戦前の同名映画をリメイクした作品。ジュディ・ガーランド、ジェームズ・メイスン主演。ジャネット・ゲイナー主演の戦前作と違い、ジュディ・ガーランド自伝の色彩が強い脚色になっている。ジュディが亡くなった事情を考えても、示唆的である。

1976年にはバーバラ・ストライサンド主演で三度映画化されている。

エスターはしがないバンドシンガー、珍しくハリウッドのステージからお呼びがかかる。舞台に酔った名優ノーマン・メインが乱入するが、エスターが上手にあしらう。

エスターに可能性を感じたノーマンはエスターにミュージカル女優の仕事をあてがう。
エスター改め芸名ヴィッキーは着実に女優としての評価を上げ、ノーマンとヴィッキーは愛し合い結婚する。

しかし田舎の巡回裁判所で地味な結婚式を上げたのが宣伝部長の怒りを買った。ノーマンは契約解除されることになった。ヴィッキーは懸命に仕事を続け、ついにアカデミー主演女優賞に輝く。しかし授賞式に酔ったノーマンが乱入し、ヴィッキーをひっぱたく醜態を見せる。

ノーマンはサナトリウムに入れられ、撮影所長は仕事の話を持って行くが、主演ではないとわかるとプライドの高いノーマンは断る。

サナトリウムから出たノーマンだったが、家には忙しい妻がいるわけではない。一人競馬場に繰り出すが、もはや彼は過去の人であり誰も相手にしてくれない。自棄になって自動車事故を起こし刑務所に入れられそうになるが、妻ヴィッキーの懇願で執行猶予が付く。家に戻ったノーマンは妻と撮影所長の話を聞いてしまう。

 

まさにジュディ・ガーランドは「スタア誕生」のように若くして芸能人生を始め、「オズの魔法使い」でスターダムにのし上がる。しかし早い時期から各種薬品を服用し副作用が出る。もちろん酒も毎晩あおった。結婚と離婚を繰り返し、酔って撮影所で暴れるのでMGMから契約解除される。
37歳でWBに拾われ、この「スタア誕生」を撮影する。往年のジュディ・ファンには好評だったが、酔って撮影に遅刻を繰り返したように会社には不評だった。したがってアカデミー賞発表前の宣伝活動を一切行わず、ノミネートされた6部門でアカデミー賞を一切取れなかった。
その後、彼女は歌の世界と銀幕を往復するが、わずか47歳で客死する。


(自殺と言われている)

 

映画としてはジュディ一人の歌をあちこちにちりばめて音楽映画の形式をとっている。しかしMGMなら芸達者が揃っていて彼女のショーの相手をできる人はいたはずだが、WBでは彼女を受け止められるだけの実力を持った俳優がいなかった。
また彼女の死後、完全版としてスティル写真を使い3時間近い内容に膨らませているが、冗長だと思う。2時間半の一般上映版で十分だ。

 

監督 ジョージ・キューカー
脚色 モス・ハート
原作 ウィリアム・A・ウェルマン 、 ロバート・カースン
原作戯曲 ドロシー・パーカー 、 アラン・キャンベル 、 ロバート・カースン
製作 シドニー・ラフト
撮影 サム・リーヴィット
美術 マルコム・C・バート
音楽監督 レイ・ハインドーフ
音楽 ハロルド・アーレン 、 アイラ・ガーシュウィン 、 レオナード・ガーシュ

 

配役
エスター(ヴィッキー): ジュディ・ガーランド
ノーマン: ジェームズ・メイソン
リビー: ジャック・カーソン(宣伝部長;テレビ・ラジオの人気者)
オリバー: チャールス・ビックフォード(撮影所長;「大いなる西部」)
ダニー: トミー・ヌーナン(友人ダニー;「紳士は金髪がお好き」)
 
実質的に5人芝居で3時間の映画である。

 

スタア誕生 1954 WB

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