大映長谷川一夫主演「忠臣蔵」、戦後映画化された忠臣蔵でも最も浪曲や講談調の作品。

赤穂の城代大石内蔵助の許へ江戸より早駕籠で知らせが届く。浅野内匠頭が松の廊下で吉良上野介に刃傷に及び即日切腹となったのだ。
内匠頭は勅使饗応役として吉良上野介に教えを請わなければならない立場だったが、増上寺畳替え事件など度重なる吉良の嫌がらせにブチ切れてしまい、殿中で刃傷に及んだ。

目付多門伝八郎は内匠頭一方だけの切腹を喧嘩両成敗の原則に反すると述べたが、柳沢吉保は上意であると言って押し切る。
城の明け渡しを求められた赤穂城でも幕府の決定に異を唱える者たちは城内に残り、
殉死するつもりだったが、大石内蔵助が意見を預かり、一旦城を明け渡すことになった。

大石内蔵助は上京して浅野家復興を願い出るが、何者かに帰途襲われる。
京の山科に帰ってきた大石は遊興三昧で吉良家、その息子が治める上杉家からの監視の目を誤魔化さなければならなかった。そして殿の弟浅野大学の広島浅野家預りが決定した夜、りくを離縁していよいよ討ち入りの準備に入る。
東下りの最中、大石は垣見五郎兵衛を名乗って本陣に泊まっていたが、神奈川宿で垣見五郎兵衛本人と出会ってしまうハプニング。
ようやく江戸に入って赤穂浪士と合流する。しかし赤垣源蔵勝田新左衛門は近親が仇討はまだかと急かせる。万一近親から吉良に漏れでもしたら一大事。故に他藩に士官が決まったと言うとお前のような奴は兄でもなければと言われ放逐される。
貧しい矢頭右衛門七は母と二人で江戸を目指していたが、ついに宿代が払えず母を人質に置いて一人で合流する。

岡野金右衛門は大工の娘お鈴が自分を思う一途な気持ちを利用して吉良邸図面を借り出すことが、どうしてもできない。しかし大石が右衛門七の母の路銀と服を用立てたのを見て、自分も何かを捨てたければ大志は叶わぬと知る。そしてあの世で添い遂げようぞと誓い、図面を借り出すことに成功する。
決行の日は決まった。各自今生の別れをしに行く。大石も瑶泉院に仕官したからといってお暇乞いに行く。瑶泉院はガックリするが、戸田は大石の態度に何かを感じた。その夜、大石が参った亡き殿の仏壇を探る姿があった。戸田が取り押さえると、最近入ったばかりの腰元が吉良の間者だったのだ。お仏壇には47士の連判状が備えられていた。
そして蕎麦屋の二階に浪士は集結して、出発し吉良邸へ赴く。正門を突破して内部に四七士が流れ込むと、敵は大混乱を見せて、味方に死人を出さず炭焼き小屋にいた上野介を引っ張り出す。内蔵助は自刃を求めるが拒むと、内蔵助自ら上野介を刺殺する。
そして浪士誇らしげにあい揃って、首級を墓前に捧げるため浅野家の菩提寺である高輪泉岳寺に向かうのだった。

初心者向け「赤穂浪士」だ。実にわかりやすい。
長谷川一夫滝沢修はこの後、NHK大河ドラマ赤穂浪士」でも大石内蔵助と吉良上野介として相対する。

いかんせん大映の男優は主演級に大物がいるため、脇役には光が当たらないことが多かったが、この大作の場合、四十七士の脇役にも十分なセリフが用意されている。例えば伊沢一郎は特に目立たぬ江戸詰の前原伊助なのだが、主役級のサポートに回って渋い演技を見せていた。杉野十平次役の伊達三郎もそうである。

また女優陣は時代劇では序列がはっきりしていて、やはり上杉の間者るいを演じた京マチ子が最も見せ場が大きく、長谷川一夫と直接絡むことも多かった。彼女は米沢藩江戸家老千坂兵部の愛人と見るのではなく、ダブルスパイの役割を担っていたと見るべきだ。
次いで瑶泉院の山本富士子、戸田役の三益愛子の出番が多かった。若尾文子はまだデビューして数年であり、岡野金右衛門に騙される役で出番も後半に集中していた。

縁故出演という点では、長谷川一夫の一家が最も多く、息子の林成年、娘の小野道子が出ていた。孫の長谷川稀世は娘役で山科の別れの段で出ていた。おそらく林与一も幼い息子の役で出ていたんじゃないか。

一方、中村鴈治郎垣見五郎兵衛中村玉緒は浅野家の腰元役としか出なかった。本来なら中村鴈治郎は吉良上野介をやるべきなのだが、確執があったのだろうか。中村鴈治郎は長谷川一夫との対面場面で完全に歌舞伎役者としての格の違いを見せていた。

何せ大石内蔵助の出番が最も多くて、完全に長谷川一夫ショーだったのだが、それだけに他の主役級が目立たず、脇役に光が当てられた作品だった。

監督 渡辺邦男
製作 永田雅一
脚本 渡辺邦男 、 八尋不二 、 民門敏雄 、 松村正温
撮影 渡辺孝
音楽 斎藤一郎
邦楽 中本利生

配役
大石内蔵助 長谷川一夫
浅野内匠頭 市川雷蔵
岡野金右衛門 鶴田浩二
赤垣源蔵 勝新太郎
大石主税 川口浩
矢頭右衛門七 梅若正二
片岡源吾衛門 黒川弥太郎
堀部安兵衛 林成年
勝田新左衛門 川崎敬三
間十次郎 北原義郎
前原伊助 伊沢一郎
小野寺十内 信欣三
杉野十兵次 伊達三郎
大高源吾 品川隆二
女間者おるい 京マチ子
大工の娘お鈴 若尾文子
瑶泉院 山本富士子
大石の妻りく 淡島千景
浮橋太夫 木暮実千代
戸田の局 三益愛子
腰元紅梅 小野道子
浅野家腰元みどり 中村玉緒
大石の母おたか 東山千栄子
多門伝八郎 根上淳
伊達左京亮 清水将夫
牟岐平右衛門 清水元
梶川与惣兵衛 松本克平
荘田下総守 沢村宗之助
関根弥次郎 菅原謙二
大竹重兵衛 志村喬
町人金太 潮万太郎
町人源吉 坊屋三郎
大工政五郎 見明凡太朗
垣見五郎兵衛 中村鴈治郎
吉良上野介 滝沢修
千坂兵部 小沢栄太郎
清水一角 田崎潤
小林平八郎 高松英郎
上杉綱憲 船越英二

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忠臣蔵 1958 大映

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