スリランカで二つの男心に揺れる女性を描く原作小説の映画化。
当初エリザベス・テイラーで企画されたが妊娠が発覚して降板し、ヴィヴィアン・リーが起用されたがセイロン(現在のスリランカ)ロケだけで降板してしまい、出産後のテイラーが再登板して完成させた作品だそうだ。
そのためテイラーの体型が当時にしては太って見える。その後(15年後)のことを考えると彼女はもともと太りやすい体質だったようだ。
産後のため、セイロン・ロケにテイラーは参加せず、映画のセイロン・シーンは最初のヴィヴィアン・リーが映ったものを使っているそうだが、気がつかなかった。またスタントマンが演じているシーンもある。
セイロンの大農園主ワイリー氏は訪問先のイギリスでルースを見初めわずか2週間で結婚して帰国する。
ルースたちがそこで見たのは野生の象が人間の行く手を阻むシーンだった。
そのときは銃で追い払われたが、象は保護されているため射殺するためには政府の許可が必要である。
次にカルチャーショックを感じたのは、夫ジョン・ワイリーの亡父が使用人や年老いた友人から今でも愛されていることだった。亡父のやって来たことを、夫はいまだに忠実に繰り返しているだけで、時には亡父がしたように妻に手を挙げた。
そんな中で彼女の救いは、パリをこよなく愛すディックだった。ディックはジョンの有能な部下でありルースも憎からず思っていたが、ある日ルースに思わず口づけしパリへ逃げようと誘う。
そんな時、水不足になり農場内でコレラ騒ぎが発生する。従業員は三々五々逃げ出し、ジョンは罹患者の出た家を焼き払いルースも家事で寝る暇もなかった。
ようやくコレラ禍も一段落ついたが、ルースはディックに別れを告げる。しかし今度は水を求めて、象の大群がジョンの屋敷に突進してきた。
夫婦仲がギクシャクしているときに第二の男性が出てくるが、最後によりが戻るという当時良くあった映画。
1953年に撮影完了して翌年製作上映された。
モンスター映画の典型スタイルで描かれているが、文芸作品らしく強烈な文明批判も忘れていない。
日本で言えば「ゴジラ」映画ほど重くないが、「モスラ」が近いかも知れない。
Elephant Walk
監督 ウィリアム・ディターレ
脚本 ジョン・リー・メイヒン
原作 ロバート・スタンディッシュ
製作 アーヴィング・アッシャー
配役
エリザベス・テイラー
ダナ・アンドリュース
ピーター・フィンチ
アブラハム・ソウファー
音楽 フランツ・ワックスマン