カナダの小説家ルーシー・モード・モンゴメリーが書いた名作青春小説の映画化。
サム・ミンツが脚色し、ジョージ・ニコルズ・Jrが監督した。
主役はドーン・オデイ(後に役に因んでアン・シャーリーに改名する)、
共演はトム・ブラウン、ヘレン・ウェストリー、O・P・ヘギー。
白黒映画。
あらすじ
プリンス・エドワード島にマシューとマリラという老兄妹がいた。物静かなマシューは60歳になり、農業を営む上で不便が出てきたため、マリラは、スペンサー夫人の伝で孤児院から男の子を貰うことを決める。ところがマシューが、駅まで出迎えに行くと、その子はアン・シャーリーという名前の赤髪の女の子だった。アンは帰りの馬車で想像力の豊かさを見せた。マリラは、働けないアンを孤児院へ戻そうとするが、スペンサー夫人は次の貰い手の家までマリラを連れていく。その家は貧乏の子沢山で、アンを子守としてほしがった。マリラは、ここだったら、ウチの方がずっとマシな生活を送れると思い、アンを引き取る決心をした。
アンは、家庭に飢えた利口な子だったので、マリラとぶつかりもしたが、その度にマシューが仲を取り持ち、次第に家族のかけがえのない一員となった。
初対面で彼女は、ギルバートから「にんじん」と呼ばれて怒る。それ以来口も聞かない関係だった。実はギルバートとアンはお互いに相手のことを気になっていたのだ。
しかし一年後、ギルバートはアンと言葉を交わし、二人は、親友の契りを結ぶことにする。
そして3年後、二人は将来を誓い合う仲になる。
しかし昔ギルバートの母がマシューと別れて別の男と結婚したので、マシューはショックで結婚できなかった。マリラもマシューのために長い間家事をやらされて婚期を逸した。従ってマリラのギルバートに対する恨みは大きく、2人の交際は禁じられた・・・。
雑感
内容は原作を端折っていて、しかもオリジナルのエンディングだ。原作9巻まで読んでいるようなガチ勢には不評だろう。
筆者は1巻から3巻まで読んだが、脚本家は美味しいところをつまみ食いするような形で、映画にしたようだ。
しかし、客観的に見て、「赤毛のアン」という大河ドラマをコンパクトにまとめるには、こうするしかないだろう。
これが嫌ならテレビドラマを観れば良い。傑作が作られている。
戦前は、翻訳されていなかったので邦題が二つある。この映画は日本で1935年に「紅雀」という邦題で上映された。その時点ではまだ原作は翻訳されていなかった。この原作が、「赤毛のアン」と呼ばれたのは、NHK朝のテレビ小説「花子とアン」で有名な翻訳家村岡花子が、1952年に初めて翻訳書「赤毛のアン」を発行してからである。
映画は、原作で言えば、第1巻「赤毛のアン」に当たる部分だが、大胆に脚色している。例えば、リンド夫人とバリー夫人を同一人物にしているし、ギルバートとマリラの間に確執があり、ギルバートは最初から医学校に入っていて恩師を連れて危篤となったマシューを助けたりする。
原作第1巻と言えば、アンとギルバートは長く続いたツンデレの関係に終止符を打ち、親友になるところで終わる。
一方、映画ではアンが登場時点ですでに14歳であり、終わりには師範学校に進学しており、ギルバートと婚約しそうなところにまで行ってしまう。
主役アン・シャーリーを演ずるドーン・オデイは、どうやらアンの生き方に共鳴したらしく、撮影後すぐ役名からアン・シャーリーと改名した。従って、映画のクレジットからアン・シャーリーになっている。見ていても非常に好感が持てる演技だった。
彼女は、目が大きい美人で、改名後も脇役女優として戦前戦中に重宝された。映画「ステラグラス」ではバーバラ・スタインウィックの娘役を演じてアカデミー助演女優賞にノミネートされた。しかし戦争が終わろうとする頃、引退したようだ。
スタッフ
製作 ケネス・マクゴワン
監督 ジョージ・ニコルズ・ジュニア
原作 ルーシー・モード・モンゴメリー
脚本 サム・ミンツ
撮影 ルシエン・N・アンドリオ
キャスト
アン・シャーリー ドーン・オデイ(アン・シャーリー)
ギルバート・ブライス トム・ブラウン
マシュー・カスバート O・P・ヘギー
マリラ・カスバート ヘレン・ウェストリー
バリー夫人レイチェル セーラ・ヘイドン
フィリップス先生 マレイ・キオネル
ダイアン ガートルード・メシンジャー
テイタム医師 チャーリー・グレイプウィン
ブルーウェット夫人 ヒルダ・ヴォーン
***
ギルバートは医学校へ進学し、アンは師範学校に進んだ。二人の間には、大きな溝があるようだった。
ところがマシューが重病となり、アンはグリーンゲーブルズの自宅に帰る。テータム先生に尋ねると、本土の名医でないと手に負えないと言う。そこでギルバートを久しぶりに訪ねると、ギルバートの恩師が専門だから、昨日来て下さるように手配したと言う。そして名医に見てもらう事ができてマシューは、命を取り留める。マリラも、このことでギルバートとのわだかまりも解け、アンとの復縁を認めてくれた。アンとギルバートは、結婚を前提とした交際を続けることになった。