渡辺明の原案を山崎巌と中西隆三がシナリオ化し、野口晴康が監督した怪獣特撮映画。
主役は川地民夫、山本陽子。カラーシネスコ映画。
あらすじ
雑誌記者黒崎浩はカメラマンの小柳糸子と共に、南海諸島の探検に出かけた。雑誌社の船津社長がレジャーランドの計画をぶち上げており、アトラクションになるような展示品を持ち帰るためだ。
二人に東都大学生物学助教授殿岡が同行したが、オベリスク島が噴火をしているのを発見した。島に上陸した黒崎らは洞窟を発見する。その奥には巨大な卵があって、島の子供サキは島の守り神ガッパの卵だという。卵が割れてガッパの子供が現われたが、黒崎によって捕獲される。
三人が子ガッパを日本へ連れ帰った後、子供を失った親ガッパは荒れ狂った。二匹の親ガッパは子供を求めて日本に向った。親ガッパは相模湾に上陸して、小田原城を破壊した。さらに河口湖に姿を現れる。
政府はガッパ対策本部を立ち上げて、湖底に潜むガッパを高周波信号で地上に誘き出す。そこを自衛隊のミサイルで攻撃するが、ガッパは難なく避けて東京に向う。
そこへオベリスク島から脱出したサキ少年が子ガッパに会いにきて、「子ガッパを返せは親ガッパはおとなしく帰る」と言う。社長は最後まで子ガッパを解放することに反対したが、幼い娘に「ガッパもお母さんと一緒にいたい」と言われて絶句する。娘の母親を亡くしていたのだ。社長は折れて、子ガッパを親ガッパに返すことにした。
自衛隊に依頼して子ガッパを連れて行き、羽田空港で解放した。よちよち歩きだった子ガッパは親を呼ぶが声が小さい。そこでスピーカーでテープの声を掛けると、やがて現われた親ガッパは、嬉しそうに吼えまわった。そして子供に飛び方を教えて、親子3匹揃って南の島を目指して飛び去った。
雑感
日活の特撮作品。オープニングテーマからして美樹克彦の「大巨獣ガッパ」の歌で威勢良く始まる。東宝のモスラやキングコングのように南の島から怪獣を拐う話である。
問題はガッパの設定である。始祖鳥のような鳥の先祖に当たる爬虫類なのだが、何故か水中生活ができて両生類も入っている。恐竜のように巨大で青白い炎を吐くのだが、その炎で自衛隊の戦闘機を溶かすこともある。
ゴジラを意識している設定だろうが、少し安直だ。ちょうど松竹が春休み映画として「宇宙大怪獣ギララ」を公開し、早い時期に追いつきたかったのだろう。
それにも増して、雑誌社社員が社命で他国での拾得物しかも生物を届け出ず勝手に持って帰って(窃盗罪)、しかも検疫も受けさせずその生物を飼っていることは、今ならコンプライアンス違反だけでなくSNS炎上ネタから警察に事情聴取されるレベルだ。何しろ自衛隊や市民に多数の犠牲者が出たのだから。
ところが昭和時代の無邪気さもあるが、会社関係者や生物学者はガッパさえ飛んで帰れば、後は会社を辞めれば十分免責だというのは如何か。
子供映画だから、そう言うことはさらりと誤魔化している。だから大人が見るに耐えないことになる。
カメラマン役山本陽子がスッピンに近い状態で綺麗だった。新聞記者川地民夫と科学者小高雄二は欲をぶつけ合って子ガッパを奪い合い、象だ。かと言ってお互いに認め合っている。「ウルトラQ」のような構造だ。そういう点が山本陽子のような女性には理解できない。ラストシーンは山本陽子が退社して羽田から去るのを黒崎が追っていくところでエンドマークが出る。
彼らと比べて脇役に回されて窓際族になった和田浩二が悲しい。
藤竜也に至っては、日系二世の片言を喋る通訳のような役柄だった。
スタッフ
企画 児井英生
原案 渡辺明
脚本 山崎巌、中西隆三
監督 野口晴康
撮影 上田宗男
音楽 大森盛太郎
美術 小池一美
製作協力 株式会社日本特撮映画(渡辺明)
キャスト
雑誌記者黒崎浩 川地民夫
カメラマン小柳糸子 山本陽子
林三郎 桂小かん
船津社長 雪丘恵介
細田 弘松三郎
大山 押見史郎
東都大学生物学者殿岡大造 小高雄二
ジョージ・井上 藤竜也
町田研究員 和田浩治
相原研究員 大谷木洋子
島の長老 加原武門
少年サキ 町田政則