小津安二郎監督にしては暗い悲劇である。

監督 : 小津安二郎
脚本 : 野田高梧 / 小津安二郎
企画 : 山内静夫
撮影 : 厚田雄春

 

 

キャスト(役名)
笠智衆 (杉山周吉)
有馬稲子 (杉山明子)
信欣三 (沼田康雄)
原節子 (沼田孝子)
森教子 (沼田道子)
山田五十鈴(喜久子)
高橋貞二(川口)

 

杉山は男手ひとつで二人の娘を育てた。長女孝子は夫と上手く行かず子を連れて帰っている。短大を出た次女明子川口の不良仲間と遊び回り、木村の子を宿してしまう。親戚から金を借りて処置しようとするが、理由を問われて答えられない。そんなとき、雀荘の主人喜久子が自分のことをしつこく尋ねることを聞く。明子は喜久子に実母ではないかと考える。
実は喜久子は明子の実母で戦前杉山の元から出奔した過去があった。中絶手術を受けた後、改めて明子は喜久子に問い質す。中絶を母のせいにして明子は電車に飛び込んだ。
孝子は葬儀の後、喜久子のもとに訪れ、明子の死は喜久子の所為と罵った。喜久子は東京を去り、孝子も夫の元へ去った。杉山は一人寂しく生きていかなければならなかった。

 

 

音楽も最後の笠智衆の着替えの様子も、いつもの小津映画とかわらないが、この作品はとても暗い
暗い映画なのにいつもの音楽を流しているのは、頑固と言おうか、日常的に悲劇が起きていると言いたいのか。
ホームドラマは万能だ。普段のセットを生かして悲劇を撮ることもできる。

 

今の若い人がこの映画を「リアリティがない」というかも知れない。堕胎した娘が世をはかなんで自殺するなんてあるわけないと言うだろう。しかし、この映画は自分にとって他人事ではなかった。
あの時代の若者はこういう立場におかれ、ある者は姉のように一切母を無視し、ある者は妹のように自殺したのである。妹からしたら、父の実の子ではないと母に言ってもらった方が良かったのだ。父の実の子だったために、父の顔を潰しては、生きていられなかった。
 

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東京暮色 1957 松竹(小津安二郎監督) 

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