当時のヒット曲「芸者ワルツ」に因んで、大林清の原作から笠原良三が脚本を書き、渡辺邦男が監督した歌謡映画。白黒スタンダード映像。
主演は相馬千恵子、共演は龍崎一郎、田崎潤、高田稔、柳家金語楼。特別出演は表題曲を歌った神楽坂はん子

新東宝ニューフェース出身の久保菜穂子が「浅草四人姉妹」に次いで出演している。

あらすじ

朝吹千枝子は旧華族の娘だったが、戦争で財産を失った一家を支えるために、芸者になっていた。しかし病床の父には事務員として働いていると嘘を吐いていた。
六郷商事の社長就任披露の宴会に招ばれて、栄龍、はん子、つばめ、照代と一緒に箱根の旅館「青嵐荘」を訪れた。この家は、千枝子の父が戦前に持っていた別荘だった。就任した社長六郷恭造は、以前朝吹家に出入りしていた車夫だった。戦後息子信太郎が事業を興し、親孝行で三か月だけ恭造を社長に就かせたのだ。
千枝子は専務の信太郎と親しくなった。恭造が山崎に騙されそうになったとき、千枝子が救ったことから信太郎と千枝子の間に愛が生まれた。
恭造は信太郎が千枝子と結婚したがっているのを知ったとき、主への礼儀として、車夫の姿になり六郷商事の全財産にも相当する金をひき出して、結納代わりに誠通の病床に贈った。しかし誠通は車夫風情に金品を贈られることは元華族のプライドが許さない。
恭造を追い返した後、千枝子が帰宅して事情を話すと誠通もこの縁談を承知するが、金品だけは返せと言われる。
六郷商事では社長による横領事件で大さわぎとなっている。友人の楠田に金を貸してくれと信太郎は頼むが、いくら友人でも商売人である以上無担保で金を貸すことは出来ない。
そこへ千枝子が小切手を返しに来た。楠田はその顔を見て「この女は俺が毎晩買っていた」と言ったものだから信太郎は怒ってしまい、千枝子も飛び出してしまう。
しかし楠田が、あの女とは肉体関係はなかったと言うと、信太郎は楠田を殴って、千枝子を探しに出かける。夕暮れの箱根「青嵐荘」で千枝子が寂しく佇むところを信太郎は発見して、抱きしめるのだった。

 

雑感

斜陽貴族と戦後の成り上がりの間の恋を描く歌謡映画だ。思っているより、見応えがあった。
主演の相馬千恵子は清楚な美人女優。戦前、新興キネマに所属し、合併後の大映に移ったが、1952年(30歳)新東宝に移籍して、「浅草四人姉妹」の長女役や「青ヶ島の子供たち」の先生役を演じた。

神楽坂はん子の出番が思ったより多く、歌う場面も多かった。台詞は棒読みだったが、きちんとあった。きっぷの良さで売り出し、神楽坂で鳴らしたはん子姐さんだけのことはある。
芸者ワルツ」は、当時流行していた江利チエミのカバーソング「テネシーワルツ」に対抗して、西条八十が作詞、古賀政男が作曲し神楽坂はん子がデビュー曲「こんな私じゃなかったに」に次いで吹き込んだ曲で、大ヒットした。旦那がついて引退したが、旦那と別れたのか1968年に一時復活する。

スタッフ

監督 渡辺邦男
製作 柴田万三、渡辺邦男
原作 大林清
脚本 笠原良三
撮影 渡辺孝
音楽 古賀政男

キャスト

相馬千恵子  朝吹千恵子
高田稔  父朝吹誠通
久保菜穂子  妹朝吹美津子
龍崎一郎  六郷信太郎
柳家金語楼  父六郷恭造
花岡菊子  母六郷とし
田崎潤  友人楠田
清川玉枝  女将吉田富枝
(芸者仲間)
宮川玲子  栄龍
神楽坂はん子  はん子
野上千鶴子  つばめ
旭輝子  照代
藤京子  花丸

 

 

 

芸者ワルツ 1952 新東宝製作・配給

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