1950年代を通じてCBSラジオやCBSテレビで人気を博した同名の人気刑事ドラマを、B級映画の名匠だったドン・シーゲル監督が低予算で白黒映画化した。(原題の”The Lineup” は容疑者を特定するために横一列に並ばせて首実検すること)

 

 

サンフランシスコの麻薬密輸事件に絡んで二人の死者が出る。警察が警戒態勢を引く中、マイアミから二人のギャングが呼び寄せられる。殺し屋ダンサーとその監視役ジュリアンだ。ギャング組織は、三人の旅行客の知らないうちにそれぞれの荷物にヘロインを潜ませ、通関後その荷物からヘロインを回収しようと計画した。(当時まだ麻薬探知犬はいなかったようだ) 回収係として二人に仕事を依頼したのだ。万が一の場合、人を殺しても構わない。

 

 

その通り、サンフランシスコに飛行機で降り立ったその日に、二人を殺して二個のヘロインの包みを回収した。最後の一個は、母娘連れが持つ日本の藤人形の中に隠されている。しかし女の子が白粉だと思い、人形の顔に塗りたくってしまった。それを知ったダンサーは母娘を始末しようと考えるが、ジュリアンは組織のボスにヘロインを横領したと思われると言って反対する。ダンサーはまだ会ったことのないボスに直接弁解しようと、母娘を連れて受け渡し場所に行くが…。

 

 

サンフランシスコを舞台にラストのカーチェイスが見せ場の映画だ。それでも予算が限られるため、見た限りたかだか一台しか壊していない。撮影もアップは主役ダンサーが見得を切るときなど限られた場面しか使わない。ことごとく予算管理が厳しい。弟子のサム・ペキンパーと大違い。

 

 

刑事ドラマの映画化なのだが、ドン・シーゲルは悪役を主役に起用している。主演はイカれたギャングを演ずるイーライ・ウォーラック。西部劇の名脇役として知られるが、この時にはまだ二作目の映画出演だった。それ以前に舞台で活躍しており「バラの刺青」でトニー賞を受賞している演技派だ。

 

 

この人のカミソリのようなキレっぷりにゾクゾクとした。映画の中で主人公は仮定法過去を知らないことと母子家庭しか自分を語っていない(ユダヤ人ということは一目で分かる)が、ドン・シーゲル監督の映画ではそれだけでサイコパスなのだw。ジェームズ・キャグニーともデニス・ホッパー、ロバート・デニーロとも違う。非常に説得力のあるイカれっぷりだった。

 

 

 

ちなみに1958年には同じサンフランシスコを舞台にしたヒッチコック監督の映画「めまい」が上映されて、日本でも同年上映されている。ソール・バスのオープニングと美しい映像、さらにファム・ファタールであるキム・ノバクを美改造(変身)してまで、理想の愛を失ってしまうジェームズ・スチュアートのイカれぶりに、何度見ても感動してしまう。
それと近い満足度を与える映画「殺人捜査線」のCPは如何に高いことか。違う意味で感動した。

 

 

監督: ドン・シーゲル
製作: ハイメ・デル・ヴァル
脚本: スターリング・シリファント

 

配役
イーライ・ウォラック  (ダンサー)
ロバート・キース (ジュリアン)
リチャード・ジャッケル (運転手マクレイン)
メアリー・ラロシュ (ドロシー)
エミール・メイヤー (クイン警部)
マーシャル・リード (アッシャー警部)
レイモンド・ベイリー (ドレスラー)
ヴォーン・テイラー (ザ・マン)

 

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殺人捜査線 (The Lineup) 1958 コロンビア配給 イーライ・ウォーラックのイカレっぷりに注目

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