当時生誕120年を迎えたアガサ・クリスティーの名著「ホロー荘の殺人」を、豪華キャストで映画化した。医師殺しを巡る謎が、複雑な男女関係を背景に展開する。
監督はパスカル・ボニゼール
出演はフィリップ・レジェ、ミュウミュウ、ランベール・ウィルソン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、アンヌ・コンシニら。

あらすじ

村に別荘を構える上院議員アンリ・パジェスと妻エリアーヌは、週末に友人を招いてパーティーを開いていた。週末に招待したコリエ夫妻のうち、夫ピエールは精神科医だが、女とみれば手当たり次第に口説く色男。他ならぬエリアーヌも以前は関係があった。妻クレールは見て見ぬ振りをしている。みんなが彼女を“哀れなクレール”と呼んでいた。
今回はさらにピエールの愛人で彫刻家エステル、エステルに惹かれる小説家フィリップ、彼を愛している靴屋の店員マルトが招待されていた。
パジェス邸に客が次々と到着する。そして最後の招待客イタリア人女優レア・マントヴァニが現れる。ピエールとは昔、熱烈な恋人同士だった。夕食後、レアが誘惑するとピエールは抱いてしまう。

しかし翌日、ピエールは復縁を迫るレアを拒絶する。レアは立腹し、無断でパジェス邸を後にする。
正午頃、パジェス邸に銃声が鳴る。エリアーヌが慌てて音のしたプールへ駆けつけると、流血のピエールと、銃を手に呆然と座り込むクレールの姿があった。ピエールはエステルに何か言い残して死亡してしまう。

警察がやって来て、参考人としてクレールを連行する。
グランジュ警部は困っていた。クレールの持っていた銃は凶器ではなかった。警察は彼女を釈放した。
フィリップはパリに滞在するレアを訪れる。彼はアル中なので、酔ってる最中のことは覚えておらず、翌日レアから寝たことを聞いて驚く。事件当日も酔っていたフィリップは、ピエールを殺したのではないかと不安になる。彼ははアル中を止めるため、早速ピエールが勤めていた病院に入院する。
その後、レアのホテルを訪ねたグランジュ警部はバスルームに捨てられた彼女の遺体を発見する。警察は部屋にやって来たフィリップを疑う。
フィリップは、マルトに頼んでパジェス邸に乗せていってもらう。そこでレアの死を知ったフィリップは、エステルの工房に行く。フィリップは彼女に自首を勧める。そこに現れたのはクレールで、フィリップは隠れて二人の様子を伺う。

エステルはクレールが犯人だと知っていた。ピエールの死ぬ直前に頼まれたからだ。しかしクレールはレアを殺し、エステルも殺そうとする。彫像を叩き壊すと、中からピエール殺しの凶器のオートマチック銃が出てくる。エステルを助けようと思い、顔を出したフィリップをクレールは撃つ。エステルは天窓から屋根に逃げ出す。クレールは追いかけるが、背後から流血のフィリップに驚きクレールは屋根から転落して死亡する。

フィリップによるとクレールの動機は、彼の最愛の人だったレアと再会し、やけ木杭に火が付いたと思い込んだことだった。第一の殺人から、計画された殺人だった。

 

雑感

アガサ・クリスティ原作「ホロー荘の殺人」のフランス翻案版映画だ。日本でも松竹映画として「配達されない三通の手紙」として映画化されたから、有名だろう。
フランス版には原作のエルキュール・ポワロに当たる探偵は出てこない。だからフィリップの解決は、確かに原作通りだが、ここでも当たっている保証はない。作家らしい想像力で思いついたものかもしれない。
ミュウミュウがこの中でおそらく最も大物女優だ。彼女が演ずるエリアーヌがゲストの組み合わせを決めたのならば、修羅場になることはわかっていたはず。彼女が、かつて関係があり今は見向きもしてくれないピエールの家庭を破壊しようとして仕組んだ罠だったかもしれない。

個人的にはセリーヌ・サレットの見えそうで見えない薄っぺらい胸元が気になった。認知症患者役エマニュエル・リヴァは名女優で、仏日合作映画「二十四時間の情事」のヒロイン役で日本でもおなじみ。

スタッフ

監督 パスカル・ボニゼール
原作 アガサ・クリスティ
脚本 パスカル・ボニゼール 、 ジェローム・ボージュール
撮影 マリー・スペンサー
編集 モニカ・コールマン
音楽 アレクセイ・アイグイ

 

キャスト

上院議員の妻エリアーヌ・パジェス   ミュウ・ミュウ
天才医師ピエール・コリエ    ランベール・ウィルソン
彫刻家エステル・バシュマン   ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
上院議員アンリ・パジェス   ピエール・アルディティ
ピエールの妻クレール・コリエ   アンヌ・コンシニ
作家フィリップ・レジェ   マチュー・ドゥミ
イタリア女優レア・マントヴァニ   カテリーナ・ムリーノ
グランジュ刑事    モーリス・ベニシュー
靴屋の店員マルト        セリーヌ・サレット
アンリの姪クロエ        アガト・ボニゼール
認知症の患者ジュヌヴィエーヴ・エルバン     エマニュエル・リヴァ
レアの運転手ミシェル       ダニー・ブリヤン

 

 

 

華麗なるアリバイ Le Grand Alibi 2008 仏SBS製作 アルバトロス・フィルム国内配給(2010)

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