1946年のアーネスト・ヘミングウェイ原作、ロバート・シオドマク監督作品「殺人者」を1964年にリメイクしたフィルム・ノワール作品だ。旧作では保険調査員が犯人が誰なのか推理しているが、この作品では殺し屋が何故詰まらない男を殺さなければならなかったのかを謎解きする

監督はアクション映画の大監督ドン・シーゲル
主演はリー・マーヴィン、共演はクルー・ギャラガー、ジョン・カサベテス、アンジー・ディキンソン、ロナルド・レーガン(元大統領)。
カラー作品。

 

あらすじ

殺し屋チャーリーとリーは冴えない聾学校教師ジョンを射殺した。理由は金を持ち逃げしたからと言う話だったが、そのようには見えなかった。しかも突然銃を向けられた瞬間、ジョンはニヤッと笑ったまま逃げなかったのだ。

殺し屋たちは何故こんな男を殺したのかと疑問を持ち、ジョンの過去を探った。ジョンは四年前の郵便強盗に関わりがあったらしい。まずジョンはカーレースの名ドライバーだったことを知る修理工シルベスターを訪ねる。シルベスターによると、シーラという女と出会って、彼はシーラに一目惚れしてしまった。結局レース直前の四日間シーラに連れ回され、レース当日に大事故を起こして二度とレースに出られなくなった。

次にフロリダのミッキー・ファーマーを訪ねる。ミッキーはジョンを知っていた。ミッキーと当時のボスだったジャックは現金輸送の車を襲う計画をジョンにも教える。ジャックは悪路を素早く運転できるドライバーを必要としていた。ジョンはその仕事を引き受けて、見事に成功する。ところがジョンは盗んだ100万ドルを持って高飛びしてしまう。それを聞いたところでミッキーにこの話を忘れろとチャーリーは念を押す。

ジャックはブラウニング開発を経営する不動産業者になっていた。彼にシーラの居場所を尋ねると、この街に住んでいると言う。チャーリーは貧しい教師ジョンが百万ドルを持ち逃げしたわけはないと考えていた。ジャックがシーラと組んで仲間を騙して、百万ドルを元手に実業家になったのだ。殺し屋たちはジャックに盗んだ100万ドルをよこせと脅す。
シーラの居場所を掴んだチャーリーは、シーラを問い詰め全てを白状させる。シーラはジョンに百万ドルを盗ませた後、ジャックを待ち伏せさせジョンを殺そうとする。金を奪われたジョンは逃げ出すが、四年後田舎で教師にしていたところを突き止めたジャックが殺し屋に依頼したのだ。
殺し屋たちがシーラを連れてホテルから出るところをジャックは屋上から狙撃する。リーは即死し、チャーリーも腹を撃ち抜かれる。しかしチャーリーは最後の力を振り絞り、ジャックとシーラを自宅まで追い詰め、撃ち殺した。だが出血多量のため、チャーリーも現金を抱えたまま死ぬ。

 

 

今日のセリフ

It’s not only the money. Maybe we get that and maybe we don’t. But I gotta find out what makes a man decide not to run … why, of all sudden, he’d rather die.

「金だけじゃない。上手く行くかどうかは分からない。それより、あの男が何故逃げなかったのか知りたい、、、突然(銃を向けられても)死を選んだ理由を」

シルベスターを訪問後、ミッキーの居場所を友人から聞いたチャーリーが、「まだ死んだ男の過去を洗うのか」とリーに聞かれて、答える台詞。

雑感

本作品は原作からの改変というより、旧作「殺人者」(1946)からの翻案だ。なかなか良くできていて、旧作から続けて見ても、同じ原作から作られた映画とは気付かない。殺し屋を探偵に使って推理させるあたりはなかなか面白かった。

しかし上映時間が長いのに、証人が二人だけしかいず回想シーンのテンポが悪く、冗長に感じられた。ハードボイルドらしいのが本作品だが、それゆえ旧作の方が十分に練られた脚本に思える。どちらか一方を取れと言われたら、脚本の良い旧作を取る。

それにTVドラマ「女刑事ペパー」役がお似合いなアンジー・ディキンソンに大女優エヴァ・ガードナーの代わりが勤まるわけがないという思い込みもある。ちなみに彼女はケネディ大統領シンパだったので、撮影中にケネディ暗殺が伝えられその場で卒倒してしまったそうだ。

 

ロナルド・レーガンはインテリ系俳優で売っていたが、この作品で悪役だったので映画に出るのは嫌だったそうだ。この作品で映画界を引退し、1967年にカリフォルニア州知事に当選し就任して、1975年まで勤めた。1968年、1976年と大統領選挙に挑戦し、1976年共和党大会の決選投票まで行ったがフォード大統領(当時)に僅差で敗れている。そして1980年大統領選挙で民主党現職カーター大統領に圧勝で当選し、大統領を二期勤める。

 

ジョン・カサベテスが演じたジョン・ノースは何故死の瞬間ニヤッと笑ったのか?逃げ隠れする生活に飽きたのだろう。それに、神仏より女を神様のように崇拝している男はいる。そんな男が二度も同じ女に騙されたと知ったら生きているのが情けなく、虚しくなるだろう。

 

ちなみにジョン・カサベテスが乗っていた車は、フォード社の供給する部品を組み立てシェルビー社の作った筐体に収めたシェルビーACコブラ260というレーシングカーだ。

 

スタッフ

製作・監督 ドン・シーゲル
原作 アーネスト・ヘミングウェイ
脚色 ジーン・L・クーン
撮影 リチャード・L・ロウリングス
音楽 スタンリー・ウィルソン
主題歌 ナンシー・ウィルソン 「Too Little Time」 作曲ヘンリー・マンシーニ、作詞ドン・レイ;「グレン・ミラー物語」挿入曲に歌詞を付けた。

キャスト

殺し屋チャーリー リー・マービン
シーラ・ファー アンジー・ディッキンソン
教師ジョニー・ノース  ジョン・カサヴェテス
殺し屋リー   クルー・ギャラガー
不動産業者ジャック・ブラウニング  ロナルド・レーガン
ジム経営者 ミッキー・ファーマー ノーマン・フェル
修理工 アール・シルベスター クロード・エイキンズ
クラブ歌手  ナンシー・ウィルソン

殺人者たち The Killers 1964 Revue Studios 製作 ユニバーサル配給 ヘミングウェイ原作小説のリメイク映画

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