返還前の沖縄を舞台にした今村昌平の原案を、彼自身と磯見忠彦が共同で脚色し磯見が監督したアクション・ブラックコメディ
主演は、4月に亡くなったことが明らかになった田村正和
共演は内田良平、嵐寛寿郎、渡哲也、賀川雪絵。保存状態の悪いカラー映画で見られる。

あらすじ

大学四年の六郎は、殊勝にも社会勉強のためマグロ船の栄丸に臨時船員として乗り組んだ。他の船員は、テキヤの片山、ヤスオ、エロ写真売りの泡石、さらに少年院を出てきた黒人とのハーフであるジャッキーだ。

船は太平洋の真中でシケに遭って、那覇港に避難した。船長は、修繕について船主と話をすると言って本土に戻った。六郎が責任者に任命されて、五人は那覇に待機を命ぜられた。だが、船主や船長から音沙汰はなかった。見捨てられた彼らは、船の通信機を売り飛ばした。
その代金でキャバレーに行った五人は、ヤクザの我那覇組と乱闘になった。しかし親分の我那覇が現れて、ヤクザ者だった片山と手打ちをした。六郎はと言うと、ホステスをしている加奈にすっかり入れ込んでいた。

翌朝に船に戻った五人は、船内に男の死体を発見した。片山らが前科者なので警察に知らせると厄介事になる。彼らは、死体の処分に困った。
片山は我那覇に相談して、共同で無人島へ捨てることにした。
ところが、その島は米軍の爆撃試験場だったので、上陸した彼ら全員はジェット機の猛爆にさらされてしまった。
片山らは、我那覇組の二人を見つけたので、全ては我那覇が、死体ごと消す策略と知った。

しかも死体は加奈の従兄で、婚約者だった。沖縄の祖国復帰運動をしていた男だったのだ。しかし、加奈の父玉城には死体の引取りを断られる。
五人組と加奈は、死体を持ってウロウロしていたが、何者かに捕まり、墓の中に閉じ込められる。
玉城に発見され、加奈の兄に助けられる。
遺体を墓地に安置して、五人組はようやく那覇から脱出しようとした。しかし我那覇組に捕まって、また無人島に連れて行かれる・・・。

雑感

初期の田村正和作品だが、のちのドラマ「うちの子にかぎって」「パパはニュースキャスター」に見られるようなコメディ演技がこの映画で見られる。
映画自体は、保存が悪く最初は色褪せて白黒映画と思っていた。途中から色がついていることに気づくが、悪い状態で保管されていたのだ。しかし田村正和逝去の知らせで、Amazonが掘り出してくれて良かった。

映画は、痩せても枯れても今村昌平脚本だから、返還前の沖縄が必ずしも日本復帰を願っていたわけではないことが明らかになる。
現状を考えても、ハワイやグアムのように米国の一部になった方が幸せだったのではないか?

意外な大物(渡哲也、河津清三郎、嵐寛寿郎)が共演してるのも嬉しい。
世界初の実写ドラマ「スパイダーマン」(東映製作)でクールな冴子とヒールのアマゾネスを演じた賀川雪絵が、ヒロインとして田村正和と共演しているのも楽しい。

スタッフ

企画、原作、脚色  今村昌平
脚色、監督  磯見忠彦
撮影  姫田真佐久
音楽  鏑木創

 

キャスト

千葉六郎  田村正和
片山邦五郎(テキ屋)  内田良平
鎌田ヤスオ(テキ屋)  大前均
ジャッキー(不良、ハーフ)  山野俊也
泡石義雄(エロ写真売り)  穂積隆信
千葉六郎の母  加藤治子
乃木トモ子(ジャッキーの妹)  久万里由香
船主船越  桑山正一
第二栄丸船長  富田仲次郎
端慶覧鉄工社長(沖縄の船修理業者)  殿山泰司
端慶覧あけみ(修繕業者の愛人)  奈良あけみ
玉城加奈  賀川雪絵
我那覇慶福  河津清三郎
具志堅老人  嵐寛寿郎
玉城尚運(加奈の父)  青野平義
玉城尚敬(加奈の兄、聾唖者)  渡哲也

 

ネタばれ

加奈らは組員の慰み者になった。さらに我那覇のために密輸の中継を行っていた無人島の所有者まで巻添えをくい、五人組共々全員生き埋めにされて、米軍の爆撃を受ける。
しかし間一髪のところで、老人の飼犬の機転により、脱出することができた。

那覇警察に侵入禁止地区に入った罪で五人は逮捕されたが、彼らと一緒にいた遺体は自殺だったと警察で結論が出て、結局五人は釈放になった。
六郎は加奈に求婚したが、加奈は、沖縄に残り従兄の事件の謎を探してくれるかと問うた。就職の決まっている六郎は泣く泣く加奈を諦めた。代わりにジャッキーが沖縄に残ることになり、加奈と婚約した。六郎たちは船長に連れられ、名残り惜し気に那覇を去っていった。

 

 

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