(★)早射ち名人を父に持った男の宿命を描いた西部劇

クラレンス・グリーンの製作、フランク・D・ギルロイの原作小説「最後の刻印」を、原作者ギルロイと監督のラウスの共同脚本で、ラッセル・ラウスが監督した。
撮影は「禁断の惑星」のジョージ・J・フォルシー

主演はグレン・フォード、ジーン・クレイン
共演はブロデリック・クロフォード、ラス・タンブリン、リース・エリクスン。
白黒映画。

ストーリー

1889年、早射ち名人であるファロンが西部のシルヴァー・ラピッドで殺された。その朝町にきた3人の無頼漢の首領格ハロルドが早撃ち勝負をしたのだ。
ほど近いクロスクリークの草原でジョージが拳銃を練習していた。ジョージは、妻のドーラと雑貨屋を営む男だった。彼は、4年前クロスクリークにやってきた。ジョージの父も拳銃の名人だった。ジョージは、早撃ち勝負を挑まれて怖じ気づき、父が代わりに挑戦を受けて撃たれて死ぬ。

翌朝、シルヴァー・ラピッドの決闘がクロスクリークで話題となった。ジョージは自己顕示欲を抑えられなかった。ここに来て以来一度も飲んだことがない彼は、酒場に入った。酔ったジョージは、町の者二人に投上げられた銀貨を早撃ちで射抜き、拳銃の腕を誇った。

次の朝、ジョージは教会へ行き牧師に昨日の行いを懺悔し、早射ちの名人と聞けば必ず挑戦者が現れて皆に迷惑がかかるから自分は町から出て行く、と申し出た。しかし、彼の人柄を知る人々は絶対に口外しないと誓って、彼を離さなかった・・・。

雑感

舞台は保安官のいない、平和な自治区のような町だ。4年前に夫婦で引っ越して、町で雑貨商を営む地味な男ジョージが実は早撃ち名人だったことから、二日ほどの間に起きる事件を描いている。

主人公は、意気地無しで逃げ出してばかりの人生だった。妻はそんな夫に愛想が尽きて別れようとしていたのだ。
初めて見たときは、夫が乱暴であることを妻が嫌っていると思ったが、そうではなく夫が銃を撃てないヘタレだから妻は怒っていたのだ。この辺りは、銃社会であるアメリカらしい。
そして、決闘の結末を明かさず、最後の1ショットで全てを明らかにする演出もアメリカらしい。

毎度ながらグレン・フォードの西部劇は、どんでん返しがあり面白い。今回も最後にどんでん返しが二度もあり、十分楽しめた。ラストのカメラワークも、最後で謎解きを見せて映画の教科書のようなものだった。

残念だった点を言うと、相手役にベテラン俳優ブロデリック・クロフォードを配しているが、もう少し若い俳優の方が良かった。例えばリー・マーヴィンとかリー・ヴァン・クリフとか。

それから、1945年映画「ステート・フェア」の頃は若くて美しかったジーン・クレインがまだ30歳だったが、随分ボリュームを付けて老けこみキム・ノヴァクのように見えた。当時すでに、彼女は性格女優になっていて長く活躍したから、何時までも綺麗な女優でいられなかったことはわかるが。

後に「ウェスト・サイド物語」に出演するラス・タンブリンがソロでバーン・ダンス(馬小屋ダンス)を踊るシーンが序盤にある。長いシーケンスのもので当時の彼の人気の程がわかる。彼は、その後あらすじにはあまり関係しない。(75)

スタッフ

監督、脚色  ラッセル・ラウス
製作   クラレンス・グリーン
脚色、原作  フランク・D・ギルロイ 「The Last Notch(最後の刻印)」
撮影  ジョージ・J・フォルシー
音楽  アンドレ・プレヴィン
ラス・タンブリンのダンス演出   アレックス・ロメロ

 

キャスト

ジョージ・テンプル  グレン・フォード
ドーラ・テンプル  ジーン・クレイン
ヴィニー・ハロルド  ブロデリック・クロウフォード
エリック・ドゥーリトル  ラス・タンブリン
ハーベイ・マクスウェル  アリン・ジョスリン
ルー・グローバー  リーフ・エリクソン

 

***

そのとき、隣町の銀行を襲ったハロルドらは、保安官に追われクロスクリークに逃げ込んだ。町に入ったハロルドは、礼拝で誰もいない酒場に入った。ところが教会に行かなかった子供が、ジョージの早射ちを自慢する。ハロルドは、町民に早射ちの名人を出せと迫る。人々はジョージに戦えと迫るが、ジョージは拒む。妻のドーラが真実を告白する。拳銃は保安官である、ジョージの父のもので、彫られている六つの印は父が六人を射殺したことを表していた。一方、ジョージは一度も人を撃ったことが無かった。
ハロルドは、誰も出て来ないなら、町中の建物に灯油を撒いて燃やすつもりだと言った。ルーがジョージを町に留めた責任を取って、犠牲になりハロルドと戦おうとした。そのとき、「俺の銃だ」と言ってジョージがベルトを腰に巻き、拳銃を手に取った。
対峙したジョージとハロルドはしばらく見合った後、同時に拳銃を抜いた。二人の銃が立て続けに火を噴いた。
隣町の保安官が来たとき、ハロルドとジョージの棺桶を墓地に埋めているところだった。保安官は、ハロルドと相撃ちになって死んだジョージを悼み、隣町に帰っていった。
実はジョージの墓に7つの印を刻んだ拳銃だけが葬られていた。ジョージは、決闘でハロルドを射殺したのだ。そして銃と自分の名前を捨てることを誓って、町に平和を取り戻した。

必殺の一弾 The Fastest Gun Alive (1956) MGM製作・配給 グレン・フォード主演西部劇

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