(○☆)川端康成原作の同名短編小説を、井手俊郎が脚色し、恩地日出夫が監督した文芸映画
撮影は「あこがれ(1966)」の逢沢譲
主演は当時青春スターだった内藤洋子
共演は黒沢年雄乙羽信子、江原達怡、団令子

雑感

川端康成原作小説「伊豆の踊子」の映画化は、松竹が1933年に監督五所平之助、主演田中絹代で撮影したのが最初である。戦後は1954年に美空ひばり版、1960年には鰐淵晴子版が撮られる。その頃から青春スター登竜門映画になった。
続いて同作品は松竹の手を離れて、日活が1963年に吉永小百合版を撮り、満を持して東宝が撮ったのが1967年の内藤洋子版である。

内藤洋子は、吉永小百合版と違い影を背負ったを演じている。テレビドラマ「氷点」や東宝映画「あこがれ」でも暗い面で評価された内藤洋子は見事なはまり役だった。映画も差別される旅芸人や酌婦の悲哀を描いており、彼女の暗さはぴったりあてはまっていた。

その後、1974年に山口百恵版の「伊豆の踊子」(東宝)が作られた。この山口百恵の主演デビュー作は、アイドルらしくやや明るい方に振った感じがするが、百恵本来の演技から見ると暗い側面をもっと強調する映画にすべきだったと思う。

アクション俳優だった黒沢年雄だけは、ミスキャストだと思う。インテリ役は彼には向いてないので、存在感は薄い。まだ加山雄三かグループサウンズの誰かが良かった。

 

キャスト

黒沢年雄  一高生川崎
内藤洋子  旅芸人の薫
江原達怡  旅芸人栄吉(薫の兄)
田村奈己  旅芸人で栄吉の妻千代子
乙羽信子  旅芸人で千代子の母お芳
高橋厚子  旅芸人百合子
団令子  酌婦お咲
二木てるみ  瀕死の酌婦お清
北川町子  お滝(お雪の母)
酒井和歌子  大島から東京に行くお雪
小峰千代子  川崎が通りがかった茶屋のばあさん
小沢昭一  紙屋(川崎の碁の相手)
西村晃  旅芸人の知り合いである鳥屋
園佳也子  宿の女中お時
名古屋章  竹林の男
賀原夏子  中絶を業とする婆さん

スタッフ

製作  金子正且
原作  川端康成
脚色  井手俊郎
脚色、監督  恩地日出夫
撮影  逢沢譲
音楽  武満徹

ストーリー

一高生川崎は、伊豆の下田に向っていた。道中で旅芸人の一行に出会い、その中の若い踊子薫を好きになる。天城峠にさしかかると、にわか雨が降り出し、さっきの旅芸人と再会する。
これが契機に川崎はしばらく彼らと下田までの旅をする。一行は、薫の兄栄吉、妻千代子、千代子の母お芳らがいた。
朝、栄吉と風呂に入っていた川崎は、向かいの風呂にいた薫が裸で手をこちらに振っているのを見て、彼女の子供らしさに苦笑してしまう・・・。

芸人一行が湯ケ野の町を流し、逗留する川崎に耳に芸人の三味線や太鼓の音が聞える毎日を送る。薫も「下田に着いたら活動に連れて行って」と甘えるようになる。
下田に着き、川崎が明日東京へ帰る日、薫は活動映画を見るつもりだったが、お芳の「お座敷だよ」の言葉に薫は涙を飲んで街に出ていく。
翌朝、乗船場には薫が一人で川崎を待っていた。栄吉が川崎を送ってやってきたが、無邪気な薫とは打って変わって彼女は黙って頭を下げた。

船も下田から遠ざかった頃、川崎は甲板に出た。彼の頬にも涙が伝わっていた。下田のお座敷では、薫の気持ちが川崎にとどけとばかり、真剣な表情で太鼓を打ち続けた。

 

 

伊豆の踊子 1967 東宝東京製作 東宝配給 – 内藤洋子版「伊豆の踊子」

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