フランスを代表する自然主義文学者のエミール・ゾラの出世作をルネ・クレマンが映画化した。
ある洗濯女が田舎から出てきて、男に翻弄され、せっかく手に入れた自分の店を嫌いな女に奪われるまでを、怜悧に描く。
主演はドイツ人のマリア・シェル。白黒映画。

 

あらすじ

 
パリの裏町。洗濯女のジェルヴェーズ(マリア・シェル)はランチェ(アルマン・メストラル)と田舎から出て来た。ランチェは彼女が洗濯で貯えた金を使い果しても働こうとしない。しかも彼は2人の子をなしたにもかかわらず、彼女と入籍しようとしない。ランティエがある日近所の女と家出した。ヴィルジニイがそれを笑ったためジェルヴェーズは彼女と大喧嘩し、パンツをずり下げて尻を打つ。
彼女は屋根職人のクポー(フランソワ・ペリエ)と正式に結婚、彼女の長年の夢、洗濯屋を開く事になった。しかしクポーが屋根から落ち大怪我をして高所恐怖症になってしまい、貯えは使い果した。鍛治屋のグジェ(ジャック・アルダン)が賃料を用立ててくれた。
洗濯屋は繁昌した。しかしクポーは居酒屋へ入りびたり、グジェに返す金まで飲んでしまう。
ところが彼女は自分の祝名祭に大宴会を思いたつ。招待客の中にはヴィルジニイもいた。元カレのランチェが前を通りがかった。クポーは彼を招じ入れ、住む部屋がないというので隣室を提供した。
グジェはストライキをして懲役刑を受けた。或夜ジェルヴェーズがランチェに押さえ込まれても抵抗できなかった。出獄したグジェは彼女の話を聞いて、長男エティエンヌを連れて旅立った。そしてアルコール中毒の発作からクポーが店を破壊した上、死んでしまった。
やがて店の跡にはヴィルジニイが菓子屋を開いた、まとわりつくランチェ。落ちぶれたジェルヴェーズはあの居酒屋でグジェを思い出していた。

 

 

雑感

 

好きなタイプの「救いのない作品」だ。エミール・ゾラは現状を率直に描いただけだが、この時代は女の幸せは男次第だった。ジェルヴェーズも亭主には逆らえず、元カレと同居する羽目になって、一夜の過ちを犯してしまう。そのことが本当に好きなランティエにバレて、精神的支柱を失って堕ちるところまで堕ちてゆく。ジェルヴェーズもだらし無かったのである。
この後、続編「ナナ」では娘が女優から高級娼婦になって堕ちていく姿を描き、「ジェルミナール」で親元から離れ、ランティエに育てられた息子エティエンヌがやがて労働運動の中心となる姿を描いている。この三作品がトリロジーになっていて、うまく弁証法になっている。
 

 

 

スタッフ・キャスト

監督 ルネ・クレマン
製作 アニー・ドルフマン
原作 エミール・ゾラ
脚色/台詞 ジャン・オーランシュ 、 ピエール・ボスト
撮影 ロベール・ジュイヤール
音楽 ジョルジュ・オーリック

配役
ジェルヴェイズ マリア・シェル
夫クポ     フランソワ・ペリエ
悪女ヴィルジニ シュジ・ドレール
ボシュ夫人 マチルド・カサドジュ
ランティエ アルマン・メストラル
元恋人グジェ   ジャック・アルダン

居酒屋 Gervaise 1956 フランス製作 東和配給

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