原作者ベントリーは英国ミステリ界の重鎮チェスタトンの親友であり、この作品一冊でチェスタトンの没後ディテクションクラブ二代目会長に就いた(三代目はドロシー・セイヤーズ、4代目はアガサ・クリスティ)。

作品自体はヴァン・ダインの20則第3則の発表より早かったため、探偵と容疑者の一人の間のロマンスを散りばめたミステリーとなっている。

この映画で原作の映画化は三作目である。トーキーになってからは初めて。かつては非常に人気があった演目だった。

 

アメリカ金融界の大物マンダースンがイギリスの自宅庭で死体となって発見された。画家であり新聞社の特派員を兼ねるフィリップ・トレントは事件に探りを入れる。まず凶器の銃の所有者である秘書マーロウの挙動に不審なものを感ずる。しかしジグズビーの未亡人メイベルに出会い、次第に容疑者の一人である彼女に心惹かれる。そして検死審問が行われるが、判決は自殺。一方、独自に捜査を続けるトレントは重大な手がかりにぶつかる。

 

原作では中盤からトレントの歯切れが悪くなるがそれが何故か説明されていない。しかし映画ではそれがトレントと関係者のロマンス故のものであることは、トレントの視線を見ていればわかる。

また第1の犯人が自白を始めた頃に、初めて被害者が観衆の前にお目見えする。それが厚いメイクをしたオーソン・ウェルズその人である。これにも驚かされた。英会話教材「イングリッシュアドベンチャー」まで吹き込むぐらいだから、どんな仕事でも受けたのだが、それにしてもこの映画に出てくるとは思えなかった。

そして誰もが怪しいと思っていた第1の犯人が自白して、大団円と思われた矢先に意外な真実が!

ラストの大仕掛けだけでこの原作は推理小説界のレジェンドになってしまった。

 

 

監督: ハーバート・ウィルコックス
原作: E・C・ベントリー
配役
マイケル・ワイルディング
マーガレット・ロックウッド
オーソン・ウェルズ
ヒュー・マクダーモット

トレント最期の事件 1952 Republic(英国)

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