(☆)ラブコメ映画「君さえいれば 金枝玉葉」(1994)の続編で、1990年代の香港の音楽業界で既にLGBTQが事実上の市民権を得ていたことがよくわかる映画。
主演はレスリー・チャン、アニタ・ユン。
共演はカリーナ・ラウ、チャン・シウチョンのオリジナルキャストに、アニタ・ムイとテレサ・リーが加わった。
ヘンリー・チャンの脚本をピーター・チャンが監督した。製作総指揮のクラウディア・チョン。
日本公開は、香港より三年遅れて1999年でビターズ・エンドの国内配給による。
ストーリー
前作で同棲生活を始めた売れっ子作曲家兼プロデューサーのサムとアイドル歌手のウィンだが、なぜかウィンの幼馴染ユーロウも連れて来る。さらに自宅の改装工事を始めるとトラブルが続く。
サムは、ウィンさえ家にいなければ仕事がいやすくなると考え、彼女を男性歌手として復帰させた。
ウィンは、ビッグアイドルになり新人賞を獲得する。その夜サムとウィンの部屋は、仮面パーティー会場となる。そこに現れたのが、男装の麗人として知られた歌手兼女優フォンだ。ウィンとフォンは同じ被り物を被ったため、サムは気付かずフォンと関係を結ぶ。
ウィンは、同じ歌手としてフォンと急速に親しくなる。フォンは、ウィンの一途なところが気に入り、彼女を男性だと思っているにも関わらず愛するようになる。一方、ユーロウは、フォンのレズ相手オーに惚れ込んでアタックを開始し、ついに一夜だけ思いを遂げる・・・。
雑感
前作「君がいれば 金枝玉葉」を見て、香港語と香港映画が苦手な筆者でさえもアニタ・ユンの少年っぽい魅力に参ってしまい、彼女の作品をよく見ていた。しかし、「金枝玉葉」の続編が製作されても、なかなか日本で公開されなかった。
その理由は、この映画を実際に見てわかった。前々から、香港や台湾では、同性愛文化に寛容だと思っていた。でも、日本で少年少女にも受け入れられた健全な男装ラブコメ香港映画の続編が、ガチの同性愛映画になってしまうとは、誰が思うかw。
白泉社の雑誌LaLaで連載された漫画「桜蘭学園ホスト部」(2002〜2011)が男装ラブコメからマジのレズビアン漫画になったとしても、雑誌の性質上そんなことはよくあることで問題はない。しかし、テレビドラマ版が方向転換すると、恐らくスポンサーが降りるか、放送時間帯が深夜に移行するだろう。
「金枝玉葉」の場合も前作を見た人がショックをウケないように、3年の時間を置いて配給会社を変えて「金枝玉葉2」は公開されたのだろう。
しかし、LGBTQは中国共産党の共産主義と合わない生き方だから、その後の香港芸能界に圧力が掛かって、こういう映画は次第に少なくなったと思う。中国にとって健全な映画とは「イップマン」のような抗日アクション映画なのだ。
「さらば、わが愛/覇王別姫」(1993)「ブエノスアイレス」(1997)の主役を演じ、事実上のカミングアウトをしてホモ・セクシャルであったレスリー・チャンの自殺は鬱病が原因だ。しかし、その裏には世間で言う 三角関係だけでなく、何か政治的背景があるのではないかと陰謀論を疑いたくなる。彼が死んだ直後に友人アニタ・ムイも亡くなるが、彼女の死因は遺伝性の子宮頸がんである。
この映画の公開された翌年(1997)に香港は、英国から中国に返還された。その時は、香港人はまるで独立を果たしたように大喜びし、英国人でさえそのまま香港の中国籍を選んだものも多かった。香港人は中国に騙されているのがわからないのかと筆者は不思議に思っていた。
それが、23年経って世界がコロナ禍で手が出せないのを見越して、中国は香港を事実上併合した。軍隊に囲まれてから、デモをしたって遅いのである。もっと早く、シンガポールかマレーシアに脱出すべきだった。
(逆に言えば、台湾が曲がりなりにも2021年11月末に独立を守っているのは、WHOに嫌がらせをされようと、コロナ対策を早め早めにしたおかげだ)
スタッフ
監督、製作 ピーター・チャン
製作 エリック・ツァン
エグゼクティブ・プロデューサー クラウディア・チャン
脚本 ジェームズ・ユエン
撮影 ヘンリー・チェン
キャスト
サム レスリー・チャン
ウィン アニタ・ユン
フォン(男装の麗人) アニタ・ムイ
ユーロウ(ウィンの幼馴染) ジョーダン・チャン
オー(フォンのレズ相手) テレサ・リー
アンティ エリック・ツァン
ローズ カリーナ・ラウ
***
女装したウィンは、男装の麗人フォンと共演することになる。ところがウィンは、男装のフォンを前にして緊張して芝居ができなくなってしまう。サムがウィンの本当の性別をフォンに明らかにした後でも、フォンの気持ちはかえって高まってしまい、ウィンはスランプに陥る。
フォンは、サムの留守中、ウィンを訪れて愛を告白し、関係を結ぶ。サムがそのことを知ると、自分の変化にショックを受けているウィンは部屋から去る。フォンは、動転するサムを諭して、空港から飛行機に乗り込むウィンと寄りを戻させる。しかし気付くと、飛行機は飛んでおり、飛行機恐怖症のサムはパニックになる。そしてフォンとオーは、再びヨットで香港を去る。