アンドレ・カイヤット監督が安楽死問題とくに嘱託殺人の問題を扱っている。
カイヤットは弁護士出身でこのジャンルは得意な分野である。この映画で高い評価を得てべネチア国際映画祭グランプリを得た。
映画の中では事件の具体的な経緯を飛ばし、被告は最初から裁判所にいる。
それに対して当時フランスの陪審員は7人+補欠2人だ。人を裁いた後の陪審員それぞれの人生模様を描くのも重要なテーマ。
ベルサイユで女性医師が末期ガンに苦しむ元恋人の所長に頼まれ安楽死させたとして訴えられた。そこで陪審員が20人選抜される。その中から検事弁護士の意見を聞き7人に絞る。
その7人は、次の面々。1番は貧しい自作農だ。女房とイタリアから出稼ぎの作男がいる。
2番はバーの給仕で彼女がいるが、彼女の両親が結婚させてくれない。
3番は退役軍人。二人に娘はともに行かず後家だがようやく妹にBFができた。
4番は印刷屋だが息子が病気で療養所に入っている。
5番は豊かな未亡人、ベルサイユに来てから若いツバメができた。
6番は職人で5番の未亡人に関心がある。
7番はジゴロで振った女にストーカーされている。
被告は冷静で審理は淡々と進む。被告は外国人で無神論者であった。その上、莫大な財産を相続することになった。ところが彼女に恋人がいて、恋人は彼女は逃げることもできたのに約束に縛られたと証言した。
審理の最中に陪審員の身に様々なことが起きる。1番は女房が作男と浮気をするが、結局二人を許す。2番は裁判での積極的な態度が彼女の両親に気に入られ結婚することになる。3番の娘は振られてしまい、父は優しく娘を慰める。4番は息子が重度のてんかんのため療養所から追い出され自宅介護になるが、ガラスと見ると割ってしまうので、近所迷惑を起こし、父はいっそ殺そうかと思う。5番に擦り寄る若きツバメは実は被告の愛人だった。少しでも陪審の判断を彼女に有利にしたくてヴェルサイユにやって来たのだ。7番は女性ストーカーに自殺されてしまう。
判決は有罪4対無罪3の僅差で被告に対して5年の実刑が申し渡された。5年と言う数字は故殺としては短く、安楽致死としては重い中途半端な刑期だ。それだけ判決に迷いがあったと言うことだろう。
裁判官は遺産目的であるか否か、計画的か否かで争わせたが、結局そう言う問題ではなかった。当時のフランス刑法はそう言う点でやや網の目が荒かったのだろう。
私は被告に同情するが、密室で行われたこの犯罪に対して判決を支持する。
それと同時に安楽死をカトリックも認めるべきだろう。たしかに本人が少々苦しいぐらいで安楽死を認めるべきではないが、家族の経済的負担の大きさを考えるべきである。カトリックもプロテスタントも裁判所が許可したら、認めていいのではないか。
[amazonjs asin=”B001PL81VS” locale=”JP” title=”裁きは終わりぬ DVD”]
監督 アンドレ・カイヤット
脚本 アンドレ・カイヤット 、 シャルル・スパーク
撮影 ジャン・ブルゴワン
音楽 レイモン・ルグラン
配役
エルザ・ルンデンシュタイン クロード・ノリエ
フェリックス レイモン・ビュシェール
モテッソン ジャック・カストロ
コードロン ジャン・ドビュクール
フラビエ ジャン・ピエール・グルニエ
マラングレ マルセル・ペレス
アンドリュー ノエル・ロックヴェール
ミクラン ヴァランティーヌ・テシエ
クレメール ミシェル・オークレール