「宇宙家族ロビンソン」「ポセイドン・アドヴェンチャー」「タワーリング・インフェルノ」などの製作者であるアーウィン・アレンが製作・監督したSF潜水艦映画
脚本はアーウィン・アレン(原案)とチャールズ・ベネットである。
出演はウォルター・ピジョン、ジョーン・フォンテーンの両ベテラン。共演ピーター・ローレ、ロバート・スターリング、フランキー・アヴァロン
デラックスカラー・シネスコ映画。

あらすじ

アメリカ合衆国海洋探査局の原子力潜水艦シービュー号は、北極に向けて試験運転を続けていた。この潜水艦は、科学者としても有名な元提督ネルソンとエマリー准将が考案したもので、深海の神秘を探るのが目的である。ネルソンにはお付きの秘書キャシーが付いて来た。操縦するのは恋人のクレイン艦長と部下チップ中尉らの乗組員である。オブザーバーとして有名な精神科医ヒラー博士らも搭乗していた。
シービュー号が潜航している時、海中に巨大な氷が落下してきた。艦が浮上すると、空が赤く燃え、北極なのに汗をかくほど暑い。艦長は瀕死の観測隊員アルバレスを氷山で発見して、救助した。
この地球温暖化は、活発化した流星活動によって上空5000メートルに現れたヴァン・アレン帯の放熱現象によって起こったことがわかった。このためある場所で旱魃が起きているかと思えば、他では大洪水に襲われているところもある。

国連ではニューヨークで緊急会議を召集し、ネルソン堤督も出席を求められた。ネルソン堤督はエマリー准将と協議し、艦から核ミサイルを発射して上空で爆発させて冷却する理論を立てた。このアイデアは国連会議で、しばらくすれば放熱現象は消滅すると説く物理学者ズッコ博士によって反対される。国連の大勢もズッコ案に従い、ネルソン案は反対多数で否決される。

持説を信じるネルソン堤督は、国連会議から脱出しシービュー号を出港させ、マリアナ海溝で核ミサイルを発射すると艦長に命じる。遅れて国連軍の潜水艦が、シービュー号を追跡するために出港する。
艦に居残ったアルバレスは、キリスト教宣教師のように乗組員に向かって人類の滅亡を説く。クレイン艦長は、アルバレスに乗組員の指揮を下げることを言うなと釘を刺す。しかし艦長自身も提督の学説を疑っていた。
パナマ運河を国連に封鎖されて、シービュー号はブラジル沖を航行していた。ネルソン提督は、ワシントンにいる大統領と連絡を取るため、海底ケーブルを利用することを思いつく。しかし潜水服で海底ケーブルと接続しようとした艦長は大ダコに襲われる。危機一髪のところをアルバレスに救われて、提督の説が一層マユツバに感じられるようになる。結局ワシントンには繋がらなかった。
発電機を壊れて艦はしばらく停電するが、ソナー無しで提督の命令通り前進を続ける。しかし小型潜水艇の乗組員が、機雷網に掛かり爆死する。医務室で休んでいたホッジス技師も、停電は人為的なものだと、遺書を残して自殺する。次には提督の居室から失火する。ガスが出たため、浮上して排気する。艦のそばには一艘の船が泊まっていた。乗船すると、中で乗員は全員死亡していた。乗組員たちは疑心暗鬼になり、提督に対しこの船で家族の元に帰りたいと訴える。提督も乗組員の意志を汲み、この脱走行動を認めてしまう。
収まらないのは乗組員を勝手に減らされた艦長である。チリ南端ホーン岬を越えて、いよいよ提督は核ミサイルの発射準備に入るが、艦長が提督の逮捕命令を下す・・・。

雑感

1964年からのテレビドラマ「原子力潜水艦シービュー号」のオリジナル(原案)になった20世紀フォックス映画。ドラマと映画は、出演者の顔ぶれは違うが、原案者も原題も映画とテレビドラマどちらも同じである。「シービュー号」は1966年からの「スター・トレック」の製作に大いに影響を与えた。

映画を見ていると、当初は提督こそマッド・サイエンティストで、これを倒さなければならないと思わされる。空中で核を爆破させれば、中和しきれずに死の灰は地表に降るからだ。
そこで敬虔なカトリックのアルバレスは、聖書の黙示録を手に取り家族と一緒に最後の審判を迎えよと乗組員に説教している。おそらくヒラー博士も彼に誘導されて、乗組員を洗脳し、潜水艦を止める手助けをしたと考えられる。
結局、カトリックは頭が固い、アメリカの核武装は正義だと言いたい作品だと思う。

当時は原子力潜水艦のミサイル発射実験が成功した直後であり、核ミサイルの部分はトップシークレットのため、軍の協力は限定的だった。

ジョーン・フォンテインの出演映画としては後期作品の一つだが、意外に重要な役だった。でも動機を語る暇もなく、死んで終わりなんてあまりに最後が惨めすぎる。顔はカラーフィルムになっても老化を感じさせないが、髪の毛の量が少なくなっていた。

ウォルター・ビジョンは、ブロードウェイ出身でトーキー映画初期から出演していた。戦時中アカデミー賞に「ミニヴァー夫人」と翌年の「キュリー夫人」でノミネートされている。
「地球の危機」の頃は、キャリアの末期に入っていた。1956年の「禁断の惑星」にも出演していたが、SF映画やスパイ映画の出演が多くなった頃だ。

我らが「かわいい魔女ジニー」、バーバラ・イーデンの見せ場は、最初に登場するダンスシーンのお尻アップだった。この映画の撮影中に27歳でアルバレス役マイケル・アンサラと結婚する。

意外に背が低かったフランキー・アヴァロンは「ヴィーナス」(1959年のスローバラード、1969年に発表されたショッキング・ブルーの歌とは全く違う)の大ヒットで知られる歌手である。この映画主題歌も、彼の甘い歌声で歌われている。

映画の中でジューヌ・ヴェルヌの「海底二万哩」が言及されていたが、あの映画で科学者の助手として出演していた、ピーター・ローレが今回も出演して准将にまで出世していた。

スタッフ

監督、製作、脚本、原作 アーウィン・アレン
脚本 チャールズ・ベネット
撮影 ウィントン・C・ホック
特殊効果 L.B.アボット (のちに「ポセイドン・アドヴェンチャー」などで4回アカデミー賞受賞)
音楽 ポール・ソーテル、バート・シェフター
主題歌 フランキー・アヴァロン「海底への航海」

キャスト

ネルソン提督  ウォルター・ピジョン
ヒラー博士  ジョーン・フォンテーン
秘書キャシー  バーバラ・イーデン
エメリー副提督  ピーター・ローレ
クレイン艦長  ロバート・スターリング
科学者アルバレス  マイケル・アンサラ
チップ中尉  フランキー・アヴァロン
ジェイミソン医師  レジス・トゥーミー
クロフォード提督  ジョン・ライテル
ズッコ博士  ヘンリー・ダニエル

 

ネタばれ

突然、国連軍潜水艦が攻撃を開始する。ネルソン提督は、艦長と一時停戦して、他の潜水艦には潜航不能な深さまで潜行するように命ずる。まんまと付いて来た敵潜水艦は、水圧に耐えられず自滅してしまう。再びシービュー号は大ダコに襲われるが、電気を艦表面に流して退治する。ズッコ博士の提唱したヴァンアレン帯自然消滅の時間になっても、空は赤いままで地球温暖化は止まなかった。
艦長は、第二次世界大戦を経験している提督の方が自分の判断力よりもずっと冷静であることを悟った。そのころヒラー博士は原子炉を止めようとして放射能を浴びた。艦長は、提督を狂人扱いしたヒラー博士に理由を聞き質そうとしたが、艦が揺れて博士は実験用水槽に落ちてしまい、サメに食べられる。最初の停電も博士が仕組んだことだった。
補助モーターを使って動き出した艦は、ミサイルを発射しようとした。ところがアルバレスが手榴弾を持ち、阻もうとする。しかしクレイン艦長が潜水服を着て外へ出て核ミサイルのハッチを表から開けて、発射に成功する。やがて真っ赤に燃えた空は、しだいに晴れていった。

 

 

 

 

 

地球の危機/燃える北氷洋 Voyage to the Bottom of the Sea 1961 アーウィン・アレン製作 20世紀フォックス配給 豪華キャストで原潜シービュー号登場!

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