冒険小説家ジャック・フィニイの原作「盗まれた街」を後の名匠ドン・シーゲル(ダーティー・ハリー)が映画化した。
1978年ユナイテッド・アーティスツ作品「SF/ボディ・スナッチャー」(監督フィリップ・カウフマン、主演ドナルド・サザランド)のオリジナル作品(日本未公開)でもある。自分以外の町民が人間モドキになってしまうSFホラーだ。
脚本にはサム・ペキンパーも加わっており、主演は名脇役ケヴィン・マッカーシー、ヒロインにダナ・ウィンターと、後世から見るとワクワクさせる布陣だ。

 

あらすじ

カリフォルニアの小さな町で開業医を営むマイルズ(ケヴィン・マッカーシー)は町の人々の小さな変化を見逃さなかった。親戚がそっくりだが実は別人が入れ替わったと言う人が最近多くなった。所見では精神科を紹介したが、そのうち何事もないように生活している。
マイルズの元恋人ベッキーダナ・ウィンター)がイギリス留学から戻ってきた。その夜デートをしていると友人で作家のジャックから電話がありすぐ来てくれと言う。ベッキーとともにジャックの家へ急行すると、そこにはジャックの姿をした人形?があった。しかしマイルズはこの人形には内臓があり、何かのきっかけで動き出すと直感する。
この人間モドキが町に起きている怪現象の原因ではないか。やがてマイルズの家の温室でも四体の豆のサヤ状のもの発見され、サヤは裂けてマイルズたちの顔が現れた。しかし警察は相手にしてくれない

 

やがて彼は外部に町がは侵略を受けていることを知らせようとするが、町は完全に通信封鎖されていた。ジャックと妻を町外に応援を求めさせ、マイルズはベッキーと町に残るが、ジャックが戻って来たときには完全に人間モドキに体を乗っ取られていた。
逃げ出したマイルズとベッキーは山道を通り坑道に潜むが、マイルズが目を離した隙にベッキーまで体を乗っ取られる。マイルズは高速道路に出て何とかほかの町へ行き着くが、そこでも警察に信用してもらえない。しかし交通事故現場で人間大の豆のサヤ状のものが多数見つかったという通報があり、刑事は目の色を変える。

 

 

この作品で人間が乗っ取られる方法は、ごく大ざっぱなものだ。
巨大な枝豆のようなサヤ(=宇宙種子) が成熟して割れると、中から町民によく似た人間モドキが出てくる。そして当該町民が眠った隙に入れ替わってしまう。記憶は完全にコピーされている。違う点は、人間モドキには感情がないこと。
それだけのアイデアだが、3回もリメイクされて、挙げ句の果てに「クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶ踊れ!アミーゴ!」の元ネタにまでなってしまった。
この作品の意味するのは、ソ連への脅威だという意見もあり、同時に赤狩りに対する反感という意見もある。
映画関係者の中には赤狩りの被害者もいたようだが、自分としては両方の陣営の持つ脅威をうまく煽ったのではないかと考えている。
「隣は何をする人ぞ」という恐怖は誰にでもあるものだが、アメリカ・アズ・No. 1の地位に胡座をかいていた連中がふと足元を見つめたと言うところだろう。
(1956年は大統領選挙の年で、共和党のアイゼンハワー大統領が457対73で危なげなく再選されている。公民権運動は論点とならず、黒人票は主にアイゼンハワーに流れた)

 

 

 

 

監督 ドン・シーゲル
脚本 ダニエル・メインウェアリング、サム・ペキンパー
原作 ジャック・フィニイ 「盗まれた街」
製作 ウォルター・ウェンジャー

 

キャスト
マイルズ・ベネル:ケヴィン・マッカーシー(セールスマンの死
ベッキー・ドリスコル:ダナ・ウィンター (ダニー・ケイの替え玉作戦)
ジャック・ベリセック:キング・ドノヴァン
テディ・ベリセック:キャロリン・ジョーンズ
ダン・カウフマン:ラリー・ゲイツ
ウィルマ・レンツ:ヴァージニア・クリスティーン
サリー・ウィザーズ:ジーン・ウィルズ
チャーリー(ガス屋さん):サム・ペキンパー

 

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ボディ・スナッチャー/恐怖の街 1956 ALLIED ARTISTS PICTURES (米)  人間モドキ映画初期の傑作

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