田舎町で出会った二人の娘がパリで同居して体験する、さまざまな出来事を描く連作コメディ。
監督・脚本は「満月の夜」のエリック・ロメール、撮影は「緑の光線」のソフィー・マンティニュー
主演はジョエル・ミケル、ジェシカ・フォルド

あらすじ

第一話「青い時間」

ミラベルはパリから郊外を自転車旅行していたら、田舎道で、パンクしてしまう。レネットという不思議少女が修理してくれて、それを切っ掛けにして二人は親しくなる。レネットはパリの美術学校志望で、納屋を改造した小屋に一人で住み、絵を描いて暮らしていた。


彼女は、夜明け前の一瞬、音が消える「青い時間」をミラベルに体験させようと思い、泊まるように誘う。いざその瞬間が来るが、自動車が音を立てて通り過ぎた。落胆するレネットを慰めるために、ミラベルはもう一晩家に泊まることにする。
二人は一日、農業や牧畜を体験したり驟雨に出会ったりして田舎の生活を満喫する。夜はミラベルが音楽に合わせて踊っていると、レネットも踊り出すが、意外と彼女はリズム感に長けていた・・・。

第二話「カフェのボーイ」

秋の新学期となりレネットは、パリ第一大学に通うミラベルのアパートに同居し、美術学校へ行くようになる。
ある日二人は放課後にモンパルナスのカフェで待ち合わせる。先に着いたレネットがテラス席に着くと、奇妙な中年のボーイ(ギャルソン)に出会う。四フラン余の代金に対して二百フランしか持っていない彼女に対して、ボーイは小銭でなければ受け取れないと言い張る。その上お前は食い逃げの常習者とまで言い放つ。
そこへミラベルがやって来ると、態度をコロリと変えるが、ミラベルも小銭を持たないことを知ると、やはり罵倒してミラベルと口喧嘩になる。ボーイが店に戻ると、その隙にミラベルはレネットを急かして店から逃げ出してしまう・・・。

第三話「物乞い、万引、ペテン師の女」

レネットは乞食に小銭をやる習慣があった。ミラベルは不思議に思ったが、レネットは貧しく食べられない人に施すのは当然だと言う。それに影響を受けたミラベルは、その日から乞食を見ると、必ず小銭を分け与えるようにした。
ミラベルは、スーパーで商品を青いバッグの中に隠す、身なりの良い女を見つける。万引き監視員もそれを見ていた。ミラベルは、彼女を助けるために、バッグを彼女からすり取る。もちろん、外に出てから返すつもりだったのだが、彼女は店を出た後、早々に車に乗って行ってしまった。結局、万引した商品はミラベルが家に持ち帰る羽目になる。
帰宅後、レモンとシャンパンと鮭を青いバッグから取り出すと、レネットは自分の誕生日祝いと誤解して喜び出す。ミラベルが本当のことを言うと、レネットは万引きと同じだと怒り出す。しかしミラベルは、万引き女は病気であって、警察沙汰にするのは良くないと言う。二人の主張はいつまでも平行線を辿る。
レネットは、金を無くしたので家に帰れないという女に駅で会い、小銭を与える。しかしそのために電車に乗り遅れてしまう。公衆電話を掛けるにも小銭はなく、彼女は通行人に電話代をせびるが全く相手にされない。するとさっきの女が通りがかりの人にまた無心しているのに気付く・・・。

第四話「絵の販売」

ミラベルとレネットはルームシェアしているので、家賃を一ヶ月ごと交互に払っている。今月家賃を払う担当はレネットだが、アルバイトを辞めてしまい、払う金が無い。
二人は相談して絵を売ることにする。しかしレネットは独り言や絵画論なら実に饒舌なのだが、他人との交渉ごとは苦手だ。そこは秀才のミラベルがサポートすることにする。
画商の前でレネットは聾唖者のふりをして、ミラベルが通りがかりの人間として見守っている。画廊の主人と交渉するが、案の定値切ってくる。最初は二千フランぐらいと言うが、画家の取り分は半額であり、さらに売れてからお金を渡すと言い出す。これでは家賃を支払えない・・・。

雑感

美しかった映画「満月の夜」と違い、全て16ミリフィルムを使用して撮影している。画像は粗いが、映像はハンディ・カメラ風でなかった。
日本には1998年岩井俊二監督が撮った、同様の主題(新入生の不安)を描いた松たか子主演中編映画「四月物語」があるが、あれも膨らませて連作映画にしたら良かったにと思ってしまった。

第一話ではミラベル役ジェシカ・フォルドの幼い美貌と胸元が気になって困った。それでも夜明けの「青い時」の瞬間、夜虫や夜鳥が一斉に鳴くのをやめて朝鳥が鳴き出すまでに少し間があって、音が消えた。こう言うことがあるとは聞いていたが、実際に聞いたことがなかったので感動した。16ミリフィルムだったが、音の問題なので支障はなかった。恐らく、同時録音だっただろうから、本当に発生した事実だと思う。

第二話は、ギャルソンの逆ギレぶりが楽しい。こんなギャルソンならすぐクビにされるだろう。
この話から、レネットはパリにあるミラベルのアパルトマンに同居する。まだレネットは、都会の作法に慣れておらず、色々な失敗をする。

第三話もレネットが田舎者故に、パリの乞食は誰でも生活に困っていると思い込んでいることが原因で、トラブルに巻き込まれる。働くのが嫌で無気力になっている連中に小銭を与えても問題解決にならない。
一方、ミラベルは盗癖なのか妊娠のせいなのかわからないが、万引き女を助けてしまう。この件でミラベルは身なりの良い万引き犯を官憲に渡すのが良いかと問題提起をしている。それに対してレネットは厳しく取り締まるべきだと主張する。
しかしレネットは自分が詐欺に会って、犯人と関わり合うことでややこしい立場に置かれることに気付く。

第四話は、ミラベルがレネットに対して年上のお姉さんらしいことをしてあげた。ミラベルはレネットに喋らせると、都会の画商に値切られると分かっていたので、策を練る。そしてレネットに一日無言の業をさせて、代わりに自分が口八丁で画商を丸め込んで二千フランをせしめる。だから画商は、四千フランでその絵を売ろうとしたのだ。
日本では百貨店で売る場合が多いが、その場合画家、画商、百貨店で売上を折半するのが基本だ。画廊で売る場合は画家と画商で売上を折半する。この映画が言うように、フランスでも画廊販売だと売上は折半のようで、このビジネスモデルは日仏共通だ。
画商役に「満月の夜」の助平な作家オクターブ役を演じたファブリス・ルキーニが登場する。

全てエリック・ロメールらしい、面白い会話劇だった。美しい第一話と異なり、第二話以降は都会で暮らす上での「金銭の扱いの注意書き」を面白おかしく述べている。レネットもいずれ都会人に染まるかな。それとも田舎に戻って田舎画家になるのかな。

スタッフ

製作 マルガレ・メネゴス、フランソワーズ・エチェガレイ
監督、脚本 エリック・ロメール
原案 ジョエル・ミケル
撮影 ソフィー・マンティニュー
音楽 ロナン・ジル、ジャン=ルイ・ヴァレロ

キャスト

レネット  ジョエル・ミケル
ミラブル  ジェシカ・フォルド
カフェのボーイ  フィリップ・ローデンバック
女ペテン師  マリー・リヴィエール
女監視員  ベアトリス・ロマン
画商  ファブリス・ルキーニ

ネタばれ

第一話

そして夜明け前、先に目覚めたミラベルを追ってレネットが外に出た瞬間、「青い時間」がやって来て一瞬完全な静寂がやって来る。二人は感動して抱き合う。

第二話

翌朝レネットは、食い逃げのままでいるのは気分が悪いので、金を払うことにする。カフェに出かけると、例のボーイはいなかった。彼は、昨日一日だけでクビになったらしい。

第三話

「こんな人間がいるからパリジャンは小銭を恵まないのだ」。レネットは、その女に駅員に突き出されたいか、金を全額返すかと詰め寄る。するとその女は泣き出して、まるでレネットが悪人のようになる。仕方がないので、電話代の一フランだけ返してもらってその女を放してやる。

第四話

そこでミラベルの出番だ。あくまで通り掛かりの客を装い、障害者虐待だと画商を非難する。さらに画商が絵について語り過ぎるので、絵が安っぽく見えるとアドバイスを与える。
それに腑に落ちることがあった画商は、ミラベルに言われるままに金を渡す。そこへ入ってきた客がレネットの絵を気にいる。しかしミラベルの忠告を守り、絵の解説を一切しなかった。最後に値段を聞かれた画商はすかさず四千フランと答える。

 

 

レネットとミラベル/四つの冒険 Quatre Aventures de Reinette et Mirabelle 1987 仏ロサンジュ映画製作 シネセゾン国内配給(1989)エリック・ロメールのノン・シリーズ作品

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