大藪春彦の原作小説を高岩肇野上龍雄が共同脚色し、田中徳三が監督した西部劇風時代劇。撮影は宮川一夫
主演は市川雷蔵、共演は小林千登勢、春川ますみ、南原宏治、山形勲

あらすじ

ある宿場町は、三組のやくざが競って、鉱夫を博打に誘い込む場となっている。浪人伊吹新之介は手裏剣を使い、もっとも勢いがある「仏の勘蔵」の賭場を荒らした。そして一番弱い炭屋に仏一家を潰す約束をした。

仏は伊吹を退治するために各地の腕利きを集める。仏一家に雇われた北風の政は、金銭面で折り合わなかったが仏の勘造の情婦千波のお色気に魅かれてしまう。
千波は、勘造が独り占めした御用金二万五千両の隠し場所を知っていた。しかし勘蔵が生きていると手が出せない。千波は、勘造を殺してくれる腕利きを探していた。

伊吹は、仏の勘造と密会し、炭屋と絹屋を潰す契機を作ろうと約束をした。
スパイの佐吉から情報を聞いた絹屋の佐助は、炭屋に相談する。炭屋と絹屋が伊吹を探すと、馬宿の娘お雪と情事に耽っていて、その情報を頭から否定した。再び絹屋は炭屋と同盟を依頼に来るが、伊吹が前もって釘を刺していたので、炭屋は応じなかった。

すると仏は炭屋を先ず襲撃して皆殺しにする。そして絹屋も襲撃して、勘造は佐助を斬った。ところが佐助はお雪の兄でだった。政の投げたブーメランは絹屋源兵衛を殺した。

再び仏一家に現れた伊吹に、千波は勘造殺しをもちこんだ。政が気付いて手裏剣を投げて、伊吹はあわやというところで逃げ出す。これを知った仏の勘造に政は、千波を譲ってくれたら勘造に一生仕えるから許してくれと取りなした。

負傷をお雪に救われた伊吹は、廃鉱山へ向った。勘造と政らも山道を急いでいた。鉱山の入口で、伊吹は手裏剣技を使って勘蔵を倒し、政と一騎打ちになるが、渡世人では所詮敵にはならなかった。欲にまみれた千波は、鉱山の落盤事故で死亡した。伊吹は、お雪へ置手紙を残すとヤクザからせしめた金を厩のわらの中に置き去り、姿を消した。

 

雑感

西部劇風の時代劇である。マカロニ・ウェスタンよりも古典的西部劇に近い。基本設定は黒澤明の「用心棒」とほぼ同じである。
「用心棒」はダシール・ハメットのハードボイルド小説「赤い収穫」を江戸時代に置き換えている。そしてハメットの同作品からインスパイヤされた大藪春彦の小説「孤剣」が、この映画の原作になっている。

主人公の伊吹が手裏剣を使えば、北風の政は鎌を改造したブーメランで応戦している。
この市川雷蔵南原宏冶による一騎打ちが見せ場になるかと思いきや、あっさり終わってしまう。
宮川一夫を使った意味が余り感じられなかった。

スタッフ

企画  加賀四郎
原作  大藪春彦
脚本  高岩肇、野上龍雄
監督  田中徳三
撮影  宮川一夫
音楽  塚原晢夫

キャスト

伊吹新之介  市川雷蔵
お雪  小林千登勢
千波  春川ますみ
北風の政  南原宏治
仏の勘造  山形勲
絹屋源兵衛  須賀不二男
炭屋松次郎  吉田義夫
佐助  木村玄
九兵樹  水原浩一
文造  伊達三郎
常五郎  南条新太郎
喜三郎  尾上栄五郎

 

 

 

赤い手裏剣 1965 大映製作・配給 市川雷蔵主演の西部劇

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