オハイオ州知事杯を舞台に成長したケンと馬たちの交流を描く田園ドラマ。
メアリー・オハラが書いた三冊目の原作小説を映画化したもの。

脚本はマーティン・バークリー、監督はルイス・キングである。
主演はロバート・アーサーペギー・カミンス、
共演はチャールズコバーン、ロイド・ノーランなど。

あらすじ

ビーバー・グリーンウェイは、かつてはオハイオ知事杯を優勝した有名なジョッキーだった。今は可愛い孫娘キャリーと二人暮らしだ。彼が酒をあおっているとキャリーが、牝馬が消えたと血相を変えて飛び込んでくる。アルコール中毒で混乱した状態で彼は、、牝馬がサンダーヘッドに盗まれた、とロブ一家のもとに怒鳴り込む。ロブは白を切ったが、サンダーヘッドが犯人だと知っていた。一旦手放した馬なので、どうしようもないと思っていた。

ケンが、ロサンゼルスで馬を売却して帰ってきた。彼は、代金で繋駕速歩競走用の牝馬クラウンジュエルを買ってしまった。ロブは、ジュエルがワイオミングに来て肺障害に似た症状を起こしたから、きっと馬喰に騙されたに違いないと怒った。しかしケンは、ジュエルが急に平地から標高2500mの高地に登ったからだと主張する。気候に慣れると、素晴らしい速歩を見せるようになる。

ケンは、グリーンウェイの孫娘キャリーと念願のデートに行くことが出来る。キャリーは、たった一人の肉親である祖父のことが心配でならない。ビーバーも孫のためにも再起を図っていた。
ある日、サンダーヘッドがジュエルをさらってしまう。逃避行の最中に、ジュエルは沼にはまってしまい、サンダーヘッドはかつての飼い主ケンにジュエルを助けてやってくれと頼む。
何とか沼からジュエルを救い出し、サンダーヘッドは姿を消す。獣医に診てもらうとジュエルは、肺鬱血を患っていた。獣医は安楽死を勧めるが、ケンは何とかして助けようとする。キャリーは、祖父ビーバーから肺鬱血の民間療法を教えてもらい、寝ずの番をすると次の日にはジュエルは回復した。

ジュエルは、繋駕速歩をこなすようになる。ロブは、名調教師ジェイクを呼んできて、レースに出るための調教を始める。そのとき、サンダーヘッドが再び現れ、恋しいジュエルをさらおうとする。ジュエルもサンダーヘッドが恋しくて騒ぎ出す。撃ち殺そうと言うロブに対して、ケンは引き留める。代わりにサンダーヘッドを捕まえ、ジュエルの近くに置くことで、騒動を収める。

ジュエルの猛特訓の末、満足できる出来に達した。騎乗するのは、ケン自身に決まった。
いよいよ、オハイオ州知事杯に挑戦する日となった。かつての州知事杯チャンピオンで今はアル中から立ち直ったビーバーも愛馬サンダウンと共に参戦する。ロブ夫妻と恋人キャリーも応援に駆けつける・・・。

雑感

盛りのついた牡馬と牝馬を近づけたら、必ず人の目を盗んで交配する。それが嫌なら、牡馬は一ヶ所に固めておき、牝馬と仔馬のグループと二つ分けておくべきだ。

雑種と純血を間違って交配させると、雑種の血が濃くなることが良くある。その結果売れ残って主取りになってしまう。

メアリー・オハラのフリッカ三部作の三番目だが、戦後の日本で公開された順番は一番早かった。前二作でケン役だった天才子役ロディ・マクドウォールは下りて、代わりにロバート・アーサーが事実上の主役を演じている。
ヒロイン役はペギー・カミンスだ。カラー作品でこそ映える英国美人だった。フィルム・ノワールに多い白黒映画は、彼女の美しさには似合わない(でも彼女の代表作といえば白黒映画の「拳銃魔」である)。

さらに名優チャールズ・コバーンが、主役の二人を引き締めている。競馬のレースでも先輩の意地を見せつけて、若いケンを打ち負かす役だ。ただし、公正競馬の観点から言うとチャールズ・コバーンとロバート・アーサーの体重差はハンデだったのだろうか?コバーン一人だけ太り過ぎて、騎手の体つきではなかった。

ちなみに繋駕速歩競走(トロッター)は、競馬の一ジャンルであり、日本では1968年まで中央競馬で行われていた。サラブレッドのギャロップ(襲歩)と違って、速歩を得意とする種はスタンダードブレッドなど、サラブレッドと土着馬のミックスである。
ハイセイコーの中央での騎手であり、シングル・レコード「さらばハイセイコー」をヒットさせた増沢末夫も若い頃は繋駕速歩競走に乗っていたと聞いた。

スタッフ

監督  ルイス・キング
製作  ロバート・バスラー
脚本  マーティン・バークリー
原作  メアリー・オハラ 「ワイオミングの緑草」
音楽  シリル・J・モッキンリッジ
撮影  チャールズ・G・クラーク

キャスト

ペギー・カミンス  キャリー・グリーンウェイ
チャールズ・コバーン  ビーバー・グリーンウェイ
ロバート・アーサー  ケン・マクラクリン
ロイド・ノーラン  ケンの父ロブ
バール・アイヴズ  牧夫ガス
ジェラルディン・ウォール  ケンの母ネル
ロバート・アドラー  ジョー
ウィル・ライト  調教師ジェイク
ハーバート・ヘイウッド  畜産雑貨店主ジョンソン

マリリン・モンロー  スクエア・ダンス・シーンのエキストラ(クレジットなし)

 

ネタばれ

知事杯は、競馬場3周の3本勝負である。初戦は、ジュエルがゴール前で落鉄して、サンダウンが差し切った。休憩を挟んだ第二戦は、ジュエルが勝利して、いよいよ第三戦に優勝は持ち越された。
このレースもジュエルが最後の直線に入るところまで先頭を走っていたが、ゴール直前に進まなくなり、さらに逸走して外に逃げ出してしまう。結局、二番手を追走していたサンダウンとビーバー騎手が優勝を遂げる。
キャリーは大喜びするが、ロブとネルはガッカリする。ケンはなぜ走らなくなったか不思議だった。ビーバーも同じ気持ちだったので腹を弄ると、笑いが止まらなくなる。ジュエルは、サンダーヘッドの子を妊娠していたのだ。その後、ジュエルは愛らしい白馬を産んだそうだ。

 

 

 

マイ・フレンド・フリッカ/ワイオミングの緑草 (1948) 20世紀フォックス製作・配給 セントラル国内配給(1950)

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