イングランドのデボン州ダートムアにおける魔犬伝説を背景に、謎の死を遂げた大富豪の相続人の身辺保護を依頼されたシャーロック・ホームズは・・・。
アーサー・コナン・ドイルの原作をピーター・ブライアンが大胆に脚本化してテレンス・フィッシャーが映画化した作品。
主演がピーター・カッシングクリストファー・リーの黄金コンビ。カラーシネスコ。

あらすじ

シャーロック・ホームズは、モーティマー医師の訪問を受け、バスカヴィル家に伝わるダートムアの魔犬伝説とチャールズ卿の怪死事件について知らされる。ホームズは南アフリカから渡英して来る相続人ヘンリー卿の身辺保護を依頼されるが、代理にワトソンをダートムアに送り込む。
ヘンリーとワトソンが到着して以来、バスカヴィル家には聞かな事件が起きる。刑務所から脱獄囚が荒野に潜んでいたのだ。そんな中、ヘンリーはフランク・ランド司教からの訪問を受け、隣人ステイプルトンと入れ違いになったとき、野生的な娘セシルと出会い一目惚れしてしまう。

荒野に怪しい影を見かけたワトソンは単身探索するが、それは何とホームズだった。彼は脱獄囚と話をして、荒野について知識を得ていた。
そのとき叫び声が聞こえて、崖から転落する男の姿を見た。その男はヘンリー卿と同じ上着を着ていたので、てっきり卿だとホームズは思ってしまうが、ヘンリー卿は屋敷にいたのだ。死んだのは脱獄囚であり、バリモアの妻の弟だった。
翌日、ホームズとワトソンが死体を探しに行くと消えていた。血痕を追うと廃屋に死体は手足を噛みちぎられた形で隠されていた。
ホームズはモーティマー医師とステイプルトンと共にステイプルトン邸の下にある廃坑を探索に行く。そこでホームズは牛の骨を発見するが、突然廃坑の天井が崩れ去る。ホームズは生き埋めになってしまったかと思われたが、いつの間にか脱出していた。どうやら抜け道があるようだ。
その夜、ヘンリーはステイプルトン家に招かれるが、ホームズはわざと一人で行かせる。帰路でヘンリー卿に大型の野犬が襲いかかる。その様子をステイプルトン親子が嬉しげに見ている。そこにホームズとワトソンが颯爽と登場し、ステイプルトンと野犬を射殺する。セシルは慌てて沼地に逃げ込んだが、底なし沼に沈んだようだ。

雑感

英国のハマーフィルム製作だから、スリラーでありながら英国人らしく謎解きの部分をしっかり作ってくると思っていた。
しかしアメリカ市場(ユナイト配給)をかなり意識したものだった。最初のロンドン編も、最後の原作にない落盤事故も雑な作りでがっかりさせられた。

ピーター・カッシングは当時最も素晴らしいシャーロック・ホームズを演じたと新聞に批評されたそうだが、確かにジェレミー・ブレットが参考にしたような感じだった。でも背が高くないので、威厳がなかった。

ヘンリー役のクリストファー・リーの方が背が高いから、こちらをホームズ役にして、カッシングはステイプルトン役に回すべきだった。

 

原作からの変更点。
ステイプルトンはリンゴ農家である。妹のベリルが娘のセシルに置き換わっている。娘セシルはヘンリー(4親等の遠縁になる)と結婚してから容易に殺すことはできたはずで、わざわざ魔犬を使って怪しい殺し方をしなくても良かったのだが。
フランク・ランドは昆虫マニアの司教になっている。娘は現れない。
依頼人であるモーティマー医師がホームズに対して敵対的である。恐らくワトソンに護衛を任せたためだろう。それによって原作未読者はステイプルトンとモーティマーのどちらが犯人か共犯か迷うことになる。
バリモアに髭が生えていない。従ってステイプルトンがロンドンで、付け髭をつけてバリモアに変装する必要はなかった。その代わりステイプルトンは、ランドの飼っていた毒蜘蛛を盗み出しヘンリー卿の
荷物に忍び込ませた。セシルはロンドンに来る必要はなかったようだ。
セシルはスペイン人の母を持っていた。英国の風土が嫌いで、早くスペインに帰りたがっている。

スタッフ

監督テレンス・フィッシャー
脚本ピーター・ブライアン
原作アーサー・コナン・ドイル
製作アンソニー・ハインズ
製作総指揮マイケル・カレラス
音楽ジェームズ・バーナード
撮影ジャック・アッシャー

 

キャスト

シャーロック・ホームズ:ピーター・カッシング
ジョン・ワトソン:アンドレ・モレル
ヘンリー・バスカヴィル卿:クリストファー・リー
セシル:マーラ・ランディ
モーティマー医師:フランシス・デ・ウルフ

 

 

 

 

バスカヴィル家の犬 The Hound of The Baskervilles 1959 英ハマー・スタジオ製作 ユナイト配給 国内劇場未公開 ピーター・カッシングがホームズを演ずる!

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