(△)フラメンコを上手く使った、戦前戦後にわたる女の年代記
「笛吹川」に続き、木下恵介が製作・脚本・監督を務めた、愛憎を越えた夫婦映画
白黒映画楠田浩之が撮影した。
主演は高峰秀子、共演は仲代達矢、佐田啓二

雑感

1時間47分の映画だが、ドロドロの憎しみが何重にも重なった、5部からなる年代記映画である。
田村正和の映画出演第二作映画で初の現代劇である。仲代達矢演ずる平兵衛の長男で両親の秘密を知り自殺してしまうナイーブな役だ。

婚約者の出征中に鬼畜の平兵衛に操を奪われ、不本意にも庄屋の家に嫁入りしたさだ子が戦争が終わってからも15年の歳月を掛けて、夫に復讐を果たす。しかし、子供たちがいたために事態はそれだけでは終わらなかった・・・。

映画音楽は、木下恵介監督の弟木下忠司が務めるが、いつもと違い日本語によるフラメンコの歌を使っている。
それが、本場スペインで聞いたフラメンコとかなり違うのだ。西郷輝彦の「星のフラメンコ」とも、長谷川きよしの歌とも違う。完全な和風フラメンコだった。

後の田宮二郎夫人藤由紀子が平兵衛の長女役で出演している。

 

キャスト

高峰秀子  さだ子
仲代達矢  さだ子の夫・小清水平兵衛
加藤嘉  さだ子の父草二郎
佐田啓二  川南隆
野々村潔  兄力造
永田靖  小清水の父平左衛門(庄屋)
浜田寅彦  越沼
乙羽信子  隆の妻友子
田村正和  平兵衛の息子栄一
戸塚雅哉  平兵衛の息子守人(弟)
藤由紀子  平兵衛の娘直子(妹)
石浜朗  隆の息子豊
東野英治郎  駐在のお巡り

 

スタッフ

製作  月森仙之助
製作、脚本、監督  木下惠介
撮影  楠田浩之
音楽  木下忠司

ストーリー

第一章 
昭和七年、上海事変勃発。阿蘇の庄屋小清水平左衛門の小作人草二郎の娘さだ子は川南隆と将来を約束していた。
平左衛門の息子平兵衛は、隆と共に出征したが、平兵衛だけ脚を故障して、栄誉の除隊となった。平兵衛が帰ってきた日、貴に嫉妬した平兵衛はさだ子を無理矢理犯した。実は、父草二郎もその事は承知していたが、小作人として抵抗できなかった。
そこに隆が帰国した。事件のことを知った彼は、さだ子と逃げだそうとしたが、約束の場所にさだ子は来なかった・・・。

第二章 
昭和十九年。さだ子は平兵衛と結婚して、三人の子をもうけていた。隆は、再び戦争に応召していた。隆も結婚して、妻の友子は息子豊と暮らしていたが、平兵衛が手伝い女として使うことにした。ある日、平兵衛は友子に手を出そうとしたが、さだ子が発見する。翌日、友子は郷里へ帰った。

第三章 
昭和二十四年。隆は帰ってきたが、結核になっていた。さだ子と平兵衛の間に生まれた長男栄一は高校生になったが、自分の出生の秘密を知り、阿蘇の火口に投身自殺した。

第四章 
昭和三十五年。さだ子の長女直子と隆の息子豊が、さだ子の手引きで大阪に駆け落ちした。また、東京の大学に入っている次男守人が安保反対デモに参加したかどで、逮捕状が出た。守人から電話が掛かってきて、さだ子は守人に会い金を渡して逃がした。さらに、さだ子は隆と別れた友子と出会い、友子に豊と直子の家を教えた。

第五章 
昭和三十六年。隆は、無理がたたって結核を悪化させ、死の床にある。息子豊と妻直子夫妻は、可愛らしい赤子を連れて駆けつけた。隆はさだ子に「平兵衛を苦しめた、謝罪したい」と告白した。さだ子に言われて、平兵衛は脚をひきづりながら隆の枕元にまでやって来る。
平兵衛夫妻は三十年間、憎みあった故に周囲を不幸に巻き込んできた。しかし、二人の心にも感謝の気持ちが湧いてくる。

 

永遠の人 1961 松竹製作・配給 女の憎悪をフラメンコに乗せて描く年代記

投稿ナビゲーション