(◎★)ネオ・レアリズモの始まりとなった戦争映画である。1946年イタリアで公開された後、世界で上映され、アカデミー脚色賞を受賞している。

1943年、連合軍がイタリアに上陸した時期にナチスドイツに占領されたローマでのレジスタンスに起きた悲劇を描く。ナチスが行った虐殺行為など実話をいくつかエピソードに使っている。
セルジオ・アミデイ、アルベルト・コンシーリオの原作をセルジオ・アミデイ、フェデリコ・フェリーニ、チェレステ・ナガルヴィッレ、ロベルト・ロッセリーニが共同で脚本にして、ロベルト・ロッセリーニが監督した。
白黒フィルムで撮影され、撮影はウバルド・アラータ。音楽は、ロベルトの実弟レンツォ・ロッセリーニ

主演はアルド・ファブリーチ、フランシスコ・グランジャッケ
共演はマリア・ミキ、アンナ・マニャーニ、マルチェロ・パリエーロ

日本では松竹洋画部が輸入して1950年に公開された。

雑感

タイトルの意味だが、1943年にハーグ陸戦条約ジュネーブ条約によりローマ市は、連合国とナチス・ドイツに対して「無防備都市宣言」を発した。この宣言により、係争国に対して市内で戦闘を行うことを禁じることができる。
しかし、市内には軍閥や共産党によるローマ防衛軍勢力が居残り抵抗運動を続けたため、ドイツ軍は宣言を認めなかった。だから、ゲシュタポが市内で虐殺を行ったのだ。

戦後のこの時期は、ロベルト・ロッセリーニとビットリオ・デシーカらのリアリズム映画(ネオ・レアリスモと言われる)が続けてヒットした。その中には貴族でありながら共産党員だったルキノ・ビスコンティもいた。
とは言え「無防備都市」は、公開してすぐに火が付いたわけではない。アメリカでこの映画に対する評価が高まり、それを聞いたイタリア人が劇場へ行って見始めたのだ。

イングリッド・バーグマンは当時既に夫も子もあったが、この映画を観てロベルト・ロッセリーニに関心を抱く。1950年ロッセリーニの映画「ストロンボリ」に出演し、バーグマンは夫と離婚しロッセリーニと結婚する。当時は、大スキャンダルとなってイタリアに移住するが、1956年「追想」で出演し、アカデミー主演女優賞を受賞し正式にロッセリーニと離婚して、再びハリウッドに受け入れられる。

キャスト

ドン・ピエトロ・ペレグリニ司祭  アルド・ファブリツィ
フランチェスコ  フランチェスコ・グランジャッケ
ピーナ  アンナ・マニャーニ
ジョルジオ・マンフレディ   マルチェロ・パリエーロ
マリーナ・マリー   マリア・ミキ(デビュー作)
ベルグマン少佐   ハリー・ファウスト
イングリッド  ジョヴァンナ・ガレッティ
マルチェロ   ヴィト・アニチアリコ

 

スタッフ

監督 ロベルト・ロッセリーニ
脚本 セルジオ・アミデイ、フェデリコ・フェリーニ、チェレステ・ナガルヴィッレ、ロベルト・ロッセリーニ
原案 セルジオ・アミデイ、アルベルト・コンシーリオ
製作 ペッピーノ・アマート
音楽 レンツォ・ロッセリーニ
撮影 ウバルド・アラータ

ストーリー

第二次世界大戦末期、シチリアとサレルノのイタリア枢軸軍は敗北し、イタリア解放を行うため連合軍は一気に首都ローマを目指した。
ローマ市は、ナチス・ドイツ軍が制圧し、反乱軍ゲリラの動きを封じるためゲシュタポが目を光らせている。レジスタンスのマンフレディは、資金調達のためにローマに戻ってくる。神父ピエトロに使者として資金を持ち出してもらい、同志フランチェスコを匿ってもらう。子供たちもレジスタンス活動に参加して、爆弾を使ってドイツ軍の施設を爆破する。

フランチェスコとピーナの結婚式当日、アパート全体がドイツ軍に囲まれる。神父は、子供が隠し持っていた爆弾を隠す。フランチェスコは逮捕され、ピーナは路上で射殺される。
フランチェスコらはレジスタンスの同志に救出された。マンフレディとフランチェスコは、マンフレディの愛人マリーナのアパートに転がり込む。しかし、彼女は、ゲシュタポの女性スパイに麻薬と同性愛で誘惑されて、毛皮のコートを得て彼女の手下になっていた・・・。

マリーナの情報で、神父神父とマンフレディたちはゲシュタポに捕まる。神父の目前でマンフレディはゲシュタポの凄惨な拷問に遭い、自白しないまま絶命する。はじめは虐殺死体がマンフレディだと気付かなかったマリーナは、顔をよく見て気絶する。彼女も拘留され、女性スパイは毛皮のコートを奪い返す。
神父は、サン・ピエトロ寺院の見える丘で銃殺される。その様子を遠くから眺めていた少年たちは、呆然として立ち去る。

 

 

無防備都市 Roma città aperta 1945 エクチェルサ製作 ミネルバ配給 – ロッセリーニ監督の戦争三部作第一弾

投稿ナビゲーション