南軍兵士の憎しみと再生を描いた異色西部劇

南北戦争の敗兵オミーラが、北軍への憎悪に駆り立てられ、生死を賭けた儀式を経てスー族の一員に認められる。

しかしキリスト教徒としての個人とスー族文化の間で葛藤が生ずる。

監督・製作・脚本の一人三役はサミュエル・フラー

主演は若いロッド・スタイガー。共演も若き日のチャールズ・ブロンソンとスペインの歌姫サラ・モンティエル。テクニカラー作品。

RKOが製作した上で、配給する予定だったが、制作後倒産したので、実際の配給はユニバーサルに引き継がれた。

 

あらすじ

 

南北戦争最終日、南軍狙撃兵オミーラは北軍兵士を撃つが弾は急所をそれ、兵士を野戦病院に運び、摘出した弾丸を受け取る。帰国しても、北軍の合衆国政府に馴染めず、母と別れ西部を一人旅する。
やがて途中で出会ったインディアン「歩くコヨーテ」と旅を共にする。彼は南北戦争で斥候をしていたという。そこへスー族の狂った狼が率いる不良軍団が襲い掛かり、二人は捕らえられ、矢走りの刑を受けることになる。この刑は、放たれた矢の落ちたところから裸足で逃げる者を追いかけてなぶり殺しにするものだった。歩くコヨーテは犠牲となり、オミーラは負傷するも「黄色いモカシン」に救われる。やがてオミーラは族長「青いバッファロー」に仲間に加えてほしいとお願いする。その場合にキリスト教の信仰は捨てないと条件を付けた。白人との交渉係が欲しい族長はオミーラをスー族に迎え、黄色いモカシンを娶らせた。
北軍は、砦の建設についてスー族と協定を結ぶことになり、族長はオミーラを斥候に指名する。北軍から砦の建設隊としてクラーク大尉、ドリスコル中尉、工兵たちさらにオミーラがお目付役として同行した。ところが、「狂った狼」の一群は妨害工作を行なった。やっと建設予定地に到着した矢先、クラーク大尉は背中から射られ死亡。オミーラは、犯人の狂った狼を捕まえて族長に引き渡す。その隙に北軍はドリスコルが隊長代理として、協定を反故にして建設予定地を高台に移して砦を建設してしまう。怒ったスー族連合は、波状攻撃を掛けて砦を炎上させドリスコルを捕まえて首斬りの刑に処するが、オミーラは正視できなくて、あの記念の弾丸でドリスコルの眉間を貫く。
オミーラは、黄色いモカシンに「あなたの心の中にはアメリカ人を苦しめたくないという気持ちが残っている」と見抜かれ、やはりアメリカ人の中にしか自分の居場所はないと悟る。そして捕虜となった兵を北軍基地まで引きながら、帰っていく。

 

雑感

 

レッド・クラウドという実在のネイティブ・アメリカンが現れるので、1860年代中頃のスー族が米軍を苦しめていた後期インディアン戦争時代と考えられる。

1970年代以降はまだしも、当時としては、ネイティブ・アメリカンを苛める悪役ドリスコル中尉という構図はまだ珍しかったのではないか。

1876年に少数の兵士でスー族を襲って返り討ちに遭った、悪名高いカスター中佐を描いているようにも見える。

 

サラ・モンティエルの喋っている英語は流暢すぎる。実は、若き日のアンジー・ディキンソンによる吹き替え。

「矢走りの刑」のシーンをよく見ると、ロッド・スタイガーが痩せて見える。これはロッドが足を痛めたため、スタントマン(しかもネイティブ・インディアン)を使ったせいだ。

音楽のヴィクター・ヤングも直前になくなったので、ヴィクターの作曲からオードレイ・グランヴィルが選曲している。

 

スタッフ・キャスト

 

監督・製作・脚本 サミュエル・フラー
撮影 ジョゼフ・バイロック
音楽 ヴィクター・ヤング
選曲 オードレイ・グランヴィル
編集 ジーン・ファウラー・ジュニア

配役
オミーラ  ロッド・スタイガー
黄色いモカシン サリタ(サラ)・モンティール
クラーク大尉 ブライアン・キース
ドリスコル中尉 ラルフ・ミーカー
ウォーキング・コヨーテ  ジェイ・C・フリッペン
青いバッファロ(酋長) チャールズ・ブロンソン
狂った狼 H・M・ワイナント
アレン将軍 ティム・マッコイ
オミーラの母 オリーヴ・キャリー

 

 

赤い矢 Run of the Arrow 1957 RKO 製作(ユニバーサル配給) ロッド・スタイガー主演異色西部劇

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