室生犀星が昭和9年に書いた同名小説を二度目に映画化したもの。
多摩川六郷の川崎側で起きた、とある一家の兄妹げんかを描く。
室生犀星の義母がもんのモデルと言われる。

 

 

Synopsis:

かつては隆盛を誇った川師(河川職人)の赤座は落ちぶれてしまって女房の駄菓子屋を手伝っている。夫婦には長男の伊之吉、長女のもん、次女のさんがいて、長女と次女が家を出ていた。
もんが奉公先で学生の小畑と関係を持ってしまい、お腹に子を宿したため実家に戻ってきた。その頃、看護学校に通っている末妹おさんも帰省する。
父はもんに腹を立て無視していて、母は腫れ物に触るように甘えさせる。長兄伊之吉だけは家族に泥を塗ったおもんのことが許せない。早々に胎児を処分しろという。

次におさんが帰省した時は、小畑が謝罪に来ていた。父母は事を荒立てる気はなかった。小畑はホッとして帰っていくが、伊之吉に捕まりぶん殴られる。
一方、おさんはおもんのことがあって以来、幼馴染の鯛一と上手くいってなかった。鯛一は両親から無理やり別の女と見合いさせられる。そのこともあって鯛一は、おさんに東京へ駆け落ちしようという。しかし筋の通ってないことの嫌いなおさんはきっぱり拒絶するのだった。

翌年のお盆におもんとおさんは揃って帰省した。鯛一は嫁をもらっていた。おもんは昨年子供を流してから、急に色っぽくそして強くなった。父は相変わらず何も言わない。しかし伊之吉はもんの顔を見ると黙ってられない。態度が悪いとおもんの顔をひっぱたくと、母親もおさんも泣き、おもんは「さあ殺せ」と床に仰向けに寝てしまう。これには伊之吉も為すすべがなく、退散するしかなかった。
翌日おもんとおさんは寂しげな母を残して、東京の住処に帰っていく。おもんは来年の夏も帰省するつもりだ。あんな暴力兄でもたまに顔を見たくなることがあるのだ。

 

 

Impression:

伊之吉シスコンである。年が近いもんブラコンである。兄妹であるがために、愛憎が入り混じり、ややこしい事になるのだが、こういう兄妹は戦前の密着した家族関係の中では珍しくなかった。今でもこういう兄貴は少しいるだろう。妹には無視されるだろうが。
我々の血の中には伊之吉やもんに共感できる部分があるのである。だから「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」なんてラノベがベストセラーになるのだ。
当時、大映が苦手としていた乱暴者の役を森雅之が無難に演じている。京マチ子との息はぴったりだった。おさんを演ずる久我美子は狂言回しの役である。
翌年には豊田四郎監督が森雅之・京マチ子コンビで有島武郎原作(森雅之の実父)「或る女」を公開する。二人とも円熟期に入ろうとしていた頃だ。

Staff/Cast:

監督 成瀬巳喜男
原作 室生犀星
脚色 水木洋子
企画 三浦信夫
撮影 峰重義
音楽 斎藤一郎
美術 仲美喜雄

 

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出演
京マチ子 もん
森雅之 伊之吉
久我美子 さん
山本禮三郎 赤座
浦辺粂子 りき
船越英二 小畑
堀雄二 鯛一
潮万太郎 貫一
高品格 茶店の客

 

あにいもうと 1953 大映 —室生犀星のシリアスなホームドラマを成瀬巳喜男が映画化

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