(☆)前年に発表された浜口庫之助作詞・作曲の同名曲に関する歌謡映画

倉本聰の脚本を西村昭五郎監督が演出し、姫田真佐久が撮影した。

主演はジュディ・オング
共演は山内賢、和田浩治、太田雅子(梶芽衣子)、ジョニー・ティロットソン、田辺昭知とザ・スパイダース

ストーリー

ジュリーは、父親がアメリカ人で母親が日本人でワシントンに住んでいたが、突然ジュリーの父が亡くなる。父の友人たちは、貧しいジュリーをひと目母に会わせるため、彼女がショックで啞になったことにして慈善団体の支援を受け、彼女を日本に送った。隣の席には歌手のジョニー・ティロットソンが乗っていた。
日本の窓口が、猪又SATテレビ社長夫人だったので、SATは御前をリーダーにしてジュリーの単独取材を目論んだ。
日本に到着したジュリーは、マスコミに騒がれると母が出て来にくいと直感し、人知れず母親が勤めていた料亭「山岡」を訪ねた。「山岡」の女将には息子がいて、彼が所属するグループ・サウンズ「ヤング・アンド・フレッシュ」が、ジュリーの母親を捜す手伝いを買って出る。

早速、健、浩治、雅子ら日本の若者とジュリーはポンコツジープで、彼女の母葉子が移った京都「嶋の家」目指して東海道を西に進む。一方、行き先の情報をキャッチした御前達は、ジュリー達をずっと隠し撮りしていた。
浜松で雅子は、ジュリーが唖でないことに気付く。そこでジュリーは、雅子を避けてスパイダースのバスに乗ってしまう。
名古屋で再び合流するが、ジュリーばかりチヤホヤされて面白くない雅子は、啞でない事実を御前たちに伝える。ヤング・アンド・フレッシュは、ザ・スパイダースのライブに参加するが、再びジュリーは消えてしまう。ジュリーは覚悟を決めて、御前たちに事実を告白したのだ。
御前は、事実を慈善団体に告白してアメリカに帰るかどうか、ジュリーの気持ちを確認した。ジュリーは母と会うことを望んだ。そこに健たちが立ち塞がり、御前たちはコテンパンにのされて、ジュリーを取り返された。しかしこれは、御前の考えた作戦だった・・・。

雑感

この映画は、ジュリーにとってはワシントンから京都へのロード・ムービーである。
編集が荒いため、途中のカットが抜けているようだが、結局、御前はいい人であるが故に、後楽園球場のグラウンド・キーパーに干されてしまう。また、細川ちか子演じる咲坂夫人もいい人であり、母の手紙をジュリーに渡す。
悪い人たちというのは、慈善団体でありそれ以外のマスコミ関係者である。
もう少し、丁寧に撮れば、良い作品に仕上がっただろう。

ジュディ・オングは、幼い時に親の仕事の関係で一家が東京に移住し、児童劇団に所属し11歳で日米合作映画に出演している。
映画公開時は、まだ16歳だがなかなか真に迫った演技を見せる。この年に歌手デビューをしていたが、この映画でバンドをバックに歌う場面はない。
太田雅子梶芽衣子)は「青春ア・ゴーゴー」に続いてのジュディ・オングとも共演だが、性格の暗さを見せる芝居をしてしまうため、次第に脇役に回されるようになる。そして青春映画から任侠映画に移動し、「女囚サソリ・シリーズ」で大スターとなる。

この映画は、また青春映画であり、グループ・サウンズ映画でもある。
劇中歌として、以下の曲を聴くことができる。

涙くんさよなら 唄ジョニー、ティロットソン
バラが咲いた  唄ジョニー・ティロットソン
フリフリ  歌 田辺昭知とザ・スパイダース
夕陽が泣いている  歌 田辺昭知とザ・スパイダース
唖のジュリー(「夕陽が泣いている」のB面「ちびのジュリー」の歌詞を一部変えたもの)  歌 田辺昭知とザ・スパイダース
唄を忘れたカナリヤ  歌 ヤング・アンド・フレッシュ
・涙くんさよなら  歌 ヤング・アンド・フレッシュ

ジュディ・オング太田雅子に歌わせたら完璧だったのに、カットしたのだろうか。
ジョニー・ティロットソンは、1960年に「ポエトリー・イン・モーション」で全米二位のヒット曲を歌って一躍スターになる。このシングル盤「涙くんさよなら」は1965年に最初に坂本九が吹き込むが何故か売れ行きが悪く、競作になった。その一人ティロットソン盤が日本で大ヒットしてしまい、翌年デル・シャノン、レスリー・ゴーアと日本ツアーを行う。その合間にゲスト出演の形で撮影したのだろう。(60)

スタッフ

企画  笹井英男
脚本  倉本聰、明田貢
監督  西村昭五郎
撮影  姫田真佐久
音楽  浜口庫之助
協力  日本航空

キャスト

ジュリー・クリプトン  ジュディ・オング
ヤング・アンド・フレッシュ・健  山内賢
ヤング・アンド・フレッシュ・浩治  和田浩治
ヤング・アンド・フレッシュ・信一  杉山元
ヤング・アンド・フレッシュ・行夫  木下雅弘
ヤング・アンド・フレッシュ・雅子  梶芽衣子
田辺葉子(実母)  伊藤ひろ子
山岡の女将  岡村文子
御前(敏腕テレビマン)  本郷淳
高岩  柳瀬志郎
深井  武藤章生
湯川れい子  本人役(特別出演)
波多野憲(テレビ記者)  島良彦
山辺キャップ  長弘
猪又社長夫人  新井麗子
中田夫人  原恵子
咲坂夫人(葉子の後ろ盾)  細川ちか子
祇園嶋の家女将たま  三崎千恵子
ガソリンスタンドの男  晴乃チック・タック
白バイ警官  衣笠真寿男
スパイダース  田邊昭知とザ・スパイダース
ジョニー・ティロットソン(歌手)  本人役

 

***

京都では、実の母親葉子と咲坂夫人が密談している。葉子は今では実業家田辺夫人に収まっているが、家族にアメリカ人との子供がいることは知られていない。マスコミの雑音を家庭に入れたくないのであれば、あなたは死んだことにしておきなさい、と咲坂夫人は葉子に指南する。
ジュリー達は「嶋の家」へ到着した。しかし、そこで葉子の死を教えられる。そして葉子を嶋家の墓に入れたというので、墓参りをする。そのとき、ジュリーを物陰から覗く女の人に気付く。ひと目で良いから顔を見たいと思った葉子だった。「ママ」とジュリーが叫ぶと、葉子は逃げるように咲坂夫人に連れられタクシーに乗り込み出発する。マスコミ各社がインタビューを取ろうとしても、御前たちが邪魔に入った。そして「ママ、ママ」と泣き叫んでタクシーを追うジュリーの声に、葉子は思わず涙する。
アメリカに帰ろうとするジュリーは、羽田空港で咲坂夫人の訪問を受け、葉子からの手紙を受け取る。そこには、何年かして力をつけてあなたに会いに行く、と書かれていた。
健や雅子との友情を胸に、ジュリーは日本を飛び立った。そこにジョニー・ティロットソンが同席した。彼は彼女を元気付けようとして「涙くんさよなら」を歌ってくれた。

涙くんさよなら 1966.7 日活製作・配給 – ジョニー・ティロットソン出演歌謡映画

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