ナチスドイツの将校の物語とアメリカの二兵卒の物語を同時並行的に描いて、最期に二つの運命が交錯することにより、戦争の非人間性を明らかにする。
主演はナチス側がマーロン・ブランド、アメリカ側がモンゴメリー・クリフトディーン・マーティンの異色顔合せ。
監督は「ケイン号の叛乱」のエドワード・ドミトリク、原作は20世紀の人気作家アーウィン・ショー
 

 

あらすじ

 
ドイツ・バイエルンの冬山を訪れたマーガレットは、スキーのコーチ、クリスチャン(M.ブランド)と知り合う。しかし彼がナチスがドイツのおかげで生活しやすくなったと語るのを聞いて、マーガレットは虚しさを感じドイツを後にする。マーガレットがニューヨークに戻って、恋人のマイケル(ディノ)と会う。マイケルは懲役忌避するか否かで悩んでいる。
一年後、ドイツ軍の将校になったクリスチャンは寡婦フランソワーズを気にいるが、やはり拒まれてしまい、ナチスに疑問を抱き始める。
マイケルは徴兵検査で知り合ったノア・アッカーマン(M.クリフト)をパーティーに招く。そこでノアはマーガレットの友人ホウプ(H.ラング)と知り合い、愛し合う。ノアはユダヤ人だったが、ホウプの父親に許しを得て結婚し、短いが幸せな時間を過ごして、徴兵される。
クリスチャンはハーデンブルク大尉(M.シェル)に休暇を願い出て、ベルリンへ帰りハーデンブルク夫人に土産を渡しに行く。夫人は夜な夜な将軍たちとパーティー三昧でクリスチャンも誘惑してしまう。クリスチャンは怠惰なベルリンに嫌気がさし、ロンメル将軍のいるアフリカ戦線に志願する。
マイケルと同じ部隊になったノアは中隊長からしごかれ、新兵からも虐められる。ある日、あまりの侮辱に新兵たちと四週連続で決闘をすることになった。三人には倒されたが、最後の一人を倒すことができて周囲の見る目が変わってくる。翌日ノアは朝礼をサボり営倉送りになる。マイケルはイジメを大隊長にブチまけてロンドン転属を申し出る。中隊長は軍法会議に送られ、ノアは舞台に戻り仲間たちから歓待される。
アフリカ戦線のクリスチャンは敗色濃厚となり、ハーデンブルク大尉と脱出を図るが、地雷を踏んでともにフランスの野戦病院に運ばれる。顔を失ったハーデンブルクは自殺して、クリスチャンは自棄になりフランソワーズと逃げようとするが、行き場所のないことに気付き在仏独軍に留まる。
ロンドンにいたマイケルは情報部勤務のマーガレットと再会したが、彼女には新しい恋人ができていた。マイケルはノルマンディーに上陸した連合軍に志願する。
ノアの部隊は既にフランスに上陸し、敗走するドイツ軍を追っていたが、深追いして退却することになる。その際、逃げ遅れたかつて決闘した兵士をマイケルと二人で助け出す。
クリスチャンは仲間と逸れ、収容所に助けを求める。そこにはこの期に及んでナチスを盲信する親衛隊出身の収容所長がいた。何もかも嫌になったクリスチャンは、丸腰で敵前に飛び出す。そこで収容所を解放してユダヤ人を救出したマイケルらと遭遇して、射殺される。ノアは何の感慨もなくクリスチャンの惨めな遺体を見つめている。
 

雑感

モンゴメリー・クリフトは交通事故後の作品。それまでの映画とは完全に顔が別人である。ビートたけしのように性格俳優に顔面にメスを入れることは決して不利なことではないのだが、特殊な事情があって彼はさらに麻薬に溺れるようになっていった。
マーロン・ブランドはドイツ人の設定なので、普段より英語が聞きやすい。
 
映画は、フランク・シナトラが助演男優賞を受賞して復活した映画「地上より永遠に」の二番煎じのようだが、米軍内のイジメ映画で終わっていないこと、ドイツ軍の苦悩を描いている点で違っている。
アーウィン・ショーの原作小説を読んでないが、だいたい原作通りではないか。物語の起伏、盛り上がりがなく、まるで小説のようだった。
ハーデンブルク大尉は何故クリスチャンを降格や軍法会議にかけなかったか?やはり彼にもほんの少し良心が残っていて、クリスチャンに同情するところがあったからだろう。つまりクリスチアンだけでなく、かなりドイツ人に対して同情的である。ただし、良心的ドイツ人は皆、作中で死ぬが。

 
フランク・キャプラ監督「ポケット一杯の幸福」にも出演するホープ・ラングが最も美しい。暗い映画の中で一輪の花のように輝いていた。ユダヤ人の妻役の彼女を最も美しく撮るのは、ドイツを立てたらユダヤも立てなければならないというバランス感覚を感じる。
「地球最期の日」に出演したバーバラ・ラッシュはだいぶん貫禄が付いた。役柄が米軍勤務という立場上、恋人マイケルを戦場に送り出さなければならず、それ故に別れてしまう。ドイツやフランスの愛人たちも戦争で出会って戦争により引き裂かれる。
 
リー・ヴァン・クリフがチョイ役で出演。

スタッフ・キャスト

 
監督 エドワード・ドミトリク
製作 アル・リクトマン
原作 アーウィン・ショー
脚色 エドワード・アンハルト
撮影 ジョー・マクドナルド
音楽 ヒューゴー・フリードホーファー
 
配役
クリスチャン マーロン・ブランド
ノア    モンゴメリー・クリフト
マイケル  ディーン・マーティン
ホウプ   ホープ・ラング
マーガレット バーバラ・ラッシュ
ハルデンベルク夫人 マイ・ブリット
ハルデンベルク大尉 マクシミリアン・シェル
リケット軍曹 リー・ヴァン・クリーフ
フランソワーズ リリアン・モンテヴェッチ
グリーン中尉 アーサー・フランツ
 

若き獅子たち The Young Lions 1958 20世紀フォックス製作・配給

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