(☆)二人の女性が織り成す微妙な心理描写が春のパリを舞台に描かれる女性映画
この作品は、エリック・ロメール監督の「四季の物語」シリーズの第一弾にあたる。

製作はマルガレット・メネゴス、監督・脚本はエリック・ロメール
主演はアンヌ・ティセードルフロランス・ダレル
共演はユーグ・ケステル、エロワーズ・ベネット。

ストーリー

ジャンヌは高校の哲学教師。同棲していた恋人が長期出張でしばらくいないため、淋しくなって彼の部屋を出た。ところが、自分のアパルトマンを従妹に一時的に貸していて、彼女の入学試験が長引いたため、週末に寝る場所が無くなった。

友人に誘われたパーティで音楽学校でシューマンのピアノ曲を学ぶナターシャと知り合い、意気投合して週末は彼女の家に泊まることになる。翌日土曜日、起きてシャワーを浴びていると、ナターシャの父イゴールが服を取りにやってくる。彼は文化庁の官僚で、妻と既に別れ、娘と同世代の恋人エーヴと同棲中だ。だから彼の家をナターシャ一人が占領していて、時折父が荷物を取りに来るだけなのだ。
そこで、ジェンヌはナターシャから未解決事件を聞かされる。ナターシャに誕生日プレゼントとして贈られるはずだったネックレスが消えた。その前日、エーブが身につけて自慢していたが、当日父が受け取りズボンのポケットに入れたはずだった。ところが靴を脱いで、ズボンを畳んでハンガーにかけてしまう。その時にポケットから重みで下に落ちてしまったらしい。しかし、下を探しても見つからない。おそらくエーブが盗んでしまったと言うのが、ナターシャの推理だ。

午後から、パリ近郊にあるイゴールの別荘にナターシャは、桜やリラが綺麗な季節だからと言ってジャンヌの運転で行く。ナターシャは、どうやら嫌いなエーブを排除して、ジャンヌを父の恋人にしたがっているようだ。

週明け、従姉妹が一次試験の狭き門に合格し二次試験に進むことができたため、もう一週間貸してほしいと言う。ジャンヌは喜んでナターシャの家の門のブザーを押した。また一週間、ナターシャとジャンヌの生活が始まった。
木曜日にナターシャは久しぶりにイゴールと食事をすることになり、ジャンヌも参加することになった。ところが、当日エーヴまでやってきたのだ。エーヴも哲学専攻なのでジャンヌにライバル意識丸出しで挑んできたが、ジャンヌの知識の前に頭を下げざるを得なくなる。二人は共通の話題があるため、イゴールまで参加して話が盛り上がった。しかしナターシャは、一人だけ専門外のため面白くなくなる・・・。

雑感

エリック・ロメール節は健在だ。春になって、女性教師と音大に通う多感な娘が出会い、年の差を超えて友情を育む。ところがそこに娘の父親と、娘と年の変わらない、父親の愛人が現れてから女性教師は陰謀に巻き込まれるような気がする。
しかも、少しだけミステリー風味を利かせてオチに使うあたり、アルセーヌ・ルパンの国の映画監督らしい。

全般に台詞量がずば抜けて多いのも、エリック・ロメール流だ。
三人の女優が出てくる。ジャンヌ役のアンヌ・ティセードル、ナターシャ役のフロランス・ダレル、エーヴ役のエロワーズ・ベネットだ。いずれも美人であるが、完成したティセードル、ベネットより若いフロランス・ダレルの成長が楽しみだ。実際、2010年近くまで映画に出ていた。

 

スタッフ

監督、脚本  エリック・ロメール
製作  マルガレット・メネゴス
撮影  リュック・パジェス

 

キャスト

ジャンヌ(高校教師)  アンヌ・ティセードル
ナターシャ(音楽学校生)  フロランス・ダレル
イゴール(文化庁官僚、ナターシャの父)  ユーグ・ケステル
エーヴ(哲学専攻の大学院生、イゴールの恋人)  エロワーズ・ベネット
ゲール(ジャンヌの従妹)  ソフィー・ロバン  

***

週末、ジャンヌはナターシャと共にフォンテンヌブローの別荘に出かけるが、イゴール、エーヴと鉢合わせする。ますます、ナターシャは気まずい空気を作り出し、怒ったエーヴは一人帰ってしまい、ナターシャも恋人と出かけ、ジャンヌとイゴールが取り残される。夕食後、イゴールはジャンヌに惹かれていることを告白するが、中年親父に興味のないジャンヌは、適当にあしらってパリに一人で帰る。

ナターシャの家にいると、ジャンヌに電話が掛かってきて従姉妹が部屋を明け渡したと言う。ジャンヌはナターシャが帰ってくるのを待っていると、浮かない顔をしてナターシャが帰宅する。年上の彼と上手くいかなかったらしい。そして、父とジャンヌを結びつけるためにわざと自分が二人を放置したとジャンヌに思われていると泣き出す。その時、ナターシャがエーヴが盗んだと疑っていた首飾りが頭より高いところに置かれていた靴の紙箱のなから見つかった。父か誰かが、脱いだ靴をしまっただけだった。二人は緊張も解け、下らない誤解を笑い合った。そして、ジャンヌは自宅に帰ると従妹から長く部屋を使わせてもらったお礼として大量のブーケが包装したまま置かれていた。ジャンヌは久しぶりに彼の部屋に戻り、その花を飾るのだった。

 

春のソナタ Conte de Printemps (1989)仏エリック・ロメール製作 ロサンジュ配給 シネセゾン国内配給[1990] – エリック・ロメール監督「四季の物語」第一弾

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