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マッド・サイエンティスト鈴木博士が発明した薬品を注射されたアメリカ人特派員ラリーは、双頭のモンスターと化して東京の夜を恐怖に叩き落とす。

1959年の日本を舞台にした日米合作モンスター映画
ジョージ・P・ブレイクストンの原案をウォルト・シェルドンが脚色してブレイクストンが監督した。
英国からやって来たピータ・ダインリーが主演して、彼の妻役に彼の奥さんジェーン・ヒルトンを配している。
また、東宝の二世俳優コンビ中村哲ジェリー伊藤が助演している。新東宝のスタッフも参加したので、同社の低価格スリラー映画のようなムードを持ったカルト映画に仕上がっている。
撮影監督はディビッド・メイスン白黒映画だったが、見たフィルムはカラーライズ(彩色)されていて、主演ピーター・ダインリーの顔が白っぽかった。

雑感

映画自体は、「狼男」や「ジキルとハイド氏」とよく似ている。
全編日本ロケだから、当時の日本の風俗をうまく描いているが、アメリカのスタッフが暴走したために、おかしげな表現も多い。
なぜ、脱衣所で服を脱がず男が二人で酒を酌み交わすのか?さらに風呂場に移ってから男女に分かれて服を脱ぐのか?
また、ジェーン・ヒルトンは、電話で会話するシーンでカンペを見て演技していた。
この辺りは、いかにもアメリカのトンデモ低予算映画だ。ロジャー・コーマンでもこれほど雑なものは作るまい。
中村哲や日本スタッフは当然、風呂の風習は間違っていると指摘したはずだ。しかし、外人スタッフ側が面白ければ良い、と撮影を強行したのだろう。

主人公ラリーを演ずるピーター・ダインリーは、イギリス人でカナダ育ち。イギリスの舞台でキャリアを積み上げ、1954年に映画界に転身した。1960年イギリス映画「ビスマルクを撃沈せよ」にも脇役で出演している。中でも、人形劇「サンダーバード」で父親役ジェフ・トレイシーの声を演じ、オープニングのカウントダウンのナレーターとしても活躍していたことが最も有名だろう。当時の世界中の少年少女は誰でも聞いたことがあったからだ。妻役のジェーン・ヒルトンが実生活でも2番目の妻だ。

鈴木博士役の中村哲は、カナダ移民の二世でバンクーバー生まれ。本国で歌手をしていたので戦争前に来日して藤原歌劇団に客演し、戦中は東宝に入った。戦後は進駐軍向けのエンターティナーとしても勤めている。東宝特撮映画の悪役としても知られている。ジェリー伊藤とも1961年の「モスラ」で共演している。

アメリカでは、1962年になってから公開された。

キャスト

ラリー:ピーター・ダインリー(人形劇「サンダーバード」のジェフ・トレイシーの声)
ロバート鈴木博士:中村哲
妻リンダ:ジェーン・ヒルトン
鈴木の助手タラ:テリー・ジマーン
編集長マシューズ:ノーマン・ヴァン・ハウリー
アイダ警部:ジェリー伊藤
鈴木の妻エミコ:武智豊子(全編で顔にマスクを付けているため顔が見えない)

スタッフ

監督・製作・原案:ジョージ・P・ブレイクストン
共同監督:ケネス・G・クレイン
製作総指揮、脚本:ウォルト・シェルドン
撮影:デヴィッド・メイソン
美術:宮国登
特殊効果:高木新平
音楽:小川寛興(作曲家:「さよならはダンスの後で」レコード大賞作曲賞、「虹色の湖」「仮面の忍者赤影」劇伴音楽)

 

ストーリー

浅間山で宇宙線が生物の突然変異を起こすメカニズムを研究しているロバート・鈴木博士は、妻や弟に薬品を注射して、おぞましい怪物に変身させてしまった。二人を犠牲にした博士は、たまたま取材に訪れた米国特派員ラリーが見事な体型をしていることに興味を持つ。健康上の問題がないことを確認した上で薬液を注射する。ラリーは、毎夜のように鈴木と彼の美人助手タラに接待される。それは、ラリーの変化を監視するためだった。
ラリーの右手が次第に凶暴化していく。ついに右肩に巨大な瘤ができて、自分でも制御できず毎夜、無差別殺人を行うようになる。そして、彼の右肩に、もう一つの頭が生えてくる・・・。

ラリーは再び鈴木博士を訪ねるが、博士が急に注射したのでラリーは怒って殺してしまう。実は、その注射が最初の注射に対する解毒剤だったのだ。
そしてラリーは、タラをさらって浅間山火口に現れる。そのとき、彼の体に更なる異変が起きる。なんと、もう一つの頭が成長して、ゴリラのような凶暴な怪物に分離した。
その怪物は、タラを悲鳴と共に火口に沈める。それを目の当たりにしたラリーは、怪物を突き飛ばして火口に叩き落とす。
そこにようやく捜査中の相田警部と編集長マシューズ、ラリーの妻リンダが到着した。彼らは、ラリーを保護して担架で山から下ろす。果たして、殺人鬼はラリーなのだろうか?鈴木博士とタラが死んだ今となっては誰もわからない。

 

双頭の殺人鬼 The Manster 1959.7 ショー=ブレイクストン・エンタメ製作 ロパート映画配給 – 日米合作怪物映画

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