レスリー・キャロン主演だがダンス・シーンもミュージカル・シーンもない。大御所であるモーリス・シュバリエとシャルル・ボワイエも好々爺を好演。とくにボワイエの枯れた演技は必見。
佳作として推薦する。ロケ地もマルセイユで、出演者をほぼヨーロッパ勢で固めているせいもあって、なかなかフランス映画っぽい雰囲気のあるアメリカ映画だった。
映画としては、古い時代の人情話である。フランスの話だが、日本なら新派ものだろう。
だが個性的な俳優が出ている。とくにモーリス・シュバリエとシャルル・ボワイエの顔合わせは、まるで島田正吾と辰巳柳太郎の顔合わせのようだ。ボワイエとシュバリエの口喧嘩を見られるなんて何て贅沢なことか。
ファニー役のレスリー・キャロンは実は二度目の結婚をして子持ちの30歳なのだが、バレエで鍛えているから体の線はまだ崩れていなかった。ただ18歳の頃のドアップ・シーンでキャメラに紗を掛ける(ソフト・フォーカス)。若く美しく見せたかったらしいが、その必要があったのか不思議だ。ちょうど脂がのりきって女らしくなってきた頃だがが、メイクで十分若く見せていたから不要に思えた。返って不自然だった。
マリウス役のホルスト・ブッフホルツは、どこかで最近見たと思ったらジュリアン・デュビビエ監督の映画「わが青春のマリアンヌ」のドイツ語版に出演していた。他にも西部劇映画「荒野の七人」などでよく見た顔だ。
なおこの「ファニー」を基にして日本の松竹映画では、山田洋次監督が翻案した「愛の讃歌」を作った。主役は倍賞千恵子、中山仁。
監督 ジョシュア・ローガン
製作 ベン・キャディッシュ
原作 マルセル・パニョル
戯曲 S.N.ベアマン、ジョシュア・ローガン
脚本 ジュリアス・エプシュタイン
音楽 ハロルド・ローム
撮影 ジャック・カーディフ
出演
レスリー・キャロン … ファニー
ホルスト・ブッフホルツ … マリウス
モーリス・シュバリエ … パニース
シャルル・ボワイエ … セザール
ジョルジェッタ・アニス … オロイーヌ
レイモン・ビュジエール … 提督
ライオネル・ジェフリーズ…ブリュン氏
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