原作は国内よりヨーロッパで人気があり川端康成のノーベル文学賞受賞に大いに貢献し、映画としてもアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた名作。のちに山口百恵の引退映画としてリメイクされ、最近では松雪泰子主演で改変リメイクされている。

 

千重子は京都室町の名門呉服屋の娘。だが実の娘ではない、軒下に捨てられていたのを子供のない呉服屋夫婦が立派に育てた。ある日、千重子は友人真砂子に誘われて北山へ行くと自分とそっくりな娘と出会う。祇園祭の宵山で再び出会った千重子は、その娘苗子から自分たちが双子であり戦時中に困窮して姉である千重子が捨てられたことを知らされる。自分たちの両親は千重子を捨てて間もなく亡くなっていた。苗子らは一旦別れるが機織職人の秀男が苗子と出会い、千重子と勘違いして新たに帯を織る約束をしてしまう。後に千重子は秀男の誤解を解くが、改めて苗子のために帯を織って欲しいと依頼する。時代祭で苗子と秀男は落ち合い、その後秀男は苗子に求婚する。しかしそれは身分違いの千重子への思いからだった。それを察した苗子は悩み、雪の降る夜に千重子を訪ねる。

 

京の四季に合わせて、双子の美しい出会いと哀しい別れを川端らしいエロチシズムで描いた文芸作品。それを中堅の中村登監督は見事に映画化している。主演岩下志麻も美しく、小津安二郎監督の「秋刀魚の味」など絶頂期だったので、この難しい役も成功に導いた。これにより二年後、川端の名作「雪国」のリメイクにつながる。

武満徹の音楽が生きている。川端作品と京の町屋の風景に合わないのではと思ったが、新しい帯の図案のために使われたパウル・クレーの抽象画とマッチして非常に効果を上げている。遅まきながら古い世代の監督にも松竹ヌーベルバーグが影響したと思われる。

一人二役の映画は撮影と編集が大変だが、この時代にしては巧みに撮影されていた。今ならCGを使って代役不要になるが、やはり代役を立てても編集で上手くつなぐ方が良いと思う。

この時代は原作者(大作家に限る)が監督以上に映画に口を出す時代だった。川端康成も現場に直接来て、できるだけセットでなく京都の町屋ロケで撮らせていたようだ。最近では出版社のプロデューサーが仕切っていて、撮影現場に原作者がいなくなってしまった。

 

 

監督 中村登
脚本 権藤利英
原作 川端康成
音楽 武満徹
撮影 成島東一郎
編集 相良久

 

配役
岩下志麻:千重子と苗子の二役
宮口精二:呉服屋の父
中村芳子:母(島原太夫、二代目中村雁治郎の妹)
吉田輝雄:真一の兄竜助
早川保:友人の真一
柳永二郎:竜助と真一の父
長門裕之:秀男
環三千世:千重子の友人
東野英治郎:機織職人
浪花千栄子:おかみ
田中春男:番頭
千之赫子:芸者(東千代之介の奥方)

 

 

古都 1963 松竹

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