元受刑者と妻が、世間の冷たい目に晒された上に夫は失業して、やってもいない銀行強盗の嫌疑をかけられ、裁判で死刑を申し渡される・・・。

ウォルター・ウェンジャーの製作で、主演は、シルヴィア・シドニーヘンリー・フォンダ。共演は、バートン・マクレーンジーン・ディクソン、ウィリアム・ガーガン、チャールズ・チック・セール

脚本はジーン・タウングレアム・ベイカーが書き下ろし、「激怒(1936)」に次いでフリッツ・ラングが渡米第二作として監督した。白黒映画。

あらすじ

前科三犯のエディは、恋人ジョーンが秘書を勤める弁護士ホィットニーのおかげで、仮出所を許される。ドーラン神父に見送られて彼は、3年ぶりに愛するジョーンと抱き合う。その夜のうちに二人は結婚するが、モーテルに行くとエディの正体に気付いて、二人を追い出してしまう。
その後エディは、ホィットニーの世話でトラック運転手として働く。しかし、ジョーンの姉ボニーは、世間が前科者に対して冷たいことを知っていた。

やがて二人は、郊外に一戸建て住宅を月賦払いで買うことになった。ジョーンとボニーが引っ越し作業に汗を流しているとき、雇い主は、仕事が遅いとイチャモンを付けてエディをクビにする・・・。

 

雑感

ドイツで名作を生み出していたフリッツ・ラング監督のフィルム・ノワール。彼はユダヤ人(ただし、すでにカトリックに改宗していた)であったため、1934年にフランスを通ってアメリカに亡命した。

1934年に警察やテキサス・レンジャーらに射殺された強盗夫婦クライド&ボニーに想を得た、最初の「犯罪者夫婦の逃避行もの」だ。戦後になって、よく似た作品が作られた。

この作品は、監督のハリウッド第二作である。前作「激怒」に主演した女優シルヴィア・シドニーのプロデューサーであるウォルター・ウェンジャーが、ラングに監督を依頼した。しかし、事件後すぐの映画化なので、渡米したばかりのフリッツ・ラングには、どう作るべきかなかなか分からず一年以上迷っていた。

この映画では、主人公エディは前科者でいながらジョーンと結婚してささやかな幸せを掴みかけるが、その途端に失業してしまい、犯罪に巻き込まれる。大恐慌後の不況下でクライド&ボニーを義賊扱いする声が多く寄せられたため、主人公を悪くいえない事情があったとは言え、実話とは、かなりかけ離れた映画であり、フリッツ・ラングが作りたい映画とは思えない。
ただし、ハリウッド映画の癖やヘイズ・コードという制約を思い知ったことだろう。

なお、原題の「You Only Live Once 」(人生は一度だけ)をもじった映画が、1967年の日本を舞台にしたスパイ映画「007は二度死ぬ」(You Only Live Twice)である。

スタッフ

製作総指揮  ウォルター・ウェンジャー
監督  フリッツ・ラング
脚本  ジーン・タウン、グレアム・ベイカー
撮影  レオン・シャムロイ
音楽  アルフレッド・ニューマン

 

キャスト

ジョーン  シルヴィア・シドニー
エディ  ヘンリー・フォンダ
ホイットニー弁護士  バートン・マクレーン
ジョーンの姉ボニー  ジーン・ディクソン
ドーラン神父  ウィリアム・ガーガン
マグシー(囚人、料理係)  ウォーレン・ハイマー
イーサン  チャールズ・チック・セール
へスター  マーガレット・ハミルトン
ロジャーズ  グィン・ウィリアムス
ヒル医師  ジェローム・コウアン
ウォーデン  ジョン・レイ
地方検事  ジョナサン・ヘイル

 

***

その頃、強盗団が銀行を襲撃し、現金輸送車を強奪した。自動車には、エディの帽子が残されていたことがわかる。エディは、帽子は盗まれたものであって、身に覚えがないと言った。彼女は、無実を証明するためエディ自ら出頭することを勧める。そこへ警官隊が踏み込んで来た。
裁判の結果、エディに死刑が宣告された。死刑執行の日、エディは、自傷して病室に移される。そして医師を人質にして脱獄を図った。

銀行破りの真犯人がトラックもろとも転落して死んでいるのが発見され、刑務所にエディを釈放せよという命令書が届いた。ドーラン神父は、拳銃を持ったエディのもとに嬉しい知らせを持って行く。
しかし、エディはもはや誰も信ずることができなかった。エディは、神父を射殺して逃走する。長い逃避行の間に、ジョーンに二人の赤ちゃんが生まれた。ホィットニーは、ジョーンに自分の車を与えて、二人に国境を越えさせようと計画を立てる。
赤ちゃんをホィットニーと姉ボニーに托したジョーンとエディは、ようやく国境付近まで逃げる。ところが、タバコ屋の店主の通報により警官隊が待ち受けていた。二人は、銃弾を浴びて抱き合って倒れた。

 

 

 

暗黒街の弾痕 You Only Live Once (1937) ウォルター・ウェンジャー・プロ製作 ユナイト配給 – 最初のクライド&ボニー型フィルム・ノワール

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