(★)漁村の人妻が野性味溢れる男によろめく「よろめき映画」。
この映画は、1941年にクリフォード・オデットが描いた同名舞台劇をアルフレッド・ヘイズが脚色したものを、フリッツ・ラングが監督した。
主演はバーバラ・スタンウィック。
共演はポール・ダグラス、ロバート・ライアン、キース・アンデス。
マリリン・モンローは、主人公の弟の婚約者として助演していて、かなり台詞が多い。
白黒映画。日本では劇場未公開だが、テレビ放映されたので邦題が付いている。
ストーリー
メイ・ドイルは長い東部や中西部の生活を終え、故郷であるカリフォルニア州の漁師町モントレーに帰ってきた。漁師の弟ジョーは、渋々ながら彼女を家に住まわせる。彼の恋人ペギーは、垢抜けたメイをとても気に入る。ジョーは、メイの旦那はどうしたと尋ねる。彼女は彼が既婚者であり、亡くなった時に正妻に裁判を起こされ、端金しかもらえなかったと答える。
メイは、ジョーが乗っている漁船の船長で人の好いジェリー・ダマートと付き合う。ジェリーは、父親と叔父を面倒見ていたため、長年独身で暮らしていた。彼は、メイを辛辣で粗野な映写技師アール・ファイファーを紹介する。アールの妻は、芸能人で旅行に出たきり帰っていない。アールは、田舎におさまっていられない派手好きな性格のメイに惹かれ誘惑する。二人の親しげな関係に気づかないほど鈍感なジェリーは、メイに結婚を申し込む。メイは、ジェリーを愛する自信はなかったが、あえて自分を変えたくて家庭に入る道を選ぶ・・・。
雑感
フリッツ・ラングの不倫映画(メロドラマ)。
MGMの垢抜けたメロドラマと違って、アール(ロバート・ライアン)が不倫相手だからか、女性の色気を感じさせない無骨な映画だ。この辺りが、ノワールの巨匠フリッツ・ラングが描くメロドラマなのか。
さらに、映画での赤ん坊の存在感が全くない。子役も非常に大人しかった。おそらく、母親に娘への愛情が湧いてなかったことを表しているのだろう。
しかし、ジェリーに離婚を認められたことで、はじめてアールと二人で子供を育てる「暗い将来」が頭に浮かび、子供への責任感や愛情が湧いてきたのだろう。そして、子供を育てるためには、温かい家庭が必要だという現実に気付いたのだ。
メイの妥協の産物として維持された家庭だから、メイはまた浮気して出て行くかもしれない。それとも娘べったりになって、子供をスポイルしてしまいそうだ。
フリッツ・ラングにとっては凡作であり、バーバラ・スタンウィックの演技力が必要とされる映画とは思えなかった。
マリリン・モンローは重要な役を演じていたが、撮影中は台詞をとちってばかりだったそうだ。そういうとき、スタンウィックは、無視して台詞を止めてしまうそうだ。でも、これは虐めではなく立派な躾けである。(45)
スタッフ
監督 フリッツ・ラング
脚色 アルフレッド・ヘイズ
原作戯曲 クリフォード・オデッツ
製作 ジェリー・ウォルド、ノーマン・クラスナ、ハリエット・パーソンズ
撮影 ニコラス・ムスラカ
音楽 ロイ・ウェブ
キャスト
メイ・ドイル バーバラ・スタンウィック
ジェリー・ダマート ポール・ダグラス
アール・ファイファー ロバート・ライアン
ペギー マリリン・モンロー
ジョー・ドイル キース・アンデス
パパ・ダマート シルヴィオ・ミンチオティ
ヴィンス叔父さん J・キャロル・ナッシュ
***
ジェリーとの間に長女グロリアが誕生した後、メイは悶々とした日々を過ごしていた。離婚していない人とは付き合えないとメイに言われていたアールが、ついに離婚を成立させた。早速アールは、メイと関係を迫る。最初は抵抗したメイだったが、やがて夏の夜にアールの手に落ちる。
ジェリーは相変わらず鈍感だったが、町では二人の噂で持ちきりだった。メイが家に入ったおかげで家を追い出された叔父ヴィンスは、ジェリーにそのことを告げる。ジェリーが二人に問い質すと、メイは事実だと認める。ジェリーは、怒って家を飛び出す。
翌日ジェリーは酒を煽り、映写室にアールを見つけて首を絞める。そこにメイが入ってきてジェリーを止める。ジェリーは、その場を立ち去り、メイが娘を連れ出すために家に帰るが、そこには赤ん坊はいなかった。
アールは、赤ん坊と船に隠れていた。現れたメイに赤ん坊を置いていくように説得するが、メイは拒否する。ジェリーは罵り合いの末にメイに別れを告げる。そのとき、ようやくメイは、アールを愛していないことに気付く。メイはジェリーに何度も許しを請い、ジェリーも次第に頭を冷やしてメイと復縁する。