(☆)世界中で高評価を得た中編SF映画
カフェのオーナーは、テレビから2分先の未来が映し出されていることに気づく。それを知った常連客は二台のテレビが向かい合うように置き、未来を映し出し悪用しようと考える。
監督と撮影はヨーロッパ企画の映像責任者山田淳太、脚本はヨーロッパ企画代表の上田誠である。

主演は土佐和成(ヨーロッパ企画)と元東宝芸能の朝倉あき。共演は石田剛太(ヨーロッパ企画)。

雑感

タイトルの「ドロステ」とは、映像のドロステ効果(20世紀の初頭にドロステ・ココアというココアが発売された。そのパッケージに修道女が描かれているのだが、この修道女がこのパッケージを持っていて入れ子状態になっている)に由来するもの。

ヨーロッパ企画は、VTuber「月ノ美兎」のYoutube配信で知って以来、代表の上田誠の原作作品(映像作品や舞台)を見ていた。今回の映画は、上田誠の短編映画「ハウリング」を中編化したものであり、前作を見た観客にも意外な結末を見せる。

全編がワンカットのロングショットに見えるように、山口淳太監督自ら撮影を行っている。
公開にあたって上映劇場拡大や映画祭出品の支援をクラウドファンディング「Motion Gallery」で募った。下北沢とヨーロッパ企画の地元・京都から公開したが、CFの結果でTOHOシネマズでも公開された。
日本国外でさらに高く評価され多数の映画賞を受賞している。

ヒロイン役の朝倉あきは、東宝芸能時代に「とめはねー鈴里高校書道部」にヒロインとして出演してから、ずっと好きでよく見たり聞いたりしていた(彼女はNHKラジオドラマの声優もしていた)。小規模プロダクションに移籍してからは、芝居は特にうまいとは思わないが、存在感がある演技を続けていた。
今回、映画を見ていて、ヨーロッパ企画の新入りかなと思ったのが、客演していた朝倉あきだった。しかし、役作りしたのか、かつてと比べて激痩せしていた。そのおかげで31歳にしてぐんと綺麗になったけど、恋してるのかなあ。幸せになったらいいなあ。また新たな事務所を替えたようだ。

 

キャスト

カトウ(喫茶店マスター):土佐和成
メグミ(美容師):朝倉あき
アヤ(喫茶店店員): 藤谷理子
コミヤ(ラジオドラマの作家):石田剛太
オザワ(スマホゲーム開発者):酒井善史
タナベ(自転車屋):諏訪雅
フルヤ(ヤミ金):角田貴志
ナリタ(フルタの弟分):中川晴樹
キンジョウ(タイムパトロール):永野宗典
イシヅカ(タイムパトロール):本多力

スタッフ

原案・脚本:上田誠
監督・撮影・編集:山口淳太
音楽:滝本晃司

 

ストーリー

喫茶店マスターのカトウが2階の自室へ戻ると、部屋のモニターから2分後の未来にいる自分に「2分前の自分に教えるため、1階の店に降りてこのモニターに向けて話しかけろ」と言われる。
カフェのモニターを見ると、二分後の自分が現れるので、聞いたとおりのことを話す。
2階の部屋に戻ると、カフェの中にいる「二分前のモニターの中の自分」がSF的なことが起きていると言う。

これはタイムマシンならぬタイム・テレビだ、と店では大騒ぎになる。マスターが部屋に行くと、モニターにアヤやコミヤが映っていて、「これは2分前の過去」と言う。お客はくじが当たったと喜び、カトウは片想いしている美人美容師メグミをライブに誘ったらオッケーだったと教えられる。カトウは、喜び勇んでメグミを誘いに行くが、その音楽は嫌いと断られる。未来の自分は、必ずしも事実を伝えていない・・・。

オザワは、モニターをカフェに運び、向かい合わせにして4分後までがわかるようにする。彼は皆に未来が見えるドロステ構造(映像の入れ子構造)の説明をする。画面の布を外すと遠い未来のオザワからガチャガチャの結果を教えられ、オザワは飛んでいく。今度はモニターにコミヤとタナベが顔を出して、捨てられていたビデオデッキから札束を拾ったと言う。コミヤとアヤ、タナベはすぐに出ていく。

カフェにメグミがシンバルを持って来る。前の男が置いていったものだったが、人の好いカトウは預かる。ドロステレビにメグミが気付く。
そこへタナベらは、ビデオデッキの中の札束を拾って帰ってくる。
するとそこへヤクザがテーブルに上に置いた札束を見つけて怒り出す。隠していたものらしい。カトウは殴られ、メグミをヤクザの事務所に連れ去る。
そこへガチャガチャで当たったオザワが帰ってくる。オザワは、カトウにモニターを持って事務所に助けに行くように指示する。
事務所への階段を登りながらアヤからケチャップを渡され、更にコミヤからは背中にシンバルを入れられる。事務所にはいったカトウは、包丁をもったチンピラに腹から突っ込みケチャップをまき散らす。背後から銃撃されるがシンバルのおかげで助かり、メグミを連れて部屋から出る。

カフェに戻ると、アヤやタナベたちが倒れて、店の中には時空パトロールだという二人がいた。
二人はカトウとメグミに最近の記憶を消す薬を渡す。
メグミとカトウは、モニターの前でくしゃみをして薬を吹き飛ばす。その途端に時空パトロール員は、消えてしまう。
モニターの向こうで、親しくなったメグミとカトウが二人並んでモニターのスイッチを切った。

 

ドロステのはてで僕ら 2020 トリウッド/ヨーロッパ企画製作 下北沢トリウッド配給 -短編映画「ハウリング」を長編にリブートして国際的高評価を得る

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