(☆)牧場主に拾われた男が有能故に嫉妬され、同僚の巡らす罠に陥る西部劇

ポール・I・ウェルマンの原作小説をラッセル・ヒューズが脚本化し、デルマー・デイビスが監督した。撮影は「長い灰色の線」などの名作を撮ったチャールズ・ロートン・ジュニアである。

主演は、「暴力教室」のグレン・フォード
共演はアーネスト・ボーグナイン、ロッド・スタイガー、ヴァレリー・フレンチ、フェリシア・ファー

テクニカラー映画。日本でも同年に東宝配給で公開。

ストーリー

さすらい人ジューバルは、ロッキーで崖から落ちて気を失った。その場を通りかかった牧場主シェップは、ジューバルを救助し、ジューバルはお礼の意味もあり彼の牧場で働き始める。やがて、有能だったジューバルは牧童頭に出世する。
シェップの妻メイは、金欲しさにカナダからシェップに嫁いだが、秘かにカウボーイのピンキーと浮気していた。しかし、彼女はジューバルを好きになってしまう。それ以来ピンキーは、ジューバルを憎むようになる。
ローハイダーズと呼ばれるキリスト教徒の集団がやって来て、この地に野営した。ピンキーたちは気味悪がり、追い出そうとする。しかし、ジューバルは病人がいることを知り、治るまでこの地に留まっても良いと許可を与える。ジューバルは、集団の長であるシェムの娘ナオミを見て、ふと心を惹かれる。しかし、ナオミには、親の決めた婚約者がいた。
集団に付いてきたカウボーイ、レブがジューバルの仲間になりたいと申し出る。ジューバルは、シェップに許可をもらいレブを雇う。

やがて病人であるシェムの妻の容態が好転し、シェムはジューバルに、明日の朝にこの地を離れる、と話す。その後ナオミが一人で現れた。ジューバルに別れのプレゼントとして手作りのハンカチを渡したうえで、生まれて初めてのキッスを求め、彼も思い出になるのであればと軽く口づけするのだった。
その夜、シェップやピンキーが野営しポーカーをしているところに、メイが手紙を持ってきた。シェップは、ジューバルにメイを家まで送らせた。家に着くと、メイはすかさずジューバルを誘惑するが、ナオミを忘れられない彼はメイを拒絶する。
夜中にレブは、ジューバルが帰らないので心配になり、彼を探し回り酒場で見つける。ジューバルは、メイに度々絡まれてシェップの元で働くのが心苦しくなっていった・・・。

雑感

シェークスピアの舞台劇「オセロ」のような男の嫉妬をテーマにしたドラマを西部劇に置き換えた映画だ。ヴェニスの将軍オセロ役がアーネスト。ボーグナインロッド・スタイガーがイヤーゴー役でありグレン・フォードはキャシオー役にあたる。デズデモーナ役がバレリー・フレンチになる。だからある程度、豪華な配役が必要だったのだ。

それより、モデル出身のフェリシア・ファーが映画二度目の出演で登場する。目鼻立ちのはっきりしたフランス人らしい顔立ちだ。60年代と70年代のやや草臥れた彼女を見たことがあったが、若い頃の映像は初見だった。この人は、モデル上がりで映画界デビューより早い時期に結婚し出産している。だから、この映画の頃も子持ちだ。その後離婚して、名優ジャック・レモンと再婚し、彼が死ぬまで別れなかった。映画は数本しか出ていないが、テレビで活躍したイメージがある。

若いチャールズ・ブロンソンが、良い脇役で出演。

スタッフ

製作  ウィリアム・ファディマン
監督、脚色  デルマー・デイヴス
脚色  ラッセル・ヒューズ
原作  ポール・I・ウェルマン
撮影  チャールズ・ロートン・Jr
作曲  デイヴィッド・ラクシン
指揮  モリス・W・ストロフ

キャスト

ジューバル・トループ  グレン・フォード
シェップ(牧場主)  アーネスト・ボーグナイン
ピンキー(牧童)  ロッド・スタイガー
メイ(牧場主の妻)  ヴァレリー・フレンチ
ナオミ(シェムの娘)  フェリシア・ファー
シェム(宗教的リーダー)  ベイジル・ルイスデール
サム(牧童)  ノア・ビアリー・ジュニア
グラント医師   ロバート・バートン
レブ  チャールズ・ブロンソン

***

一方ピンキーは、メイとジューバルには関係があるとシェップを煽る。シェップが家に帰ってみると、メイはフラれた腹いせにジューバルと寝たと言い放った。怒りに任せてシェップは酒場で、丸腰だったジューバルに発砲した。レブから銃を渡されたジューバルは、やむなくシェップを正当防衛で射殺する。
しかしジューバルも重傷を負い、シェムに匿ってもらう。ピンキーは、ジューバルが消えたことを聞き、捜索隊を集めて手分けしてジューバルを探し出すことにした。ピンキーはメイにシェップの死を報告に行く。メイは、ジューバルの責任ではなく自分のついた嘘のせいだと告白した。しかし、真実を隠蔽したいピンキーはメイを半殺しにしてしまう。
しばらくして直美の献身的看護ですっかり回復したジューバルは、正当防衛を証明するためにシェップの家に行く。放置されたメイは、瀕死で床に倒れていた。そこにピンキーが追いついたが、死の直前にグラント医師の前でメイはピンキーに殴られたと証言した。ピンキーが、牧童たちによって絞首刑になるのを見て、ジューバルはナオミ、レブとともに、集団が向かう新しい土地へ馬を走らせるのだった。

去り行く男 Jubal (1956) コロンビア製作・配給 グレン・フォード主演西部劇

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