1934年にクローデット・コルベール主演でファニー・ハーストの人種の壁を越えたベスト・セラー小説を映画化したものをダグラス・サーク監督がリメイクした。
運命に翻弄される黒人女性の悲しさを描いたメロドラマ。
製作はロス・ハンターで、エリノア・グリフィンとアラン・スコットが共同脚色して、ダグラス・サークが監督した。病に倒れたサークにとっては、最終長編作品となった。
主演はラナ・ターナー、共演はジョン・ギャビン、新人サンドラ・ディー、スーザン・コーナー、黒人女優ファニタ・ムーア。カラー映画。
あらすじ
1947年、まだ若い未亡人ローラは、一人娘のスージーとコニー・アイランドの謝肉祭に遊びに来た。スージーが迷ってしまいローラは必死に探すと、娘は黒人女性アニーと混血の女の子サラ・ジェーンに保護されて遊んでもらっていた。アニーは白人男性に捨てられ、8歳のサラ・ジェーンを連れて求職活動中だった。ローラとアニーは、互いの身の上を同情し、ローラのアパートで共同生活を始める。
ローラは、舞台女優の経験を持っていたので、オーディションを手当たり次第に受けていた。ローラたちの写真を撮ったスティーブがその写真を現像して訪ねて来た。アニーはスティーブと一緒に、俳優が集まるレストランに行った。そこで俳優エージェントのアレンと知り合う。アレンは、新作舞台の俳優を集めていた。もう少しでローラも採用されそうだったが、アレンに体を求められたので、ローラは危うく逃げ出した。
ローラが外で働いて、アニーが家庭の面倒をよく見たおかげで、家庭は明るくなった。しかしサラ・ジェーンだけは、白人と黒人のハーフとして世間から見られることを嫌がっていた。
スティーブは、広告プロダクションに写真家として就職した。この機に、ローラにプロポーズする。ところが、ローラはアレンから劇作家エドワーズを紹介されて、女優として再デビューしたため、華やかな芸能界の生活に浸ってしまった。
十年後、女優として大成功したローラは、アニーたちとともに大邸宅に住んでいた。スージーは女子校の寮に入り、サラ・ジェーンはカレッジで学びながら夜間図書館で働いていた。
ローラは、広告会社社長になったスティーブと10年ぶりに再会した。ローラが一休みしたいと言うので、彼は世界一周旅行に誘った。しかし、芸能界は彼女に休みを与えてくれない。イタリアの名監督から、直々のオファーがあったのだ。彼女は、スティーブよりイタリア映画出演を優先した・・・。
雑感
原題の意味は、「偽りの人生」だ。原作とオリジナル映画は、白人と黒人女性がパン屋を共同経営する話だ。その邦題は、ひねりもなく直訳式に「模倣の人生」と名付けられている。
この作品はリメイクであり、登場人物を女優とメイドの関係に置き換え、ユニバーサル映画の作品として大ヒットしたメロドラマだ。
しかし、いかにもラナ・ターナー主演作らしい悲劇だ。ダグラス・サーク監督にラナ・ターナーは確かにピッタリなのだが、合い過ぎて新派劇のようにコッテリした味付けになり、二度目を見る時にはもう飽きている。
新人サンドラ・ディー、スーザン・コーナーにとってこの映画の出演は、良い経験になっただろう。特にスーザン・コーナーは、ゴールデングローブ賞の助演女優賞に輝いて、アカデミー助演女優賞にもノミネートされた。スーザン・コーナーは、ユダヤ人とメキシコ人の混血である。
個人的には、黒人女性アニー役のファニタ・ムーアの方が素晴らしい演技だったが、賞をもらうには、まだ人種の壁があったのだろう。
ちなみにサンドラ・ディーと「避暑地の出来事」で共演するトロイ・ドナヒューも脇役(サラ・ジェーンを殴る役)で出演していた。
ダグラス・サーク監督は、この作品の後に病に倒れ、長編映画を二度と監督することはなかった。
スタッフ
製作 ロス・ハンター
監督 ダグラス・サーク
脚色 アラン・スコット、エリノア・グリフィン
原作 ファニー・ハースト
撮影 ラッセル・メッティ
音楽 ジョセフ・ガーシェンソン
主題曲 サミー・フェイン「悲しみは空の彼方に」
キャスト
ローラ・メレディス(女優) ラナ・ターナー
スティーブ・アーチャー(恋人) ジョン・ギャビン
スージー(娘) サンドラ・ディー
サラ・ジェーン(アニーの娘) スーザン・コーナー
ディビッド・エドワーズ(劇作家) ダン・オハーリー
アニー・ジョンソン(ローラの友人) ファニタ・ムーア
アレン・ルーミス(エージェント) ロバート・アルダ
スージー(6歳) テリー・バーナム
サラ・ジェーン(8歳) カリン・ディッカー
フランク トロイ・ドナヒュー
***
母親の知らない間に、サラ・ジェーンに白人の恋人ができた。しかし、母親が黒人であることを彼は知って、彼女を殴って去っていった。その頃、アニーは病に伏すことが多くなり、サラ・ジェーンはカレッジを辞めて、ナイト・クラブに勤め始める。それを知ったアニーは、サラ・ジェーンを連れ戻しに行った。しかしサラ・ジェーンは、アニーを拒絶しハリウッドに行ってしまう。
一方スージーは、母がいなくなっても、変わらず会いに来てくれるスティーブに淡い恋心を抱くようになる。しかし、スティーブは母をまだ愛していた。
監督と揉めてイタリア映画を降板したローラは自宅に帰り、スージーからサラ・ジェーンのことを聞かされた。さらにアニーからスージーの初恋が儚くも終わったことを知らされた。ローラは、自分の身勝手で周りを振り回して、偽りの生活を送っていたことに気付く。
とうとうアニーが危篤になる。でも、サラ・ジェーンは現れなかった。彼女は、最後の望みとして自分の貯金を使って盛大な葬式をしてほしいと言って亡くなった。
葬儀の日、豪華な葬儀を見守る群衆をかき分けて、サラ・ジェーンが駆け寄ってきた。ローラとスージーに見守られながら、彼女は母の柩にすがって泣き伏した。