にイタリア全土が解放されるまでの間に起った実際の出来事を描いている。いわばセミドキュメンタリー形式であり、イタリア語ではネオ・レアリスモ映画と呼ばれた。

1947年度のイタリア映画批評家最高作品賞監督賞、作曲賞を獲得し、1946年度のヴェネチア国際映画祭最高賞、1947年度のブリュッセル国際映画祭特別賞、1948年度のニューヨーク映画批評家賞の最優秀外国映画賞ナショナル・ボード・オブ・レヴュー最高作品賞を受賞した。

1949年に日本でも東和の配給で公開されて、キネマ旬報ベストテン第一位になった。

個人的には、マリア・ミキ(「無防備都市」)の出演した第三話がお気に入りだ。せっかくローマは解放されたのに、戦後インフレが起きてローマ人は生活苦に苦しむ。解放時に米軍兵士を歓迎したマリア・ミキもやがて娼婦に身をやつし、米軍兵士相手に商売をしなければ生きていけない。すると、最初に会った兵士と再会する。彼女は喜ぶが、彼はがっかりしてローマを去って行く。
日本の大都市でも同様のことは起きただけに、他人事とは思えない。
20世紀までは、何度も繰り返しNHK教育で放送されていたが、最近は放送しなくなった。今回は安いDVDで見た。状態はかなり悪くなっていた。

キャスト

カルメラ・サツィオ  カルメラ(地元の女の子)
ロバート・ヴァン・ルーン  ジョー(米兵)

アルフォンジーノ・パスカ  ナポリの少年泥棒

マリア・ミキ  フランツエスカ(娼婦)
ガイ・ムーア  フレッド(米兵)

ハリエット・ホワイト  ハリエット看護婦
レンツォ・アヴァンツォ  レンツォ

ビル・タブ  ビル・マーチン従軍神父

デール・エドモンズ  デール(米軍兵士)
チゴラーニ  レジスタンス
ロベルト・ヴァン・ロエル  レジスタンス
ジウリオ・パニカリ  ナレーター

スタッフ

監督、脚色、台詞  ロベルト・ロッセリーニ
脚色、台詞  セルジオ・アミディ、アルフレッド・ヘイス、フェデリコ・フェリーニ、マルセロ・パリエロ
ドイツ語台詞  クラウス・マン
撮影  オテロ・マルテリ
製作総指揮  アルベルト・マーニ、アウグスト・ドルフィー
作曲  レンツォ・ロッセリーニ

 

ストーリー

第一話(シシリア
海岸近くの村にアメリカ軍の偵察隊が現れる。村娘カルメラは、ドイツ兵がいる海辺の城塞に米兵を連れて行く。ジョーはイタリア語を話せないが、手振りでカルメラと親しくなり、故郷の写真を見せる。そのとき、彼はライターの火を付けてしまう・・・。

光を見たドイツ兵に彼は射たれて死ぬ。カルメラはジョーの遺体を隠し、銃を持ってドイツ軍に抵抗するが、多勢に無勢でやはり射たれて死んでしまう。遺体を発見した米兵は彼女がジョーを射ったと推理する。

第二話(ナポリ
連合軍は、ナポリに侵攻する。一人の少年が酔っ払ったアメリカ黒人MPを連れ回し、寝込んだすきに靴を盗む。数日後、その黒人は少年を見つけ、靴を隠したという家に案内させる・・・。

ところが、戦火から逃れた人たちが住む地下の難民キャンプだった。悲惨な様子に黒人は何も言わず去って行く。

第三話(ローマ
連合軍はローマを解放して半年が経った。米兵は、夜の街で春をひさぐ娼婦に呼び止められる。二人はホテルに行くが、彼はローマにやって来たときに初めて会った少女フランチェスカを探していると言った。娼婦は明日彼をフランチェスカに会わせると言う・・・。

実は、その娼婦こそフランチェスカだったのだ。戦後不況で彼女は身を売らなければ生きていけなかった。そのうち、泥酔してしまった米兵を置いて、フランチェスカは明日のデートの身支度をしに家に帰る。 しかし、待ち合わせ場所に彼は現れなかった。彼も娼婦がフランチェスカだと気付いていたのだ。

第四話(フィレンツェ
まだ解放されていないフィレンツェ市ではイタリア解放軍と独軍が、市街戦を行っていた。アメリカ人女性ハリエットは、レジスタンスとして地下に潜っている恋人のギイドを探していた。ある日、その仲間から彼が負傷したことを知らされる・・・。

彼女は、銃弾が降りかかる市街地を何とか中央突破し、銃弾に倒れた味方から、ギイドが亡くなったことを知らされる。絶望した彼女もまた敵の銃撃に倒れた。

第五話(フランシスコ修道院
撤退するドイツ軍は、「ゴシック・ライン」を防衛線としたため連合軍の間に激戦が行われた。山間地には、フランシスコ修道院があった。ここへ三人のアメリカ従軍牧師がやって来て宿を求めた。三人は、カトリック神父とプロテスタント牧師さらにユダヤ教ラビである。修道士は、三人の土産の缶詰を材料に夕食を作ろうと考えていた・・・。

しかし、二人が異教徒と知って困惑してしまう。そこで、修道士はパンだけで我慢し、二つの魂を救うことにした。事情を悟った神父は、気まずく食事をするが最後は感謝を述べてお祈りをする。

第六話(ポオ川
イタリア戦が終わろうとする1944年の冬。撤退するドイツ軍の背後にあるポオ川が流れている。そのポー川にはレジスタンスと僅かな米軍OSS(後のCIA)さらにイギリス特務機関が、ドイツ軍と戦っていた。しかし、一向に物資補給のメドはたたない。そのうち、掃討作戦に出た独軍に彼らは捕まる・・・。

翌朝、レジスタンスたちは手足を縛られ、ポオ川へと突落された。米英の戦士たちは我慢できなくなり、ドイツ軍兵士を止めようとするが逆に射たれて全員死亡する。数週間後、イタリア全土は連合軍によって解放される。

 

戦火のかなた Paisa 1946 ロベルト・ロッセリーニ製作 MGM配給 – ロッセリーニ戦争3部作の第2弾

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