エリック・ロメールが若き盟友ジャン=リュック・ゴダールを主演に迎え、1951年にサイレント映画として撮影した第二作品である短編映画(11分)をもとにして、1961年に改めてアフレコをして声を入れた白黒映画。

ストーリー

ヴァルテルは、雪が積もった後の道をシャルロットと歩いてきた。彼は、駅の前で別の女性クララと待ち合わせしていて、クララをシャルロットに紹介した。
クララは自分のことをヴァルテルは何か言ったかとシャルロットに尋ねたが彼女は答えない。駅に着いて、クララはヴァルテルに「また今度」と言って、去ってしまった。
シャルロットも家に帰ろうとしたが、ヴァルテルが付いて来る。彼女は、彼を部屋にあげるのを嫌がったが、彼は帰ろうとしない。仕方なく、彼を玄関マットのところまで上げてやる。
シャルロットは、コーヒーをいれてステーキを焼いた。彼はキスを求めるが、彼女はステーキを一欠片だけ彼にあげて、残りを平らげる。そして、出て行く身支度をし始める。最後に彼が寒さで震えているのに気付いた彼女は、やっとキスしてくれた。
しかし、彼の根暗で優柔不断の態度は変わらず、シャルロットは彼と別れて列車に乗り込んだ。

雑感

1948年「シネクラブ・デュ・カルティエ・ラタン」を主宰していたリセ教師でアマチュア映画評論家のエリック・ロメールは、1950年から「ラ・ガゼット・デュ・シネマ」誌を発行し、それと平行して夏休みから自ら短篇映画を撮りはじめた。
この作品は、1950/51年の冬休みにジャン=リュック・ゴダールが育ったスイスのニオンで雪が積もる中、20歳のゴダールを主演にロメールが撮った間抜けな男の短篇映画である。
本作は、本来サイレント映画として自分達の批評用に作られた。しかし6年後の1957年にゴダールがこの作品の続篇として短編トーキー作品「男の子の名前はみんなパトリックっていうの」を監督し、公開する。1959年の夏休みに、ロメールは長編映画「獅子座」を監督し、共演したステファーヌ・オードランと知り合う。
そして1961年にゴダールやロメール、トリュフォーらの映画作家活動は「ヌーヴェルヴァーグ」(新しい波)として世に広く知られるようになり、ロメールのこの短編映画も正式公開されることになる。
早速アフレコを行うが、出演したアンヌ・クードレの代わりにステファン・オードランの声を当てて、アンドレー・ベルトランの代わりにゴダールの恋人アンナ・カリーナを当てた。ゴダールは自分の声である。

映画としては、ゴダールが情けない男として描かれていて面白い。そもそも根暗男が、二股かけるのがいけないのだ。
しかし、日本人からすると、あんな根暗が二人のフランス美人と付き合ってキスまでできることが不思議だろう。文化が全く違うのだ。

スタッフ

監督・脚本 : エリック・ロメール
音楽 : モーリス・ルルー
編集 : アニエス・ギュモ
製作 : ギイ・ド・レー
撮影:アグネス・ギユモ

 

キャスト

ジャン=リュック・ゴダール   ヴァルテル (ヴァルテルの声)
ステファーヌ・オードラン  (シャルロットの声)
アンナ・カリーナ   (クララの声)
[ノンクレジットの俳優]
アンヌ・クードレ   シャルロット
・アンドレー・ベルトラン   クララ

紹介、またはシャルロットとステーキ PRESENTATION OU CHARLOTTE ET SON STEAK (1951) 仏ギイ・ド・レ製作 エリック・ロメールの短編映画

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