ジェリー・ルイスが脚本・監督・主演と一人三役を担当したドタバタ・コメディ
珍しくヒロインは特に置いていない。

脚本には音楽担当のビル・リッチモンドも参加。
主演はジェリー・ルイス
共演はブライアン・ドンレヴィー、ハワード・マクニーア、パット・ダール。白黒映画。

あらすじ

ハリウッドのパラミューチャル映画撮影所。
しがない映画ポスター貼りのモーティは、パラミューチュアル映画社長T.Pに呼び出される。利益率の悪化に悩むT.Pは、姉のアドバイスで、誰にも知られていない人間に従業員のサボリ具合を探らせることにした。たまたま見かけたモーティが、社長命令でスパイに抜擢されたのだ。

普段の仕事は、上司におべんちゃらを使うスニークから渡された報告書を社長に届ける「使い走り」「小僧」である。その途中で、見聞きした社員のサボりを逐一報告する。

ところがモーティは、撮影所内に潜り込んでは信じられないようなヘマを次々にしでかす。例えば撮影フィルムを全部ダメにしたり、戦争映画の撮影に巻き込まれたり、綺麗な歌声によるアフレコを自分のダミ声で入れ直したり、女優セリーナにホテルの寝室に連れ込まれたりする。
挙句にモーティは、大女優アナスタシアのパーティに派遣され、彼女に巨大なシャンペンの瓶からグラスに注ぐように命じられる。モーティがフタを開けた途端、シャンペンは止めどなく流れ出して、あたりは洪水になり、アナスタシアの化粧がはげ落ちてしまう。これでモーティは社長にクビを申し渡される・・・。

雑感

ジェリー・ルイスコント集を映画にしたもの。会社の「小僧」あるいは「小遣」とは、使い走りなどの単純作業をしていた。日本では詰め入りを着た若者か、定年退職後の再雇用老人の仕事と考えられていた。アメリカでは、一つの職種とみなされて、小遣のリーダーが存在して、仕事を割り振っているようだ。どちらにせよ、いつも正社員に顎でこき使われるイメージだ。今で言えば、インターンシップのようなものである。

この映画に特に優れたコントはなかったが、潜水夫の横で素潜りをしているジェリー・ルイスのギャグは覚えている。プールの底で悠々と泳ぎ回るモーティを見て、潜水夫が油性マジックでホワイトボードに「なぜ泳いでいるのか」と尋ねると、モーティは「溺れているんだよ」と答える。他のコントでも見たことがあるベタなギャグだが、当時としては新鮮だったのかな。

その一方、ナンセンス・コントの羅列かと思わせておいて、その中に上手い割合でペーソスなシーンを混ぜてくる。
倉庫に入ったモーティが、ピエロの手人形(マペット)を使って自問自答するシーンがある。
ところが次に倉庫に入ってピエロ人形を探すが、捨てられたのか既にいなくなっている。その代わりに駝鳥?のマペットが女声で喋りだし、モーティの仕事の悩みを聞き出す。一体あの駝鳥の正体は何者だったのか、配役表でも謎解きされない。声を聞いた感じでは、第6章「台本変更」で「大草原のガンマン」の脚本をタイピングしていたへロック嬢(サリー・マンスフィールド)でないかと考えている。

スタッフ

製作 アーネスト・D・グラックスマン
監督、脚本、音楽  ジェリー・ルイス
脚本、音楽  ビル・リッチモンド
撮影  W・ウォーレス・ケリー
音楽  ウォルター・シャーフ、ルイス・ブラウン

キャスト

モーティ  ジェリー・ルイス
パラミューチュアル氏(映画会社社長)  ブライアン・ドンレヴィ
デクスター・スニーク(部長)  ハワード・マクニーア
AD    ディック・ウェッソン
カーソン嬢  パット・ダール
ギレス嬢  レニー・テイラー

ネタばれ

ところが、このシャンペン事件の様子がフィルムに収められていた。それを見た大監督は大爆笑する。T.Pがモーティをクビにしたことを聞いた監督は、モーティこそパラミューチュアルに大きな利益をもたらす天才コメディアンだと説く。T.Pとスニークは二人で、早速モーティの居場所を探し出す。
連れ戻されたモーティは、今やパラミューチャル映画の大スターである。

 

 

 

 

底抜け!便利屋小僧 The Errand Boy (1961) ジェリー・ルイス・プロ製作・パラマウント配給 (1962年公開)

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