1941年の「幽霊紐育を歩く」は、天使のミスで死んだ人を別人に乗り移して生き返らせるゴーストファンタジー映画の走りだ。ヒットしてアカデミー脚色賞と原案賞を獲得した。
これを37年経って、ウォーレン・ベイティモハメド・アリを主役にしたボクシング映画に翻案して製作で一儲けしようと考えたが、アリが断ったため、結局アメフトを舞台に置き換え自分が製作、監督、主演して大勝負に出た作品。

 

ロサンゼルス・ラムズのQB(クォーター・バック)を務めるジョー(ウォーレン・ベイティ)はスーパーボウル出場を決める試合直前に交通事故に巻き込まれて天国に呼ばれる。しかし調べてみると天使の手違いだった。しかも本人は既に火葬された後だった。天使長ジョーダン(ジェームズ・メイスン)は誰か代わりの死人を見つけてあげるから、その人に乗り移って余生を生きて欲しいという。そこで見つかったのが大富豪のファーンズワース。妻と情を通ずる弁護士に謀殺されたばかりで新鮮な死体である。早速乗り移ると妻と弁護士は仰天する。それまでのファーンズワースはポロと金儲けにしか興味が無かったが、ジョーが乗り移った後は社会貢献活動、環境保護、アメフトに熱を上げ、環境保護運動家ベティ(ジュリー・クリスティ)と愛し合って、スーパーボウルに出場なったラムズを買収しQBに復帰する。復帰に当たってはラムズのトレーナー・コークル(ジャック・ウォーデン)にだけ秘密を打ち明け、協力してもらった。しかしファーンズワースの余生はそれまでだった。庭で妻と弁護士に射殺され遺体は井戸の底に隠された。天国へ戻る前に幽霊のジョーは警察の捜査を見ているが、井戸から遺体の服が出てきて犯人を捕らえることができた。するとスーパーボウルの試合の最中にラムズの正QBが心肺停止になってしまう。ジョーはスタジアムに急ぎ正QBに乗り移り、オーバータイムで決勝のタッチダウンを決めた。その代償としてジョーの頃の記憶は消えていった。しかしベティと出会うと何故か二人は惹かれ合うのだった。

 

多分、俳優のギャラを使いたくなかったのであろう。ベイティの乗り移り先の俳優もベイティにやらせていた。実際には当人の生きていたときの顔で周囲には見えているのだが、映画の観客にはウォーレン・ベイティの顔が見える。
おかげでドタバタしてしまい、見ている観客には少しわかりにくかった。

それでもアメリカでの興行成績は良くて、アカデミー賞は各賞にノミネートされて、結局美術賞を獲得した。

この日米の差を考えるに死生観の違いかなと思う。
欧米にはおそらく、「人は亡くなってもその魂は残る」ことを強く信じる文化が残っているのだろう。
だから本人がどういう人間であっても魂さえ同じであれば、気持ちは通ずる。

でも最期に急にジョー時代の記憶を失ったり、コークルは忘れてもベティはなんとなく覚えていたり御都合主義に走ってもいる。
このあたりは古い映画を基にしているから仕方ないのかな。

 

 

 

監督 ウォーレン・ベイティ, バック・ヘンリー
脚本 エレイン・メイ, ウォーレン・ベイティ
原作 ハリー・シーガル『Heaven Can Wait』
製作 ウォーレン・ベイティ
配役
ウォーレン・ベイティ
ジュリー・クリスティ
ジェームズ・メイソン
ジャック・ウォーデン
チャールズ・グローディン
ダイアン・キャノン

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