ノーベル賞作家アルベール・カミュの名作小説「異邦人」(仏題: L’Étranger)のルキノ・ヴィスコンティ監督作品。
主演マルチェロ・マストロヤンニ。共演アンナ・カリーナ、ベルナール・ブリエ

あらすじ

1936年のアルジェ。
真夏にサラリーマンであるムルソーの母がマレンゴの養老院で死んだ。養老院の施設長が最後の対面のため棺を開けようとしたが、ムルソーは断る。棺の側で母の友人と共に通夜をしたムルソーは、葬式の日に、アルジェに帰った。タイピストのマリーと海べで会い、俳優フェルナンデルが出演している喜劇映画をみた。その後はムルソーの部屋で一夜を共にする。

ムルソーは上の階に住むポン引きであるレイモン・サンテと付き合っていた。レイモンがトラブっていたアラブ娼婦から殴られるという事件が起きた。ムルソーはレイモンに言われた通り警官の質問に答えて、レイモンは釈放された。

別の週末マリーはムルソーに結婚してほしいと言った。ムルソーは、「多分愛していない」と冷たい返事をした。またムルソーは上司からパリ支店への異動を誘われたが、断ったと言った。パリはいたことがあるが、冷たい街だという。

ムルソーとマリーは、レイモンと一緒に友人の海岸の別荘に出かけた。別荘の主人、レイモン、ムルソーが海岸を散歩していると、二人のアラブ人と出会った。レイモンに殴られた娘の兄もいた。兄はナイフを持ち出し、レイモンが刺される。別荘の主人はレイモンを診療所に運んだ。
帰ってきてから再びレイモンとムルソーは海岸を調べると、まだアラブ人二人はいた。レイモンは銃を持ち出すが、ムルソーはそれを取り上げ、ガンを飛ばすと、アラブ人は逃げていった。

一旦部屋に戻ろうとレイモンは言ったが、ムルソーはまた海岸にもどった。太陽がギラギラとまぶしい。湧き水の出るところにさっきのイスラム系住民の一人が陣取っていて水が飲めない。空を見上げると、日光で気が遠くなる。ムルソーは、ボートした精神状態でアラブ人がナイフを抜いたのを見て、思わずピストルを一発放った。銃声で気が付き、目の前にアラブ人が倒れている。しかしムルソーは銃で更に四発命中させた。

ムルソーは捕えられた。予審判事の尋問に、ムルソーは母の死んだ日のことからすべてを正直に無感情に話した。
法廷でも、葬式の翌日、喜劇映画を見たことや、マリーと寝たことを話した。カトリックである検事も陪審員も、母親の死直後の彼の行動を不謹慎と感じた。
最後の弁論でムルソーは殺人の原因を問われて、「太陽が暑いから」と答える。陪審員は有罪と決定して、判事は公開ギロチンを宣告した。死刑囚用独房で無神論者ムルソーは神父と話が食い違ってしまう。
いよいよ刑吏に引き出され、絞首台に引かれていくムルソーは、死を受け入れることにより、今までの不自由な生活から救われて、真に自由な人間になるのだ。

雑感

この映画は一般に不評だ。しかし原作を映像化するためには、テキストが足りない。その部分を埋めていくと、こう言う形の映像化もありうるわけだ。原作者の通りに作っても映像としてまとまらない。

不条理主義?こんな事件は最近日常茶飯事に起きているのだから、そう言うレッテル貼りで蹴りをつけるべきではない。

ムルソーは学校の試験の失敗で壊れてしまった人間だ。原作ではムルソーが平凡に見えるが特殊な考え方を持つ人間として描かれてるが、25年後に撮られた映画ではムルソーがキリスト教に対して不信を持つ人間として描かれている。学生運動が起きマルクス主義が街に溢れる時代としては、当然のことだ。
そしてムルソーは失敗した人生がうざかったのである。死刑になれば、ウザさから自由になれると信じたのだ。

今だったら、熱中症による人事不省による過剰防衛で弁護して、殺人罪で懲役刑あるいは病院送りだろう。少なくとも今のアメリカならそうやって法廷闘争する筈だ。

ルキノ・ヴィスコンティ監督もイタリア貴族出身だからイスラム系に対してある種の感情を抱いていただろう。原作ではあまり人権意識を感じなくて行きずり殺人のように思ったが、映画ではレイモンやムルソー側に露骨にアラブ人に対して敵視する姿勢があった。
その点で原作者アルベール・カミュと監督は相反する立場から解釈して映像化したと言える。

マルチェロ・マストロヤンニの演技はいつもの通り。
ここではアンナ・カリーナが登場する。いささか役不足だった。
後はベルナール・ブリエだ。さすがヴィスコンティ監督は役者には金をかける。

スタッフ

監督 ルキノ・ヴィスコンティ
脚本 スーゾ・チェッキ・ダミーコ、エマニュエル・ロプレー、ジョルジュ・コンション
原作 アルベール・カミュ
製作 ディノ・デ・ラウレンティス
音楽 ピエロ・ピッチオーニ
撮影 ジュゼッペ・ロトゥンノ

 

キャスト

アーサー・ムルソー:マルチェロ・マストロヤンニ
恋人マリー:アンナ・カリーナ
友人レイモン:ジョルジュ・ジェレ
弁護人:ベルナール・ブリエ
顧問弁護士:アルフレッド・アダム
予審判事:ジョルジュ・ウィルソン
司祭:ブリュノ・クレメール
雇い主:ジャン=ピエール・ゾラ

 

 

 

 

異邦人 Lo Straniero 1967 イタリア+フランス+アルジェリア合作 パラマウント国内配給(1968)

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