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傑作推理小説の出版前に海賊版の出現を抑えるため、世界中から翻訳家を9人を一箇所に集めて、外部との通信の絶たれた密室で同時に翻訳させる。ところが、一部をマスコミに流したという脅迫メールが届く。一体、誰が・・・?
フランス・ベルギーのミステリー映画。
監督と脚本は、レジス・ロワンサル。
主演はランベール・ウィルソンとアレックス・ローザー。
共演はウクライナ人のオルガ・キュリレンコ。
雑感
三つの時系列が並んで流れながら、最後に一本にまとまる。最後の結末には、驚くだろう。最初のシーンの意味を考えていた人のみが、騙されずに済んだ。
大きな叙述トリックによるドンで返しがラストにあるが、全体的にはアガサ・クリスティのプロットに現代風監禁劇を掛けたような映画だった。
もう少し、時系列を難しく提示すれば、綾辻行人並の作品になったかも知れない。
「ダビンチ・コード」を書いたダン・ブラウンの原作小説「インフェルノ」を出版するときに、海賊版を恐れた出版元が各国の翻訳家を地下室に閉じ込めて同時に翻訳させた話をもとにこの作品のオリジナル脚本は書かれている。ダン・ブラウンに対するイヤミだw。
キャスト
エリック・アングストローム(出版社社長)- ランベール・ウィルソン
カテリーナ・アニシノバ(ロシア語の翻訳者)- オルガ・キュリレンコ
アレックス・グッドマン(英語の翻訳者) – アレックス・ロウザー
ハビエル・カサル(スペイン語) – エドゥアルド・ノリエガ
エレーヌ・トゥクセン(デンマーク語)- シセ・バネット・クヌッセン
ダリオ・ファレッリ(イタリア語) – リッカルド・スカマルチョ
ジョルジュ・フォンテーヌ(書店経営者。アングストロームの文学の師) – パトリック・ボーショー
ローズマリー・ウエクス(アングストロームの助手) – サラ・ジロドー
イングリット・コルベル(ドイツ語) – アンナ・マリア・シュトルム
チェン・ヤオ(中国語) – フレデリック・チョー
テルマ・アルヴェス(ポルトガル語) – マリア・レイチ
コンスタンティノス・ケドリノス(ギリシャ語) – マノリス・マブロマタキス
スタッフ
監督 レジス・ロワンサル
脚本 レジス・ロワンサル、ダニエル・プレスリー、ロマン・コンパン(フランス語版)
製作 アラン・アタル
音楽 三宅純
撮影 ギヨーム・シフマン
ストーリー
フランス・ノルマンディーのバルフルールにあるフォンテーヌ書店は、火災を起こし焼け落ちた。
ーその後、出版社社長エリックは「デダリュス」三部作完結編を世界同時発売すると大々的に発表した。
各国版の翻訳に当たって、9カ国語の翻訳者が豪邸に集められた。彼らは、外部への内容漏洩を避けるため通信機器を取り上げられた。9人の翻訳者は、そこに閉じ込められ、一カ所にまとまって仕事をする。そして毎日、すこしずつ「デダリュス3」のフランス語原稿を渡されその日のうちに翻訳を終わらせ、翌日も同じような作業を続けさせた。
時系列が変わって、現在。フランスの刑務所でエリックは、何故デュダリスは流出したのかと回想していた。
ーーエリックは、「デダリュス」を書き終えたと言うジョルジュ(フォンテーヌ書店の店主)から原稿を受け取りに出かけた。ジョルジュはエリックとの絶縁を宣言する。
ーエリックの携帯に「デダリュス3」の冒頭10ページを流出したと書かれた脅迫メールが届く。彼は翻訳者たちを集めて犯人捜しを始めた。各宿泊部屋を捜索したエリックは、手書き原稿を隠していたデンマーク人トゥクセンを尋問した。その原稿は、彼女の処女作であったが、エリックはトゥクセンに才能がないと言い切った。仲間内でも犯人探しが始まった。アレックスの部屋を訪れたアニシノバは、彼が偽の翻訳者だと暴いた。エリックは秘書に命じてロンドンの彼の下宿を調べさせた。エリックは、また脅迫メールを受け取る。怒った彼は、シェルターの電気を止めて、誰かが自白するまで翻訳者達を監禁した・・・。
刑務所にアレックスがエリックに面会に来て、エリックに原稿流出のトリックを明かした。9人が集められる前にアレックスは入手していたのである。
ー暗黒の資料室で、トゥクセンは才能のなさを嘆いて自殺した。エリックに脅迫メールをやって来た。彼はついにアニシノバを撃ってしまった。
エリックは出版社へ連絡し、脅迫メールに記載された金額を振り込ませる。しかし、出金した瞬間、「デダリュス3は全て流出した」というメールが届く。
刑務所でアレックスは、「デュダリス3」はジョルジュでなく自分が書いたと告白した。
ーー昔、アレックスは毎年夏休みだけ、フォンテーヌ書店で働いていた。成長したアレックスが書いた「デダリュス」を見たジョルジュは、絶賛した。ジョルジュはペンネームを提案した。
ーーアレックスは「デダリュス」の第二部が発行されたとき、翻訳家をもののように非人間的に扱うエリックに怒った。そこで、第三部の翻訳へ参加できるよう働きかけ、エリックが脅迫されて送金した金を彼の口座へ入金して狂言に見せ掛けることに成功した。
半狂乱となったエリックは「オスカル・ブラックは私がこの手で殺したんだ」と叫んだ。殺した上、放火して証拠を消したのだ。それを聞いて、警察官が飛び込んできた。アレックスは、刑務所を後にした。