せっかく楽しみにしていた島田荘司原作の名探偵御手洗潔作品の映画化だったが、結論を言うと残念な映画だった。これは原作者が映像化を意識して脚本原案を書いた後、小説に無理矢理翻案した時点で予想していたことだ。またデビュー当初と違って高齢者になって作風がかなりブレている。その影響が映画にもストレートに出てしまった。島田荘司の歴史ミステリーもあまり面白くなくなっている。
主役の玉木宏は相変わらず上手くないが、ミステリーにおいては大した問題ではないと思う。それより玉木を生かす構成を作れなかったことが問題だ。
なお映画では御手洗の相方石岡(テレビドラマでは堂本光一) は取材に行っていて顔を出さない。その代わりに編集者として広瀬アリス扮する小川がワトソン役になる。福山市制百周年記念映画でもある。先生も故郷に錦を飾りたいお年頃なのだ。

あらすじ
福山警察の捜索隊が到着した時、男女が一組池の中で後ろ手に縛られていた。男は目を縫われ、女は口を縫われていて生命には問題ないが、乳幼児が一人水の中で死んでいた。
一方、御手洗潔は瀬戸内海の島に死体が多く流れ着くという話を聞いて現地にやって来る。現地を一目見て潮流によるものと見抜き、水理実験により福山市から流されたものと知る。
舞台は福山に移る。福山署黒田刑事の協力を得て御手洗は死体がどこから出たのか捜査する。そのとき、福山市内で女性に変死体が見つかる。御手洗は被害者の部屋を捜索して新型麻薬を大量に発見する。そして御手洗は死体の運び屋が現れるのを待つ。まもなく屈強な外人たちが現れたが、無事全員逮捕した。
そのころ滝沢教授は福山藩主老中阿部正弘のペリー来航の際に対する出陣図を見て興奮していた。
御手洗は署内に捜査本部が立っているのを知っていて、参加を申し出る。冒頭の殺人事件だったが、初めは幼児の営利目的誘拐事件だった。しかし犯人は金を奪うとスタンガンで居比夫婦を気絶させ、気がつくと冒頭のシーンになっていた。ところでベビーシッター洋子がいたが誘拐されるときに刺されたそうで入院している。
西京化学工場滝沢教授は現れた。阿部正弘関連の資料が移設されると聞き駆けつけたというわけだ。
御手洗は居比宅を訪問した。一目見ただけでベビーシッターが犯罪に関わったことがわかったようだ。彼女の周辺調査を黒田に依頼する。
滝沢教授は書類を持っての帰途、外国人が走って来てぶつかった。それ以来誰かの監視の目が纏わりつく。
ようやく洋子に事情徴収を行えるようになった。洋子が事件に絡んでいる事と推理している御手洗は、意味深な言葉を残して出ていく。三橋刑事が洋子の身の回りの人間のアリバイを調査してくれた。洋子の恋人小坂井のアリバイが怪しい。
滝沢教授が歩道橋の上で外人の男たちに襲われ、抵抗したため一人の男が橋から落下した。彼女は阿部正弘の星籠(江戸幕府の新造船) を探し始めて以来、怪しい影に付け回されるようになっていた。
西京文化センターの小坂井は恋人洋子に連絡を取り、何か預かったものをヤクザらしいものに奪われたという。それを聞いて洋子は顔面蒼白になる。
滝沢教授は星籠の謎を追って忽那島へ向かう。しかし星籠に関する資料は鞆の忽那造船に渡ったと言う。忽那造船はすでに倒産していたが、小坂井さんが社長の息子だった。小坂井は幻の星籠の模型を見せてくれる。別れの時、滝沢に随行していた御手洗が共犯者は手袋でわかることを教える。
居比を恨んでいる人間が浮かんで来た。居比が西京化学新工場反対運動の闘士で西京化学の部長を一人自殺に追い込み、妻も心労ですぐ亡くなっている。しかしその遺児は行方がしれない。御手洗は居比宅へ黒田刑事を連れていくと、小坂井が手袋を探して居た。小坂井はすべてを白状した。しかし真実はそうではなかった。蛍光灯が切れかけているのを治そうとして、洋子が抱いていた赤ん坊を地面に落としてしまったのだ。
さらにこの複雑な事件には黒幕がもう一人いた。(犯人が誰かは中間点でわかるはず)

監督 和泉聖治
原作 島田荘司
脚本 中西健二 、 長谷川康夫
音楽 岩代太郎

配役
御手洗潔 玉木宏
小川 広瀬アリス (広瀬すずの姉)
滝沢教授 石田ひかり
小坂井 要潤
洋子 谷村美月
黒田刑事 小倉久寛
槙田社長 吉田栄作
三橋刑事 渡辺邦斗(ウルトラマンジードの悪役)

探偵ミタライの事件簿 星籠の海 2016 東映

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