日本推理作家協会賞を受賞し、アメリカのエドガー長編賞にノミネートされた桐野夏生の同名小説を映画化。悩みをもつ平凡な4人の主婦たちが、犯罪に手を染めていく様とその結末を描いている。

「月はどっちに出ている」の鄭義信が脚色し「愛を乞うひと」の平山秀幸が監督した。
主演は原田美枝子、倍賞美津子、室井滋、西田尚美
共演は香川照之、間寛平、大森南朋、吉田日出子。カラー映画。

ストーリー

冬の夜、雅子、弥生、邦子、ヨシエらは、弁当工場で夜勤として働いた。雅子は夫が失業し、息子は引きこもりである。信金をやめた彼女は、同僚にヘソクリを貸して小遣いを蓄えていた。弥生は臨月の妊婦だが、旦那が女とギャンブルにハマった上にDVされ、マイホーム資金の500万まで使われてしまった。邦子は、買い物気狂いで高級車を乗り回すが、闇金の借金が溜まっている。年長のヨシエは世話好きだが、夫を亡くし姑の介護の上に立ち退きを大家に迫られている。
弥生の夫は、バカラ・バーで負けがこんでオーナー佐竹に暴行される。夫が帰宅すると、弁当工場から戻って気持ちよさそうに寝ている弥生に対して無性に腹が立って暴行する。夫が寝たのを見計らって、今度は弥生は夫を殺してしまう。
そして弥生は雅子に旦那を殺したことを電話する。雅子が弥生の家に行くと本当に死体が放置されていた。弥生は、雅子の車にとりあえず死体を隠してくれと言う。
しかし、翌日になると弥生は態度を豹変させ、「私は妊婦なのだから、そっちで何とかして下さいよ」と責任を雅子に負わせる。雅子は、金を散らつかせてヨシエに死体処理の手伝いを頼む。解体中に突然現れた邦子も仲間に入れる。そしてバラバラにした体を細かく分けて、三人それぞれに捨てさせる・・・。

 

雑感

小説版「OUT」とドラマ版「OUT」(1999年秋の火9ドラマ;田中美佐子、渡辺えりこ主演)さらに劇場版「OUT」は全く違う。アメリカで評価されたのは、映画にすると18禁確実の小説の翻訳である。
その点、ドラマ版も劇場版も救いはあるが、ドラマ版は雅子に親友の則子(飯塚直子)が警察内部の陰謀を明らかにする側面もあったから、別の小説のように感じて楽しめたと思う。
一方、劇場版は小説版のコンパクト劣化版のように感じる。
特に何故佐竹役という重要な役に間寛平を起用したか?吉本興業の圧力を受けたか?
「愛を乞うひと」「ターン」「笑う蛙」で一時期は怖いほど凄かった平山秀幸は、この作品辺りからコンスタントに転けるようになった。一つ思ったことは、平山秀幸園子温のフィルム・ノワール路線をメジャー映画会社が伸ばしていたら、韓国ノワールに日本ノワールは負けるわけがなかった。

スタッフ

監督:平山秀幸
脚本:鄭義信
音楽:安川午朗
撮影 柴崎幸三

 

キャスト

香取雅子:原田美枝子
吾妻ヨシエ:倍賞美津子
城之内邦子:室井滋
山本弥生:西田尚美
吾妻千代子(ヨシエの姑):千石規子

十文字彬:香川照之
山本健司:大森南朋
佐竹光義:間寛平
香取良樹:小木茂光
香取伸樹:吉永雅紀
広瀬洋一:江藤漢
金田敬徳:田中要次
杉本:斎藤歩
衣笠:浜田道彦
マリア:伊藤グロリア
トラック運転手:吉田日出子

 

***

しかし邦子が捨てた遺体の一部がカラスのせいで見つかってしまい事件は表沙汰になる。しかし、まだ警察には四人組の仕業とバレていない。
雅子は邦子に金を貸している闇金の十文字と知り合う。十文字はヤクザ仲間から情報を掴み邦子を突くと、彼女は全てを話してしまう。十文字は警察に知らせない代わりに、ヤクザから下請けした死体処理を雅子たち死体解体チームに依頼する。金額がいいので、彼女らは引き受けて夜中に解体すると十文字が引き取り九州の産廃工場で燃やしてしまう。
警察から疑われた佐竹は、独自にヤクザに当たって十文字が最近死体処理を引き受けたことを聞き出した。そこで十文字を襲い、ことの真相を聞き出す。十文字は、腕を切られてしまい、福岡の飯塚に逃げる。
十文字から事情を聞いた雅子は、カラオケボックスでヨシエ、邦子、弥生を召集する。雅子は逃げることを提案するが、ヨシエは寝たきりの姑がいるので逃げられない。その夜、佐竹がヨシエの家に復讐に来て姑を殺す。ヨシエは佐竹の隙をついて滅多刺しにして殺し、家を燃やす。そして、自首するつもりのヨシエは、時間稼ぎをするから雅子に急いで逃げろと言う。邦子と弥生を載せた雅子の車は、雪の北海道に逃げる。途中で産気づいた弥生に車をあげ産院前で停めて弥生を病院に入れて、雅子と邦子だけで知床まで女性ドライバーのトラックに乗せてもらう。ヨシエが見たいと言っていた冬のオーロラを見に行く二人は、楽しそうだった。

OUT 2002 ムービーテレビジョン、サンダンス・カンパニー製作 20世紀フォックス配給 桐野夏生のエドガー賞候補作の映画化

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