谷崎晩年の名作を発表後3年で映画化。
原作は夫婦それぞれの日記をベースにしたメタフィクションだったが、当時の映画では時期尚早と感じられたのか台詞中心の芝居になっている。作家安部公房の時代に下ると勅使河原監督らによりもう少し冒険的な映画が作られるようになるが、1954年当時の市川崑監督はまだまだ保守的だったようだ。

インターン(医師見習い)の木村(仲代達矢)は古美術品鑑定家の剣持(中村鴈治郎)のお気に入りで、器量の悪い娘・敏子(叶順子)と付き合っている。剣持には世にも美しい妻郁子(京マチ子)がいるが、すでに郁子は剣持の変態趣味に耐えられず倦怠期に入っている。
ある日、剣持はホルモン注射を打ってもらった後、木村を家に呼んで大いに飲む。すると妻郁子は酔って風呂場で倒れてしまう。剣持が夜通し看病していると郁子は夢見心地で木村さんと呼びかけた。郁子が若い木村を慕っていると悟った剣持は、二人を密会させて郁子の若さを取り戻そうとする。その試みはうまく行くが、興奮のしすぎで剣持の日常血圧は200を突破するようになる。貞淑な顔をした郁子も内心では剣持に早く死んでもらって木村との生活を夢見ていた。

局部は映ってなかったと思うのだが、当時は過激な内容により成人映画に指定されたそうだ。前半は面白くなかったが後半引き込まれることが多くなった。さらに日記を使ったメタフィクションを上手く映像化できていれば、国際映画賞ももっと取れただろう。実際はカンヌ映画祭審査員賞(ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「情事」と同時受賞)とゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞した。

個人的には芝居がかったメイクアップが印象的だ。とくに京マチ子叶順子が特徴的だった。叶順子に関しては個人的に大好きだから、はじめはメイクに違和感を感じたが、話が進むにつれて慣れてきた。

 

監督:市川崑
原作:谷崎潤一郎
脚本:和田夏十、市川崑他一名
撮影:宮川一夫
音楽:芥川也寸志

配役:
二代目中村鴈治郎
京マチ子
仲代達矢
叶順子
北林谷栄
浜村純
潮万太郎
菅井太郎
山茶花究

 

(ネタバレ)やがて剣持は脳溢血で倒れるが、それでも変態趣味は止められずベッドから妻のヌードを眺めたまま大往生する。剣持の葬儀後、敏子は紅茶に農薬の毒を入れて母を殺そうとするが失敗する。そして剣持のことを誰も惜しんでいないことに憤慨した手伝いのはなが作った農薬入りサラダドレッシングによって皆殺しにされるが、警察では前日の郁子の日記を元に自殺として処理する。

 

鍵 1959 大映東京

投稿ナビゲーション


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA