「その男ゾルバ」の名匠マイケル・カコヤニス(ギリシャ人)が製作・脚本・監督・衣裳デザインを担当し、消えた核物質が引き起こすコメディーを描いた終末SF映画。
主演はトム・コートニー、コリン・ブレイクリー、共演はサム・ワナメイカー、キャンディス・バーゲン。
あらすじ
1972年に米軍爆撃機がエーゲ海に墜落した。乗員のパイロットとナビゲーターは、墜落前に3個の核物質を強固なカプセルと金属箱に入れてパラシュートでカロス島に目掛けて落とした。パラシュートで海に落ちたパイロットとナビゲータは、島に泳ぎついた。しかし極秘活動のため、秘密裏に米軍基地に連絡しなければならない。しかし彼らはパンツ一丁なので金も持っていなかった。二人は別れて、物乞いや盗み食いをしながら生き延びて、いつか基地に電話をかけようとしていた。そうこうしているうちに落下した金属箱の一つは、山羊飼いが宝箱と勘違いして隠してしまう。
米軍は、爆撃機の墜落を察知するや、核兵器回収のため、カロス島にタスクフォースを派遣する。隊長はエリアス大佐だ。しかしあくまでも極秘事項なので、彼らは観光業者に化けて、核兵器が落ちたあたりの土地を買収し、リゾートホテルを建設すると説明する。そしてあたりを探索して、まず2個の核物質を発見した。
カロス島は、老人しかいない寂しい島である。アメリカの観光業者がホテルを建設することで、老人たちは大喜びする。それを大新聞が、「過疎状態の島にホテルができる」と報道し、ヨーロッパ中に伝えられる。ギリシャや西欧からの観光客は、我先にと島に押し寄せ、毎夜野外ディスコを繰り広げる。
さらにエリアスが土地を掘り起こすために雇った島民が、ギリシャ時代の古代遺跡を発見する。各国の考古学者や芸術家たちも島を訪問する。彫刻家エレクトラが興味を持って現れるが、エリアスは部下ピーターを使って現場から引き離す・・・。
雑感
この映画は、ある実際の事件を元にして作られている。
「1966年1月17日、アメリカ空軍戦力航空軍団SACに所属する爆撃機と空中給油機が地中海の上空で空中給油中に衝突、墜落した。4個の水爆のうち3個がスペインのパロマレス近くに落下し、1個が海中に落下した。アメリカ空軍が即刻やってきて、どこに落ちたか調査を開始する。何も知らされていない村人たちは、マスクに防護服を着込んだ米兵を訝しんだ」。
これを4年後の近未来に話を移し、コメディとブラックユーモアを取り入れたフィクションに仕立てたのが、この作品だ。
しかし脚本が甘くて、盛り上がらなかった。内容的には、背筋も寒くなる話なのだが、映画「博士の異常な愛情」の二番煎じの感は拭えない。
米国では、米軍を風刺する内容なので、評価は低い。
「魚が出てきた日」という邦題は、まるでハッピーエンドのようである。本当は「魚が浮かんだ日」と訳すべきだろう。
未来のファッション雑誌のような衣装デザインが使われている。この衣装デザインもマイケル・カコヤニス監督が手掛けている。
残念ながら、キャンディス・バーゲンの出番は後半で余り多くない。ノーブラ・シーンが多いけれどもw。
スタッフ
監督・製作・脚本:マイケル・カコヤニス
撮影:ウォルター・ラサリー
音楽:ミキス・テオドラキス
キャスト
乗員(ナビゲーター):トム・コートニー
隊長エリアス:サム・ワナメイカー
芸術家エレクトラ・ブラウン:キャンディス・バーゲン
乗員(パイロット):コリン・ブレイクリー
兵士ピーター:イアン・オギルビー
歯医者兼通訳:ディミトリス・ニコライディス
ニコラス:ニコラス・アレクシオン
男:ウィリアム・バーガー
***
島民もバブルに浮かれている頃、さっきの山羊飼いはさまざまな道具を使って「宝箱」をこじ開けようとするが、上手くいかない。町に出て行くと、エレクトラが使っている金属を溶かす液体を見て、これだと気が付く。彼女が目を話した隙に、液体を盗み、自宅に帰り、金属箱に使う。すると中から、茶色い球体がいくつか出てきたが、それだけしかなかった。山羊飼いの妻は、そのうちの一部を持っていたが、警察とエリアスの捜査の手が延びたとき、妻は上水道に捨ててしまった。
エレクトラが島から去ったその夜も、若者たちは野外ディスコ・パーティを楽しんでいた。ウェイターは、水道水をふんだんに使い、ドリンクを作って、客に運んだ。
夜も更けて宴も最高潮を迎えた時、海辺で魚が腹を出して浮き始めた。それも一匹や二匹ではない、何万匹といる。
エリアスは、核が海中に漏れたことを一瞬にして理解する。そして兵士全員をホテルに連れ帰り、イマージェンシー・コールを行う。しかしほとんどの人たちには何を意味するのか伝わっていない。パニックが始まるのは、これからだ。