聖書をベースにした映画作品。しかも敬虔な人なら、ユダヤ教徒もキリスト教徒もなかなか描けないところまで踏み込んでいる。
日本人にはキリスト教の問題点が見えて面白い点もあるが、アメリカで賛否両論が巻き起こって揉め始めたので、日本でも公開中止になった。
キリスト教原理主義者で無ければ問題ないと思うのだが、少し忖度しすぎでは無いか。
監督・脚本は「ブラックスワン」のダーレン・アロノフスキー。主演は「ハンガーゲーム」のジェニファー・ローレンス。
あらすじ
初めに舞台設定。人里離れた一軒家。そこに詩人の夫(ハビエル・バルデム)と主人公の若妻(ジェニファー・ローレンス)が住んでいる。詩人はスランプ中らしい。古い物件を勝ったのか若妻が一日中ペンキとはしごでリフォームしている。
そこへ訪問者が・・・。中年男(エド・ハリス)がやって来る。主人公には知らない顔だが、ファンだというと、夫はにこやかに出迎える。
翌日、中年男の妻(ミシェル・ファイファー)が加わる。この中年女は不躾で、詩人の部屋に無断で入って宝石を割ってしまう。これには詩人も激怒して「出て行け」と言う。
しかし中年男女は部屋に籠もり、主人公が見に行くと、せっせとセックスをしている。
やがて若い兄弟が現れる。中年男女の息子だという。そして財産争いがもとで喧嘩をし始める。どうやら遺言で中年男の財産は弟に贈られるらしい。争って兄は弟を殴って殺してしまい、犯人の兄は逃亡してしまう。(ここで聖書の話だと分かる)
どこからともなく詩人のファンが集まってきて、弟の葬式を始める。それどころか夫婦のプライベイト・スペースにもズカズカと入り込むので、主人公は集まってきた民衆を追い返す。
その夜、詩人と主人公と初めて結ばれる。そして翌日には妊娠が分かる。詩人も喜び、新しい詩を思いつく。
お腹が大きくなって出産間近になり、民衆が祝福するために大勢やって来て、家の中が再びカオスになってきた。
主人公はついに破水して出産するが、詩人が赤子を取り上げると、民衆が自分も触らせてくれと集まってくる。
ところが民衆は赤子を殺して、こともあろうか食べてしまう。
主人公は怒るが、逆に彼女を売春婦と言って罵る。
彼女は怒りを爆発させて、建物ごと自爆するが、詩人だけはビクともしていない。
主人公の心臓を詩人が取り出すと宝石になり、その宝石が見る見る元の屋敷に変化する。
そして若妻が目覚めるところからやり直し。
雑感
母=大地、父=大地を浪費する神、息子=民衆に祭り上げられ最後は殉教するキリストの寓意である。
他の登場人物はアダムやエバ、カインとアベルなど、信仰すれば神によってすべてが与えられると考える甘ったれた民衆だ。要するに世の中はアホばかりと言っている。
ユダヤ人はユダヤ教に反感を持ちやすく、無神論者になりやすいが、ダーレン・アロノフスキーもそういう人なのかな。
しばらく彼はアメリカで映画を撮れないかも知れない。アメリカではキリスト教原理主義が力を持っているから。
スタッフ
監督・脚本 ダーレン・アロノフスキー
製作 ダーレン・アロノフスキー 、 スコット・フランクリン 、 アリ・ハンデル
撮影 マシュー・リバティック
美術 フィリップ・メッシーナ
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配役
主人公(母=大地) ジェニファー・ローレンス
詩人(父=神) ハビエル・バルデム
アダム エド・ハリス
エバ ミシェル・ファイファー